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6月19日 その⑪

大変長らくお待たせしました。

勝手ながら、3日ほど夏休みを頂いておりました。

 

 ───俺は、空を飛ぶ。


 誰も存在しない第6ゲーム『件の爆弾』のデスゲーム会場の空を、縦横無尽に飛ぶ。

 俺は、マスコッ鳥大先生に咥えられながら、空を飛んではその存在感を遺憾なく発揮させていた。


「どこまで、どこまで行くんだ...」

 俺は、そう口にするけれども会話ができるような人物はそこには誰もいない。


 マスコッ鳥大先生は、その大きな翼を羽ばたかせて空を飛ぶ。この怪鳥を、止めることはできない。

 このまま俺は、マスコッ鳥大先生に咥えられっぱなしなのだろうか。


 ───それは、嫌だ。

 俺は、稜を助けるために行動している最中だ。俺がマスコッ鳥大先生に誘拐されている今でも、その目的は、目標は変わらない。


 逆に言ってしまえば、こうしてマスコッ鳥大先生に連れて行かれているのはチャンスだ。

 俺は、それを逃さない。だから、叫ぶ。


「稜ォォォォォォォォう!俺はここだぁぁぁぁぁぁぁ!」

 デスゲーム会場に響く俺の叫び声。これが、稜に届くのかはわからない。

 だが、俺は稜との友情を信じるだけであった。きっと、稜は俺の元に来てくれる。


 ***


「───ォォォう!俺はここだぁぁぁぁぁぁぁ!」

 稜と、共に行動している拓人の耳に届くのは、栄の叫び声だった。


「───俺の名前を...呼んでる?」

「近くにいる...のか?」

 2人は周囲を注意深く見回して、誰かが近くにいるかをチェックする。


 ───と、その時不自然に動く影が見つかり。


「───上だっ!」

 その言葉と同時に、稜と拓人の2人は上空を注視する。デスゲーム会場のほとんどを埋め尽くす森林の木々の間からチラチラと見えるその影の正体は、空を飛ぶ怪鳥であった。


「なんだ...あれは...」

「わからない...けど、誰かが咥えられてる?」

「あ、本当だ!」

「栄───ってことか!?」

 2人はそうやって判断する。その声の主が、栄であるのであれば声が聞こえたのも納得がいくだろう。


「全く、何やってるんだよ、栄...」

 稜は、若干呆れたような声を出しながらも空飛ぶ怪鳥から栄を取り返すために、マスコッ鳥代先生の方へと走っていった。


 ***


 一方、こちらは愛香と梨花の2人。


「稜ォォォォォォォォう!俺はここだぁぁぁぁぁぁぁ!」

 そんな声が、どこからともなく聴こえてきて、愛香はすぐにそれが栄の声だと言うことを理解する。


「なんとも、滑稽な声だな」

「探してたんでしょう?急がなくていいの?」

「こうして名を呼んでいるということは、まだ稜と出会っていないということだろう。妾は待つのが嫌いだ。だから、走る必要はない」

「そ、そう...」


 愛香は、梨花が付いてくることを暗に認めて2人は栄と稜の捜索を続けていた。

 そして、彼女達は栄の手がかりを手に入れたのだった。


 ***


 ───そして、こちらは安倍健吾と、東堂真胡の2人。


 マスコット大先生の仕掛けにより近くに転移した2人は、すぐに言葉を交わした。

 そして、真胡が「稜がいなくなっちゃったんだ!転移する前に見てない?」などと問う。すると───


「なんだ、真胡も探してたのか」

「私も───ってことは、栄や愛香ちゃんが健吾のところに?」

「あぁ、今から大体1時間位前かな?智恵と一緒にいたけど、智恵もそれに付いていったぜ?まぁ、この状況だからどうなってるかはわからないけど...」

「この状況だし、私もほとんど聞かされないままこうやって転移しちゃって...栄が稜を見つけられたかもわからない...」

「うーん、まぁ見つけられていたとしてもバラバラになってそうだしな...探したほうがいいんじゃないか?」

「うん...そうだね!探そう」


「───んで、真胡は転移する前は誰と一緒にいたんだ?」

「私?私は純介と紬ちゃん」

「あー...理解したぜ。あそこも2人会えたのか...」

「どういうこと?」

「んや、なんでもない」

「う、うん」


 ───2人は、こうして栄と稜を探しに動き出す。


 そして、栄の空からの叫び声を聞いてその声の方向へ動き出したのだった。


 ***


「稜ォォォォォォォォう!俺はここだぁぁぁぁぁぁぁ!」


 第6ゲーム『件の爆弾』のデスゲーム会場を歩く少女が一人。

 少女は、空から響き渡るその叫び声を聞いて、やれやれと言わんばかりのため息をついた。


「後は任せたよ、2人共。いや、2人と1匹共───かな?」

 第6ゲーム『件の爆弾』の黒幕である彼女は、どうやら栄のいる方向へ───敵地へと歩みを進めるわけではないようだった。


 それはそうだろう。彼女は、生き残ることそのものが目標であり、行きていることそのものが敵への脅威になるのだ。


 そして、そんな彼女は第6ゲーム『件の爆弾』にて、「綿野沙紀」「安土鈴華」「マスコッ鳥大先生」という3枚のカードを切った。


「これで全滅だったら、私の手札(カード)は、切り札(ガード)は一枚になっちゃう。だから、期待してるよ」

 彼女は、そう口にして森林の中を歩いて隠れられそうな場所を探す。


 ───それぞれの人物が、それぞれの目的のために動き出していた。



 第6ゲーム『件の爆弾』の最終決戦へと、物語は着実に歩みを進めていた。

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雨城蝶尾様が作ってくださいました。
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― 新着の感想 ―
[良い点] 栄、良い意味で熱いですな。 自分にはこんな熱さも元気はもうないです。 これが若さ……なのか? そして着々とそれぞれが動き出す。 最終決戦がどうなるか、楽しみです1
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