6月25日 その①
第7ゲーム『ジグジググジュグジュ擬似選挙』のルール
1.本ゲームは2人が立候補者となり、残る参加者は有権者となる。
2.有権者には1日の中で午前10時と午後13時の計6回に投票する権利が与えられる。
3.立候補者は投票することができないけれど、教室にて1日1回10分間の演説タイムが与えられる。演説タイムの際は、生存している有権者は全員集合しなければならない。
4.片方の立候補者が演説をしている場合は、もう片方の立候補者はそれを聴くことができない。
5.有権者は、指定の時刻から1時間の間に投票箱に正しいフルネームを紙に書いて1枚のみ投票することが可能。
6.投票は任意だけれど、初日の1回目と最終日の2回目の2回は必ず有効票で投票しなければならない。
7.投票数が多かった立候補者の方は生き残り、投票数が少ない立候補者は死亡する。
8.立候補者は有権者及び立候補者に暴力を振るうことができるが、有権者は立候補者及び有権者に暴力を振るうことはできない。
9.有権者は、投票の義務を守らなかったり、1度の投票で2枚以上投票したら死亡する。
「───」
鈍い痛いに襲われる中、俺は智恵のことを体全体で感じながら目覚める。
昨日は、お互いに抱き合いながら眠ったのだ。過去のトラウマが智恵にはあるから、性的な行為はしていない。
「───可愛いな」
俺は、まだ眠っている智恵をより俺の方へと引き寄せる。智恵の柔い体が、俺の体に当たる。全身の筋肉痛が酷く、今日は動きたくない。でも、今日はまだ金曜日で休みではない。
だから俺は、智恵のことをガッシリとホールドするように抱きしめて、眠っている智恵を目一杯吸入する。
智恵のいい匂いがして、心がポカポカしてくる。これだから智恵を吸うのはやめられない。
「───んん...」
智恵が、そんな可愛い声をあげて細く目を開ける。
それを確認した俺は、智恵のおでこに俺のおでこを当てて、そのまま智恵を抱きしめる。
「───」
そのまま、俺と智恵の唇が触れ合い、朝からキスをする。智恵は開けた目を瞑って、俺とのキスを堪能する。
「ん」
智恵が、咳き込むような呼吸を一度すると、俺は智恵の唇から離れる。少し口が寂しくなったけれど、智恵が呼吸できなくて苦しくなる方が嫌だった。
「さかえ、おはよう...」
智恵が、寝ぼけ目のままそんなことを口にする。
「智恵、おはよう」
俺が、そんな声をかけると智恵は再度目をつむり俺の方へ静かに顔を向ける。キスのおかわりだ。
もう一度、俺は智恵の整った唇に、自らの唇を重ね合わせる。
昨日、裕翔から智恵を守りきれて本当に良かった。こんな幸せな朝が迎えられるのだ。
本当に、智恵が無事で良かった。
おかわりのキスを終えると、智恵は少し恥ずかしそうにベッドの中へと潜っていく。俺は、逃がすまいと智恵にガシリと抱きついて、智恵の顔が俺の鎖骨あたりに来るように状態で抱きしめる。
「んー、さかえぇ...」
智恵は、寝起きのトロンとした目を俺の方へ向けて頬擦りするようにして甘えてくる。俺は、右手で智恵の頭を撫でる。
そして、そのまま数分抱き合った後、俺は転がるようにしてベッドから出た。
「んじゃ、起きよっか」
「ん」
俺は、智恵を抱っこしてベッドから出す。智恵を持ち上げる時、筋肉痛で全身が痛むけれど我慢だ。
「筋肉痛、我慢してる?」
「バレたか」
「栄のことだもん。なんでもわかるよ」
どうやら、我慢していたことは智恵に丸わかりだったようだ。バレているようじゃ、無理に隠す必要もない。
「昨日の修行で、かなり酷い筋肉痛だ。でも、智恵がいてくれるからかなり和らぐよ」
「ん、じゃあもっとギューしよ」
智恵はそう言うと、そのまま俺に抱きついてくる。
「体重、かけていいよ」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
俺は、智恵にちょっと体重をかける。立っているだけでも、太ももが痛むから、こうして体重を委ねられるとかなり楽だ。
「んー、背中によりかかってよ。これじゃ、前に進めない」
「ん、ごめん」
智恵は、そのまま180度回転して、俺を背中に移動させる。少し、俺のことを背負おうと試みたものの、流石にそこまでは行かなかったようだ。
俺は、両手を智恵の肩にかけて、その大きな胸に触れるか触れないかのところに手を起きながら、智恵と一緒に進む。
「辛くないか?」
「ううん、大丈夫」
こうして、俺達が廊下に出ると───
「栄...何、してるんだ?」
たまたま、廊下に出るタイミングが重なった健吾に、俺と智恵とイチャつきを見られたのだ。
俺と智恵の2人は、顔を真っ赤に染め上げてお互いに離れた。そして、2人の中でイチャつくのは私室の中だけにしよう───と、密かに決められたのだった。
***
そして、俺達は登校する準備をして、いつもと同じ時間に学校へと向かう。
教室に行くと、不愉快そうに俺の席2つ前の自分の席に座っていたのは裕翔であった。
前までは、時尚というクッションがあったので直接その背中を見ることは無かったのだけれど、時尚は第6ゲーム『件の爆弾』の中で原因不明の死を遂げてしまったため、俺は裕翔の不愉快そうな背中を直接見ることになってしまったのだ。
気まずそうに、不愉快そうに腕を組む裕翔の周囲でつるむ人はいない。
ちなみに、裕翔の隣の席の誠は、表情1つ変えずに本を読んでいた。
裕翔は、その頭で何を考えているのか俺にはわからない。きっと、俺に対しての嫌がらせを考えているようだけれど、具体的に何を考えているかはわからなかった。
裕翔が用意する卑劣な手段は、対策することさえも面倒な内容だ。こっちも、昨日のうちにそれなりの指示はしていたけれど、それをぶち壊してくる可能性も全然ありえる。
───と、そんなこおtを思っていると、教室に入ってくるのは、見慣れた被り物をした人物、マスコット大先生であった。
「はい、皆さん。おはようございます、ご機嫌いかがですか?」
マスコット大先生は、教室に入ってくるとホームルームを開始する。そして、事務的な連絡をした後に───
「───はい、それではホームルームを終わります。起立、礼。ありがとうございました」
マスコット大先生の挨拶が終わり、ホームルームが終わる。
この挨拶は、第7ゲーム『ジグジググジュグジュ擬似選挙』の最終日の幕開けを表していたのだった。
あまりにも閑話が思いつかなかったので、本編を進めることにしました。
閑話のネタ、永遠に募集中。