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4月5日 その⑥

 

 美緒と俺は、保健室を出て外に向かった。

 外はもう、すっかり赤く染まっている。


「もうこんな時間だったのね...私が栄のところに向かったのがゲーム始まって1時間が経った辺りだったから...」

 美緒はそんなことを言っている。そんな、長い時間俺のことを見守ってくれたのかと思うと感謝しかない。


 命を奪われかけたが、保健室まで失神した俺を運んでくれたであろう歌穂にも感謝を伝えなければならないだろう。


「今日はもう遅いみたいだし、それぞれの寮に戻ろうか!」

「うん、そうだね」

 俺はそう言って、校門に向かう。そこには、一つの人影があった。


「誰だ?」

「えっと...」

「やぁやぁ、池本栄君に奥田美緒さんではないですか。美緒さんは、今日予選敗退してしまったので言うことはありませんが、栄君は予選で生き残っているので明日もしっかり学校に来てくださいね?」

「えぇ、わかってますよ、マスコット先生」


「それなら、いいんです。でも、紙を回収してそれを持って寮の中に籠る───なーんてことをされたらゲームが崩壊してしまいますから!」

「───ッ!」


 読まれていた。俺が「これなら勝てる」と言った方法を。

 ポイントを手に入れた今、学校に無数にある紙のほとんどを奪い取って仕舞えばポイントは上下しなくなる。


 紙は、言ってしまえばポイントを媒介するものなのだ。その紙さえなければ、ポイントの変動はしない。


 メールがあれど、スマホが無ければその人は連絡を受け取れないとの同じだ。


 ───だが、今それを封じられた。


「池本栄君、持ってる紙は...無さそうですね。ならば、大丈夫です。寮に戻っていいですよ」

 マスコット先生は、しっかりと俺のことを見ていたのだ。

 ゲームが崩壊しないよう、ゲームマスターのしての仕事わしっかりと行っていたのだ。


「どうして...」

「どうしてって、そりゃあ教師が生徒の安全を守るのは当たり前じゃないですか。ズルなんかしない、誠実な生徒になってもらうためですよ」

 マスコット先生が朝、コンプライアンスだの何だのと言っていたことを思い出した。


 全て、ゲーム崩壊を防ぐための演技だったのだ。必勝法を奪われた。俺は勝てる道を再度、考えなければならなかった。


「どうしたんですか、立ち止まって」

「え、あ」

 俺はマスコット先生に声をかけられる。


「池本栄君なら、わかるはずです。第2ゲーム予選『スクールダウト』のルールの8番目を」

「8番目?」

 俺は、頭を捻って思い出す。


 1.学校中に散らばった生徒個人の情報が書いてある長方形の紙を探す。

 2.その紙に書いてある情報と同じ人に紙を貼れば、貼った人は貼られた人から2ポイントを奪取することができる。

 3.その紙に書いてある情報と違う人に紙を貼れば、貼った人は貼られた人へ4ポイント譲渡しなければならない。

 4.ゲーム開始時の保有ポイントは一律10ポイントとする。

 5.保有するポイントが0になったら、その時点で敗退が決定。

 6.ゲーム参加者が6人になった。もしくは、4月8日23時59分59秒が過ぎたらゲーム終了。ゲームの期限が過ぎた時、保有ポイントが多かった人から本戦に勝ち上がる。

 7.個人の情報が書いてある紙は、誰にも当てはまらない場合もある。また、生徒1人につき20枚ずつ個人の情報が書かれている紙は用意されている。

 8.屁理屈は理屈に入らない。


「屁理屈は理屈に...入らない?」

「はい、そうです。君ならば、この意味...わかるでしょう?」

 俺は、再度直立不動になってしまった。意味はわかっていた。やはり、イカサマまがいなことは許されないのだ。


「俺は───」

「大丈夫です、言わなくてもわかりますから」

 マスコット先生はそう言って、俺の背中を2度叩いた。


「今日は寮に戻ってゆっくり休んでください。遅刻は許しませんからね?」

 俺は、そう言われて寮に帰った。


「おぉ、栄!おかえり!」

「あ、おかえりなさい...」

「あ、大丈夫だった?」

 リビングではそう言って俺の帰りを待ってくれていた3人が座っていた。


「大丈夫だった?失神したんでしょう?」

「うん、なんとか」

「いいよなぁ...オレも美緒に看病してもらいたかったなぁ...」

 健吾はそんな事を、腕を組んでウンウン頷きながら言っている。


「そうだ、皆は今何ポイントなの?」

「僕は敗退しちゃった...」

「あはは、オレもだ。最初、栄からポイントを奪取したのになぁ...すまん!」

 純介と健吾は、敗退してしまったらしい。


「俺は12ポイントだよ。栄は?」

「俺は14ポイントだ」

 稜は12ポイントらしい。


「あ...そうだ!」

「どうしたの?」

 稜が、何か閃いたようだ。


「なぁ...栄、栄は勝つ気持ちはあるか?」

「あぁ、もちろん!俺は優勝するって決めたんだ!」

「なら...俺の分のポイントを託してもいいか?」


「───ポイントを託す?」

「あぁ、俺の持つ12ポイント全てを栄に譲るんだ!そうすれば、栄は一気に26ポイントになる!」

「そうか...なら、そうしてもいいかもね...」

「うん、そうだよ。今日が終わっても、まだ3日はあるし!」


 俺は、明日稜のポイントを全て譲ることになった。俺が譲っても良かったのだが、「2ポイント余っちゃうでしょ!」という理由から却下された。


 ───俺が、チームCの命運を握ることが決定した。そして、4月5日は過ぎて行き次の日になる。

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雨城蝶尾様が作ってくださいました。
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