6月28日
第7ゲーム『ジグジググジュグジュ擬似選挙』が終わり、週末を挟んで月曜日。
クラス会長になった俺だけど、特に特別な仕事が舞い込んでくるようなことはなかった。
「珍しく平和な学校生活だったな」
HRが終わった後の教室。寮へ帰っても帰らなくてもいいこの時間で、俺は健吾と一緒に話していた。
「まぁ、先週は裕翔とのイザコザで大変だったしな。3日あったし、誘拐とかあって大変だったし。んま、オレはその場にはいなかったんだけど」
健吾はそう口にして、自虐的に笑う。
チームCの中で唯一、健吾だけが智恵と紬が誘拐された際に体育館にいなかった。
これは一昨日九条撫子に聞いたことだが、智恵が七つの大罪の憤怒と嫉妬を暴走させてしまった時、体育館まで駆けつけていったらしかった。そして、体育館の外には皇斗と愛香の2人もいて、俺達の戦闘を見ていたようだった。
助けに入りこそしなかったけれど、もしもの時に備えてくれていたようである。
まぁ、愛香に関しては完全に俺を助けるつもりなどなく好奇心に従って見ていそうだけれど。
「健吾は何してたんだ?」
「オレは美緒と梨央との3人で図書室で勉学に励んでたよ。図書室って言っても、4階にいたからオレ達は智恵や紬が誘拐されるところには出くわさなかった」
健吾はそう口にして、小さくため息を付く。
「全く、オレだって助けに行きたかったのによ...」
「気持ちだけでもありがたいよ」
健吾は俺達のムードメーカー的存在であり、俺達と同じように正義感を持っている。
だから、こうして智恵や紬、そして俺の危機に駆けつけられなかったことを悔やんでいるのだろう。
「オレだけなんだよぉ、ほとんど結果出せてないの!」
「そうか?」
「あぁ!第1ゲーム『クエスチョンジェンガ』も第2ゲーム『スクールダウト』もなんにも出来てないし、第3ゲーム『パートナーガター』は稜が頑張ってたのにオレは何にもしてない!」
「でも、第4ゲーム『分離戦択』は4回戦の『限界ババ抜き』で出てくれたじゃん」
「あれはほとんど純介の無双だった、オレはただ座ってただけだよ!第5ゲームは本戦も予戦も何もしてないし、ラストバトル『ジ・エンド』だって智恵と一緒に待機してただけだしよぉ...」
これまで、大した活躍ができていないことを、健吾は相当気にしているらしい。
それに比べると、俺はほぼ全てのゲームでかなりの戦績を残していることとなる。
もうすぐ、この学校での生活が始まって3ヶ月が経過する。まだ、卒業まで1/4しか過ごせていないこととなると気が遠くなるし、まだまだデスゲームをクリアしなければならないと考えると、生きていけるか不安になる。
だけど、デスゲーム漫画のように、毎度毎度窮地に陥れられてからの逆転───という形ではないから、問題ない。それに、夏休みもある。
実際に休みになるかはわからないけれど、その間の期間はデスゲームが無いことに期待したい。
───と、そんなことを思っていると。
「栄」
「ん、何───って、茉裕!」
閑散としてきた教室に入ってきたのは、第5回デスゲーム生徒会メンバーの茉裕であった。唐突な登場と、俺が名前を呼ばれたことによって、空気が緊迫する。
「ひどいよねー、こうやって警戒して。私だってこのクラスの一員なんだよ?クラス会長なら、マスコット大先生を見習って誰一人として差別なく平等に扱うべきじゃないの?」
「こちとら勝手に任命されてんだよ。それに、お前は俺の───俺達クラスの敵である生徒会だ」
「はいはい、そうですか。それなら、敵らしく敵らしいことさせていただきますよ」
「敵らしいこと?」
「うん。百鬼夜行」
「仕
事
の
時
間
だ
な
?」
「───ッ!」
その言葉と同時、俺の眼の前に現れたのは第2回デスゲーム生徒会メンバーである鼬ヶ丘百鬼夜行であった。相変わらずパンイチにペストマスクと、奇っ怪な格好をしている。
「何を...するつもりだ?」
「武力侵攻」
「「───ッ!」」
俺の疑問に、淡々と答える茉裕。その解答に、俺と健吾の2人は衝撃を覚える。
「栄、どうする!」
「戦えるわけないし、勝てるわけ無いだろッ!」
百鬼夜行は、俺達がシラフで苦戦した鈴華に勝利しているのだ。俺達が戦っても、敗北してしまうだろう。
そんなことを重っているうちに、いつの間にか鼬ヶ丘百鬼夜行は俺の目の前に現れていた。
「死───」
「今い
度た
はだ
貴こ
様う
をか
誘。
拐池
さ本
せ栄
てよ」
「まさか───」
若干、デジャヴをような感じる展開。
俺は、鼬ヶ丘百鬼夜行の腕に掴まれて、そのまま抱き寄せられる。
その、筋骨隆々とした鼬ヶ丘百鬼夜行の胸が、俺の顔に押し付けられつつ、俺はそのまま連れて行かれそうになる。
「野郎、栄を返せッ!」
「返して欲しければ、第8ゲームで取り返すことね」
「───」
「健吾、頼んだ」
「───任せろ!」
その言葉と同時、俺と鼬ヶ丘百鬼夜行と、そして茉裕の3人は四次元へと転移させられる。
「───今回の目標は俺だったのか。随分と執着してくれるな、俺に」
「軽流
口石
をは
叩、
く池
余元
裕朗
がの
あ息
る子
かだ
。な」
「おや?今、俺の名前を呼んだか?」
「─
─
─
池
本
朗」
「俺は年上で、元先生だぞ?百鬼夜行。───って、栄。今回の人質はお前か。もしかしたら、全滅かもな」
マスコット大先生こと、俺の父親である池本朗はそう口にして、被り物をしてない顔を俺の方へ近づけてくる。
「俺の仲間は負けねぇよ」
「さぁ、どうかな?第8ゲーム『RPG 〜剣と魔法と古龍の世界〜』は、一筋縄ではいかないぜ?」
そろそろ、過去の生徒会メンバーにルビはいらないよね?