冒険の始まり その①
【訂正】
前話の最後に「転生」と言いましたが、正確には「転移」という設定です。
「お主らが、異世界から転移して来た勇者様達か...」
ゲーム開始と同時、そんな声が聞こえる。その声の主は、金の細かい装飾が為された玉座に座っており、頭の上には王冠と思わしきものを付けていた。
左右には、ズラッと列をなしている鎧を身に纏った兵士が大量に並び、人形のようにピクリとも動かなかった。
まるでファンタジーの世界。
今回の第8ゲーム『RPG 〜剣と魔法と古龍の世界〜』は、タイトルからしてファンタジーのRPGであるから、きっとここはそういう設定なのだろう───健吾達はそう理解する。
「ここドラコル王国の姫が、『古龍の王』ヤコウに誘拐されてしまって...」
「姫とは、栄のことか?」
その玉座に座り王冠を付けている人物───姫などと言っているしきっと王様だろう、が口にしたことに、愛香は思わずツッコんでしまう。
「ブフッ」
「ちょ、愛香。やめろ、栄がお姫様は面白いからやめろ」
「栄がお姫様...」
「サカエ?そんな名ではない。プラム姫じゃ」
「プラム姫...」
プラムは日本語で、すもも。
これはデスゲームで、NPCにそこまでの力は入れてないだろうから、ピーチ(桃)ならぬ、プラム(すもも)なのだろう。
「それで、勇者である皆様にはプラム姫を頼みたいのです」
「国王陛下───であってますかね?」
「あぁ、あっておる。私が国王じゃ」
「ちょっとタイム」
そう口にして、康太は両手でTの字を作って、タイムをもらう。そして、第8ゲームに参加することになるであろう、栄以外の第5回デスゲーム参加者───要するに、その場にいる全員を集めて、円になって話し合った。茉裕もいたが、仕方なく仲間にいれることにした。
「どうする?プラム姫、救うのか救わないのか」
「私達の目的は栄を救うことでしょう?プラム姫?は、正直関係ないかも...」
「でも、これを断ったら国王陛下から何も貰え無さそうだぜ?ゲームなら、初期装備が貰えるはずだ」
「あー、そっか。じゃあ、ここで初期装備を貰ったほうがいい感じかな」
「ワタシもそう思う。流石に、この世界の世界観もよくわかっていない以上、話は聞いたほうがいいと思うし」
これがデスゲームであり、ゲームであることがわかっている皆は、これが「ゲーム」だという体で話を進めている。ルールが「1.誘拐された池本栄を救出したら全員がゲームクリア」と「2.ゲームの世界で死亡したら、現実世界でも死亡する」だけであり、後者はゲームの縛りには関係ない以上、これは自由度を大切にしている、もしくは自分達でルールを見つけることを大事にしていることが理解できた。
「じゃあ、ここは話を聴いて受け入れる。それでいいよね?」
「あぁ、それでいいだろう」
「勇者様、話はまとかったかのう?」
「あぁ、待たせてしまって申し訳ないです。国王陛下。これからもこのような無礼があるかもしれませんが、何も慣れていない身でございますので寛容な目で見てくださると嬉しい限りです」
「わかっておる。こちらもお願いする身じゃ。無理は言わぬ。それで、結論を」
「ここにいる全員、プラム姫の救出に協力します」
「勇者様、ありがとうございます。どうか、私の愛娘を助けてください」
───こうして、康太達は栄を救出すると同時に、プラム姫の救出にも力を貸すことになったのだった。
***
一方、こちらは囚われの身である俺だ。
「どこだよ、ここー...」
「こ第
こ8
はゲ
ゲー
ーム
ムの
の実
世施
界場
だ所
。だ」
俺は、牢屋の中にいる。薄汚れた牢屋の中に俺は監禁させられている。
「もしかして、俺は今回のゲームはほぼ不参加に等しい?」
「そ
う
だ
な」
どうやら、第4ゲーム『分離戦択』の智恵の時のような感じで、俺は今回ほとんど出番がないようだった。
「それで、お前が門番ってわけか。百鬼夜行」
「正
解
だ」
そして、百鬼夜行は俺の方へ紙を渡す。そこには、以下のようなルールが書かれていた。
第8ゲーム 『RPG 〜剣と魔法と古龍の世界〜』のルール
1.誘拐された池本栄を救出したら全員がゲームクリア。
2.ゲームの世界で死亡したら、現実世界でも死亡する。
「これが...」
「今
回
の
ル
ー
ル
だ」
「俺を助けるために皆が動くってわけか...」
これまでは、俺が誰かを助けるために動いていたけれど、今回はいつもとは逆だったようだ。
「皆そ
のれ
動で
きも
は見
、て
見、
え暇
るで
よも
う潰
にし
して
てお
やく
るん
よだ
。な」
「───あざーす」
俺は、百鬼夜行にそう口にする。
だが、今回の敵は茉裕に加えて百鬼夜行もだとは。
───などと、そんなことを思っていると。
「───こ、ここは...」
誰もいないはずの後方から声が聞こえて、俺は思わず振り返ってしまう。その声の主が、確かにそこにいた。
長い金髪を持ち、整った美貌を持つ白皙な人物。牢屋にいても尚、映える一人の女性の姿がそこにはあった。
「えっと...」
「栄こ
、の
お国
前の
は姫
こだ
のし
牢、
屋仲
で良
相く
部し
屋ろ
だよ
。な」
そう口にして、百鬼夜行は歩いてどこかへ行ってしまう。
「俺の名前は池本栄。えっと、アナタは...」
「プラム。ここ、ドラコル王国の姫であるプラムと申します」
俺と相部屋の金髪の女性は、プラムと名乗った。
どうやら、囚われの身は俺だけではなかったようだ。