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6月25日 その⑧

 

 放課後。

 筋肉痛の体をなんとか動かしながら、俺は智恵と一緒にチームHの寮へと向かう。

 今日も今日とて、智恵の七つの大罪を抑え込むための修行をするのだ。


「お邪魔しまーす」

「やっと来たわね?クラス会長」

「クラス会長───って言うけど、別にそこまでのものじゃないぞ?クラスだって、俺達のところしかないのに」

 だから、クラス会長だなんて作る必要はないと思うのだけれど、マスコット大先生に任命された。


 どうして、マスコット大先生が「クラス会長」なるものを作ったのかはわからない。

 もしかしたら、俺に何かあった時の責任を取らせようとしているのだろうか。

 問題事を吹っかけられるのは嫌だけれども、クラス会長になることに対してはあまり反論はなかった。


「別にこっちだって栄を尊敬してクラス会長って呼んだわけじゃないわよ。でも、裕翔に負けなくてよかったわね」

「逆に俺が負けると思ってたのか?裕翔には負けないよ。どれだけ卑怯な手を使われていても」

「───それもそうね。最後の投票は、茉裕も含めて全員栄に入れていたみたいだし」


 そう、最後の投票は有権者の人数分───21票全てが、俺の元に入っていたのだ。


「はい!雑談は終わり、それじゃ早速修行に入るわよ!智恵、九条撫子は2階の和室で待ってる。栄は今日も昨日と同じことしようねー」

「全身筋肉痛で、死んじゃうよ...」

「継続は力なり、よ!それとも、アタシと実戦訓練でもする?」


 俺は、今日も腹筋・腕立て・スクワットを200回ずつやらされることになったのだった。

 これは明日も筋肉痛の継続は間違いなしだ。


 ***


 同時刻、四次元。


「───第7ゲームも終わったが、次は茉裕の出番だな」

「そうね。次は私の出番。私が本気を出す出番」


 そこに集まっているのは、茉裕達4人の第5回デスゲーム生徒会メンバー。

 クラスの1/3以上が死亡していて尚、未だ1人も欠けることなく存命し続けている生徒会メンバーは、こうして机を囲んでいた。


 ───過去の生徒会メンバーは、デスゲームに参加している間に誰一人として欠けたことはない。


 第1回から第4回までのこれまで完遂されたデスゲームの全てにおいて、生徒会メンバーは誰一人として欠けることはなかった。

 そこには、血の滲むような努力と他生徒へと付き続けた嘘があるのだが、それを語るのには時間が足りない。それに、そこは本筋ではないのだからまた別の機会にでも話すことにしよう。


 過去の生徒会メンバーも現行のデスゲームに補助教師として関わることがあったが、そこでも死亡するようなことはなかった。

 だけど、第5回デスゲームは違う。


 第3ゲーム『パートナーガター』での廣井大和(やまと)の死亡を皮切りに、田中・コロッセオ・太郎や鬼龍院靫蔓に、飛騨サンタマリアなどの過去の生徒会メンバーがどんどん死ぬことになっていた。

 それは、まるで第5回デスゲームを行うために、過去4回のデスゲームは行われた───かのように。


 だが、マスコット大先生───GMの息子である池本栄が参加している以上、その「まるで」が全くの虚言であるとは断定できないのも事実である。

 実際、それに似たことをGMである池本朗は、息子である栄にそう語っていた。


 よくも悪くも他の4回とは違う第5回デスゲーム。

 その回の生徒会メンバーが、こうして画策しているのだった。


「それで、第8ゲームのルールは聞いているのか?」

「いや、何にも」

「大丈夫なのか?」

「大丈夫よ、どうせ栄が敵として立ちはだかってくるのは変わらないことだし?」

「次はない───マスコット大先生はそう言ってた」

「えぇ、後に引く気はないわ。後先も考えてないけれどね」

「嘘つけ。後先しか考えてないでしょ。口先ばかりで言うなよ」

「てへぺろ」


 そんな会話を繰り広げるメンバー。

 待ち構えている第8ゲームへのことを、こうして話していても仕方ない。


 生徒会メンバーの話は、裕翔の死へと変わった。


「それにしても、面白い最期だったわよね。裕翔は」

「そうだね。あれは俺達だけしか味わえない最期だった」

「康太も酷いよねー、友達だからってずっと裕翔に入れてたのに、最後の投票には栄に入れてたの」


 そうやって、生徒会メンバーに笑いものにされる裕翔。

「それを言ったら、茉裕だって最後は栄に入れてただろ?」

「えぇ、当たり前じゃない。どうせ裕翔は栄に勝てないんだし、折角なら裕翔の絶望することが見たいな───って」

「性格悪いな」

「生徒会として、裕翔と協力関係を結んでたんじゃないの?」

「えぇ、結んでたわよ。裕翔は自分が上───だとか言ってたけど、そんな訳無いじゃない。裏切るに決まってる」


 茉裕はそんなことを口にしながら、ニンマリとその口角を上げる。


「まぁ、裕翔は死んだしほとんど問題はないな」

「うん、そうだね」

「それじゃ、次は栄を殺すか」

「もちろん。これからは敵対していくことも速そうだし、早めに片付けちゃってよさそうね」


 生徒会メンバーの意見は、栄を潰すことに一致する。


 ───まだまだ、生徒会の策謀は留まるところを知らないのだった。

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雨城蝶尾様が作ってくださいました。
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