6月24日 その⑲
本日10月26日は池本栄の誕生日!
1年1度のおめでたい日。誕生日おめでとう!
「俺も...修業をするの?」
「えぇ、当たり前じゃない。智恵が頑張ったところで、栄が弱くてすぐ負けそうになったらそんな努力も水の泡。頑張って強くならないと」
歌穂は、そうやって俺に対して修行を促してくる。
別に嫌だというわけではない。智恵の修行は1日2時間。頑張っている智恵を横目に、俺はチームHの寮のリビングでただ待っているだけ。
「別に...やってもいいけれど...」
「お?楽しそうな話をしているな。妾も混ぜてくれ!」
そうやって、会話に入ってくるのは第3回デスゲーム生徒会メンバーである、柊紫陽花であった。
「紫陽花...」
「ねぇ、紫陽花もいいと思うでしょ?栄を修行するの!アタシだけじゃ足りないところもあるし、協力してくれると嬉しい!」
「妾も居候させてもらっている身。家事の手伝いをさせてもらっているものの、それだけじゃまだ物足りない。だから、手伝わせてくれ!」
「え、えっと俺はチームHとは関係ないし...」
「いやいや、栄。君は靫葛に主人公だと認められた器!その才能を腐らせるには行かない!それとも、靫葛の言葉を無下にするつもりか?」
「───わかりました...」
どうせ了承の返事をしないと、歌穂と紫陽花の2人は納得しないだろうから、俺もそれに協力することにした。すると───
「栄を修行...面白そうね。私も協力してあげるわ」
「撫子も?!」
「えぇ、智恵を修行する片手間に、栄を修行するのも無しじゃない」
「でも、智恵に集中してもらったほうが...」
「いやいや、まだ坐禅以上の目処は立ってないし、栄の方を鍛えておけば、栄が危機に瀕する事も少なくなるし、いい機会よ」
俺の選択肢は存在せず、ドンドン話が広がっていく。
チームHにいる歌穂・紫陽花・撫子の3人が納得しているようじゃ、断れる程の理由はない。
でも、まだまだ脅威は多い。まだ顕になってない生徒会メンバーと対峙するにも、ある程度の力は持っていた方がいいだろう。
「わかった、やるよ。あんまり痛いのは嫌だけど、俺だって少しは強くなりたいし、なってないといけないし...」
俺は、そう口にする。智恵も頑張っているし、俺も何か頑張ろう。
「───囀るな。智恵が上で坐禅を組んでいるんだぞ?貴様ら、集中させるつもりはないのか?」
そこに姿を現したのは愛香であった。智恵は今、2階の畳部屋で坐禅を組んでいる。どうやら、そこに顔を覗かせてから降りてきたようだった。
「あ、愛香!愛香も栄の修行に協力してくれる?」
「はん?栄の修行だと?くだらんな」
愛香はそう口にして、ソファに深く座る。
「えー、どうして」
「今の栄はヘナチョコだ。くしゃみで吹き飛ぶような輩に妾が教えることなどない」
「んな、失礼な」
一応、愛香とはこっくりさんを倒したりなどで共闘はしてるはずだった。それなのに、こんな言い方をしてくる。愛香らしいと言えば愛香らしいけれど、少し失礼だ。
「でもまぁ、ある程度の実力者になったら協力してやらんこともない」
「───本当?」
「あぁ、だがその時は肉を切って骨を断つつもりでいく」
「俺、殺されない?」
「まぁ、愛香と一緒に修行する時には栄も強くなってるし、大丈夫。大丈夫!」
歌穂はそう口にして、愛香の方から俺の方へと視線を移す。
「んじゃ、早速始めましょう!って、思い立ったが吉日だけど、その場の勢いで提案して、その場の勢いで結成して、その場の勢いで決定しちゃったから何をすればいいのやら...」
「んん、初っ端から結構不安だぞ?」
歌穂はどうやら、勢いで「修行」を提案してきたようだった。
行き当たりばったりで提案するとは、俺も予想していなかった。少しは何か考えていたと思っていたのに。
「しょうがない、じゃあ一緒に基礎トレーニングからよッ!腹筋腕立てスクワット、全部1日200回!」
「鬼畜ッ!」
「仕方ないじゃない、やるのよやるの。アタシも一緒にやってあげるから」
「は、はい...」
こうして、俺は智恵の修行が終わるのを待つ間、主に歌穂と一緒に修行することが決まったのだった。
───2時間後。
「栄、終わったよ。待った───って、え?」
「163...164...165...って、智恵」
「スクワット───してるの?」
「あぁ...」
「ちょっと栄、集中して!足は地面と直角に!」
「愛香、これって...」
「詳しくは知らん。紫陽花に聴け」
「歌穂が急に栄も修行が必要だ───って言い始めて、その修業で腹筋腕立てスクワット、全部1日200回だそうだ」
「うわ、大変...」
「腹筋と腕立てはヒーヒー言いながら終わらせてたし、後40回くらいだ。待っててやれ」
「それはいいけど...」
「ちょっと、後40回くらいとか、座って紅茶飲んでるだけのやつが言うな!紫陽花もやれ!」
俺は、優雅にティータイムを過ごしている紫陽花に対してそんな言葉をかける。
もう既に、俺の四肢と腹筋は限界を迎えていた。明日は筋肉痛───だなんてレベルではない激痛に襲われてしまうだろう。
「こら、もっとちゃんと腰を落として!」
一緒に修行に付き合ってくれている歌穂から、そんな喝が飛んでくる。
今日から色々、大変になりそうだ。