4月5日 その②
「「「スクールダウト?」」」
俺達は、思わず先生に聞き返してしまう。
「はい、第2ゲーム『スクールダウト』です!その説明をさせていただきますね!」
マスコット先生はそうウキウキしながら、何かを白板に書き始める。
4/5から4/9までの5日間がズラリと書き出された。
「ゲームの予選は本日4月5日から、木曜日の4月8日までの4日間で行います!そして、4月9日に本戦を行います!」
マスコット先生は、4月5日から4月8日までを矢印を書いて「予選」と書く。そして、4月9日の下には赤いペンで「本戦」と書いた。
「本戦に残れるのは、なんと6名のみです!なんと、倍率は5倍!」
「ちょっと、待ってください!5倍ってどういう事ですか?」
「あぁ、そうでした。予選に参加する権利があるのは30名だけなんです。残りの5名は週末に出した課題をやっていないので出る幕も無いのですよ」
課題をやっていないのは、計算でいくと5人いると言うことだ。教室の空席は、金髪の少女と昨日死んだ平塚ここあさんだけだ。
「課題をやっていない5名。本人はわかってますよね?隠しても、結局はバレてしまうので5名はもう名指ししてしまいます!安土鈴華さん・岩田時尚君・園田茉裕さん・成瀬蓮也君・三橋明里さんの5人ですね!」
「いやぁ、やっぱやらないとマズかったかぁ...」
後ろにいた、時尚がそんな事を言っている。スマホで先生に課題を取り組まなかったらどうか確認して「死ね」とマスコット先生に言われたのに、結局課題を取り組まなかったのか。
彼のその胆力には一種の憧れまで感じてしまう。
「先程、呼んだ5人は第2ゲームの参加資格はないですので、今週一週間はまぁ、懺悔でもしておいてください!」
マスコット先生はそんな事を言う。
「今回も、もしかしてデスゲームですか?」
康太が、先生に説明する。
「そんな、死ぬなんて危ないこと言わないでくださいよぉ!コンプライアンスに引っかかったらどうするんですか?最近、教師も大変なんですよ?女子生徒の体調の心配をしただけでセクハラだって、通報される世界なんですよ?なのに、デスゲームなんて言える訳ないじゃないですかぁ!」
デスゲームの主催者が、何を言ってるんだと思いつつも耳を傾ける。
「まぁ、ある意味デスゲームではないでしょうか」
「ある意味?」
「はい、肉体的には死にませんよ。肉体的には。まぁ、自殺したくなるんじゃないですか?」
「───ッ!そんな...」
「まぁ、本戦の話ですよ。予選落ちすれば、そんな苦痛を味わうことはありません!」
ならば、予選落ちを狙ってもいいかもしれない。
「予選落ちしたやつは死ぬとかは?」
「無いですよ。だから、死ぬとか言っちゃだめですから。コンプラは怖いですよ?」
ならば、予選で落ちたほうがいいのかもしれない。
「あ、本戦で優勝した方には、5万コインと『自分以外の誰か1人の禁止行為がわかる権利』というものを授けます!」
「───ッ!」
俺らに、走る激動。他人の禁止行為がわかるならば、その人物の安全は確認することができる。
例えば「歌を歌ってはいけない」とかになれば、歌さえ歌わなければ解決するのだ。禁止行為で死ぬことはなくなるのだ。
「ヤバいな、これ!」
健吾が、そんな声を出す。
「倍率5倍...これは、勝ったほうがいいのかな?」
「さぁ、わからん...でも、この1年を生き残るためなら禁止行為を知ったほうがいいかも...」
「それはそうだな!」
「そして、本戦に参加した人も、参加賞金として3万コインを差し上げます!どうでしょう、皆さんやる気は出てきませんか?頑張ろうと思いませんか?」
「3万コインってことは3万円だろ?なら、頑張る価値はあるかもな!」
「───でも、自殺したくなるって...」
「挑戦して、すぐに負けを示したらどうだ?自主敗退は認められるだろうし」
「───それは、そうだね!」
本戦を目指して、頑張ることとした。『スクールダウト』がどんなゲームかわからないが頑張ろうと思う。
「予選と本戦では、ルールが全く変わります!ですので、本戦のルール説明は本戦が始まる前にすることとします!それでは、本日から4日間の予選のルール説明をします!」
先生が手を叩き、ルール説明を始める。
「まず、予選参加の権利がある人には一律に10ポイントが配られています!」
先生は、領収書のような長方形の紙を取り出した。
「学校中に、この紙を置いておきました。別に、隠している訳じゃないです!教室の机の上においてあるとかですので。すぐに見つけられるでしょう。あ、グラウンドや体育館・温水プールにもあります!」
先生はその紙をピラピラと動かす。
「この紙には、生徒の情報───例えば年齢や誕生日。身長や体重ですね。今、私が持っているのは死んでしまった平塚ここあさんのものです!」
目を細めて、その紙を見てみると
年齢:17 誕生日:10月1日 身長:143cm
体重:37.6kg 血液型:B型 出身地:静岡県
───と書かれていた。
これは、全て彼女の個人情報なのだろう。
「この紙に書かている情報に当てはまる人の体にこの紙を貼ってください!貼った人は、貼られた人に2ポイントを譲渡します!」
マスコット先生はそして、ニヤリと笑う。被り物なのに、やはり口角が動いた。
「間違った人に貼ると、貼った人は貼られた人に4ポイント譲渡しなければなりません!ですので、貼る時は気をつけてください!ポイントが0になった人は、敗退!予選を生き残った人が6人になるか、4日間が過ぎるまでゲームは続きます!4日間が過ぎた場合は、ポイントを持った人から順番に本戦に上がります!それと、この紙は誰にも当てはまらないダミーの紙もあるので気をつけてくださいね!」
その人を、どれだけ理解しているかというゲームになるのだろう。
「と、まぁ。ルールはこの教室の白板にまとめて書いていくのでゲームが始まったら確認しに来てください!」
マスコット先生は、そう雑に返した。
「それでは、第2ゲーム『スクールダウト』予選、スタートです!」
マスコット先生の言葉によって、第2ゲームは唐突に始まった。全てのルールは理解していないが、紙に書かれた情報に当てはまる人にその紙を貼ればいいのだろう。





