6月20日 その②
突如として、チームCの寮に現れたのは第3回デスゲーム生徒会メンバーの九条撫子と深海ケ原牡丹であった。
九条撫子の方は、ラストバトル『ジ・エンド』で見たことがあり智恵を人質にするために動いた人物だと聞いている。パイロットゴーグルを頭につけているし、特徴としては彼女であっている。
一方の深海ケ原牡丹は、同じく『ラストバトル』で、純介が戦った相手のようだった。
基本的にモールス信号で喋る相手のようで、純介も少し難儀だったと語っている。
「牡丹さん」
智恵が、そうやって名前を呼ぶ。
「面識、あるのか?」
「うん。第4ゲーム『分離戦択』の時、私誘拐されてたでしょ?その時に一緒にお話したの」
「そうだったのか」
「--・・- -・-・- --・-・ --・・ ・・ --・」
「お久しぶりです。今日は、どんなご要件で?そちらの、えっと...」
「───ッ!私に話しかけるなァ!お前を殺しに来たんだッ!」
「智恵を、殺しにッ!」
俺は、サッと智恵を守るように九条撫子と智恵の間に立つ。もちろん、過去の生徒会メンバー2人と俺達との距離は5m以上空いていたが、どんな攻撃がされるかわからない。俺達はこうして庇っていないと。
「--・-・ ・--・ ・-・・ --・ --・-・ ・-・-- --」
「そう言われてもよ...」
なぜだか知らないが、九条撫子はかなり苦しんでいるようだった。体に毒でも回っているのだろうか。
「智恵、お前の持つ七つの大罪は危険だ...お前の持つ力は、世界を崩壊させるッ!」
「七つの大罪?」
智恵は、九条撫子の口にする「七つの大罪」に対して不審そうな顔をする。
「気付いてないフリをまだ通すか?」
九条撫子は、深海ケ原牡丹に肩を借りながらそう口にする。そこには怒りや執念というものが感じられた。
「気付いてないって...」
「私は知っている!第6ゲーム『件の爆弾』の最終決戦!お前は鈴華相手に憤怒を纏った!そして、そこにいる恋人の栄にまでその憤怒を共振させた!」
「───」
俺にも、思い当たる節はあった。あの時、智恵がこれまでに見たことがないほどのオーラを纏っていたのだ。
そして、俺の腹からも同じように怒りが湧いてきて、原因不明ではあるが鈴華に殴られてすぐに体を動かすことができた。
「お前が使っているのは悪魔の───いや、紛うことなき人間の能力!だが、それは人間の沙汰ではない!」
九条撫子は、冷や汗をかきながら智恵のことをそう罵る。
その必死の形相に、その場にいる誰もが口を挟むことはできなかった。
「───栄。お前の恋人はな。七つの大罪を全て保有している!本来なら、そんなことはない。少なくて1から2個。多くて5・6個。だけどな、全部持っているなんて生まれてこの方見たことがない!街ですれ違った人も含めて、話したことがない人も含めて七つの大罪をコンプリートしている人なんか初めてだ!」
「───だから、なんなんだ?」
「───は?」
「だからなんなんだ?七つの大罪を持ってる?そんなの関係ない」
「関係ないだと?お前の恋人は世界を破滅させる可能性のある力を持っているんだぞ?」
「だから、そんなの関係ないって言ってるだろ!七つの大罪を全て持っていようが、世界を破滅させる可能性があろうが俺にはそれっぽっちも問題じゃねぇ!ただ俺は、恋人になった智恵を愛するだけだ!」
「───ッ!このバカップル!」
九条撫子は俺達2人をそう罵る。そして、こう続けた。
「私は、私の正義に則って智恵に勝負を申し込む!もちろん、デスゲームだ!勝てば生き残り負けたら死亡!それであれば文句はないだろ!」
「デスゲームだと?そんなの言いわけないだろ。文句はなくても許されはしない───」
「いや、全然。許します。許します。超無問題、オールオッケー!」
九条撫子と深海ケ原牡丹が部屋にやってきた時のように、四次元からここに乱入してくるのは俺の父親───要するに、マスコット大先生であった。
「マスコット大先生...」
「デスゲームと聴いたら北へ南へ東奔西走。逃げも隠れも致しません。平等で公平で安全な審判が必要でしょう?ね、池本栄君」
「───」
マスコット大先生は、デスゲームであればいくら味方陣営の人物でも容赦なく殺す。要するに、公平で平等であることは俺もわかっていた。だから、無闇矢鱈と否定することができない。
「---- --- ・-・-- ・・ -・・-・ ・-・-・ ・・・- -・・・ ・-・ ・- -- --・-」
追い討ちをかけるようにして、深海ケ原牡丹もここぞとばかりに言葉を───正確には信号を口にする。
「栄...」
「仕方ない。戦うよ。智恵は俺を信じて───」
「何言ってるのよ。私は栄に用はない。私は智恵に、牡丹は純介に用がある。だから、今回のデスゲーム参加者は智恵と純介の2人だけ」
「なっ───」
「了解しました!では、参加メンバーも決まったことですし、早速第7ゲーム───否、第6ゲームと第7ゲームの間のEXゲームに行きましょう!」
声高々にそう宣言するマスコット大先生。どうやら俺に参加する余地はない。
「EXゲームは机とカードだけでできるゲームでにしましょう。てなわけでEXゲーム『仮名奪取クイズ』の開幕です!」