6月19日 その㊶
───第6ゲーム『件の爆弾』の終了と同時、俺達は一気に『3-Α』の教室へと運ばれる。
俺は、智恵と目が合いお互いに安堵する。
よかった、生きていた。これにより、爆弾が解除されたのだ。
「皆さん、お疲れ様でした!教室の一部は死屍累々の阿鼻叫喚と化しておりますが、順次救護室及び保健室へと運んでいきますので」
そう口にするマスコット大先生。歌穂は腹から血を流して死にそうであるし、稜や健吾だって意識を失ったままだ。
「───と、その場にいなかった方は何が起こったかわかっていない人も多いでしょう。ですので、説明します。第6ゲーム『件の爆弾』は、池本栄君が爆発オニであった安土鈴華を殺したことで終了しました。まぁ、鬼ごっこの鬼がいなければ続けられませんからね。そのため、爆発していない時限爆弾は解除されました」
マスコット大先生のその発言によって、確実に俺や智恵・歌穂に付いていた時限爆弾は解除されていることになった。
「まぁ、オニが全滅したことからもわかる通り、勝者は逃亡者側───則ち、アナタ達です!」
マスコット大先生はそう口にする。もちろん、勝利するためには多大な犠牲を払った。
信夫と拓人の2人は死んだ。だけど、俺達がオニを倒したのでその死を無駄にはしなかった。
繋いだのだ。信夫の死が無かったら、歌穂は時限爆弾オニを討伐するのに協力しなかったかもしれない。
拓人の死が無ければ、俺は爆発オニに勝ててなかったかもしれない。
───全部、全部あったからこそ、俺達は勝てたのだ。
「───と、色々とお話したいですが、怪我人も多いですし、救護室に運ぶのが先ですね。では、今日はこれにて解散にしようと思います!」
そう口にするマスコット大先生。
「えー、負けちゃったの?沙紀と鈴華」
その時、教室の一番後ろから聴こえてくる煩わしい声。その声の正体を、ここにいる教室の全員が知っていた。
───そう、第5回デスゲーム参加者であり、生徒会メンバーである茉裕であった。
「茉裕!」
茉裕は、通常時は教室に来ないから、今が千載一遇のチャンス。
───が、その疲労により、誰も動けない。
───ただ、一人、皇斗を除いては。
「殺す」
「───ッ!」
先程まで、茉裕が立っていたところの後ろの壁にめり込む膝。その膝蹴りは、教室の壁を凹ませるほどのものだった。
「危ない、危ない...」
茉裕は、なんとか皇斗の攻撃を避けたようだった。
「マスコッ鳥大先生を殺したんでしょ?すごいね。褒めてあげる」
そう口にした茉裕は、煽るように皇斗に背中を見せる。俺は疲労で動けないけれども、最終決戦に参加していない奏汰も立ち上がっていた。
「───でも、次は勝つから」
「安心しろ、次など無い」
その言葉と同時、茉裕の首を狙ってその拳を突き動かす皇斗。デフォで爆発オニのようなパワーを発揮できる怪物の拳が、茉裕の拳にめり込む───
───訳がなかった。
「遅昼
れ飯
てを
す食
まべ
なて
いい
。た」
突如としてその姿を現したのは、ペストマスクを被ったパンイチの男───第2回デスゲーム生徒会メンバーである鼬ヶ丘百鬼夜行であった。彼は、右手に2本の箸を、左手にカップヌードルを持って茉裕を抱きしめるようにしつつ現れた。皇斗のパンチを、箸だけで完全に押さえていた。
「ちょっと、抱きつかないでよ」
「惚つ
れい
たて
女何
にが
抱悪
きい」
「こっちが嫌なのよ。死にたい?」
「・
・
・
す
ま
ん」
そんなことを口にして、茉裕と鼬ヶ丘百鬼夜行は姿を消す。
「───ッチ...逃したか」
皇斗は、どうやら茉裕を逃したことに不満を持っているようだった。だが、過去の生徒会メンバーである鼬ヶ丘百鬼夜行が乱入して来たというのならば、仕方あるまい。
「───さて、では救護室に運んでいきましょうかね」
マスコット大先生がそう口にして、怪我人を一人ずつ救護室に転移させているのを確認して、本当に第6ゲーム『件の爆弾』を終えたことを認識する。
「───栄」
俺の名前を呼ぶ可愛い声。俺は、その声の持ち主の方を───智恵の方を向く。
「智恵」
俺は、智恵の名前を呼ぶ。そして、膝立ちで移動して智恵の方へ寄っていき、生きているという安堵を分かち合うために抱き合う。
「よかった...栄、死んじゃうかと思った...」
「俺もよかったよ。智恵が死ななくて...」
恋人が死んでしまった梨花には悪いと思うが、俺は智恵と2人で生き延びれたことに感謝する。
「───栄、なんだか熱くない?」
「そう?動いたから...かな?」
智恵が「熱い」等というので、俺は智恵から離れる。動いた後だし、それなりに熱いかもしれない。
「───と、池本栄君。アナタも殴られたようですが、このまま救護室に行って見てもらいますか?」
智恵とイチャラブしてるところにお構いなしに入ってくるのは、マスコット大先生であった。
「あ、お願いします」
「それじゃ、アナタが最後なんで私も一緒に行きますね」
その言葉と同時、俺はマスコット大先生と救護室にワープする。そこでは、皆がベッドの上で倒れていたのだった。最終決戦にはいなかったが、誠の姿もそこにあった。
───そして、俺はマス美先生に診察してもらった後、大した怪我はないと言われて、すぐに退院(退室?)したのだった。