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6月19日 その⑤

 

「智恵!」

 智恵と再会する俺は、智恵と熱烈なハグを交わす。

 ゲーム開始から23時間。これまで一度も会わなかった智恵とついにここで出会うことができた。


「よかった...栄...」

「あぁ、本当に。智恵、大丈夫だったか?変なことされてないか?」

「うん、私は大丈夫だよ」

「───」


 俺と智恵の再会を、無言で見守る愛香。俺達を見て、喉を唸らせたような気もするが、気の所為だろう。

「健吾、美緒。それと誠。ありがとう。智恵と一緒に行動してくれていたのか?」

「昨日の夕食を手に入れる時からな」

「じゃあ、智恵はご飯を食べれたのか?」

「うん」

「そっか。それならよかった」


 ───と、俺は朝食として取っておいた食パンを食べることも持ってくることもなく、稜を追いかけて駆け出していた。

 愛香は、元から食料を取りに行っていないから持っていないのは当たり前だろう。


「それで、栄と愛香はどうして走ってたの?」

「稜が...いなくなった」

「───え、稜が?」

「あぁ」


 俺は、そこにいる3人に稜のことを話した。純介は、俺達の経緯を全て知っていたので「稜がいなくなった」だけの一言である程度のことを察せることができただろうと、目の前にいる4人は何の情報も与えられていないような状態だ。


 だから、俺は一から説明するのだった。

「山田のことは俺達は見ていない。今朝は6時には起きていたが、そんな行動はなかった」

「誠、情報提供ありがとう」

「私達も探すの手伝おうか?」

 そう提案してくれるのは、美緒。


「ありがとう。是非そうしてくれると嬉しい。1時間後───ゲーム開始から24時間目にはまた、マスコット大先生からの妨害が来るだろ?それまでには見つけておきたいんだ」

 俺は、皆にそう伝える。


 もし、次の妨害も「降雨」などだったら、折角できている足跡を見失わなってしまう。

 だから、それまでに見つけておきたいと思ったのだ。


「───では、先を急いだほうがいい」

「頑張れよ、栄!」

「私達も探すから、稜を助けてあげて!」

「ありがとう、3人共!」


「───ねぇ、栄。私も連れってって」

「智恵───」

「大丈夫、足手まといにはならない。走るだけなら、私でもなんとかできる」

「じゃあ、付いてきてくれ。愛香もそれでいいよな?」

「意地悪して駄目だと言っても、付いてくるのだろう?ならば、何を言っても無駄だろう」

 全く、愛香はいつまで経っても素直じゃないんだから。素直に「いい」と言えばいいのに、そう言えないのが実に愛香らしい。


「じゃあ、智恵。愛香。行こう」

「うん!」

「───」


 そして、そのまま俺と愛香は足跡の伸びていく先に走っていった。

 一体、稜はどこまで逃げていったのだろうか。俺にはわからない。

 だが、この足跡の先に稜がいるのは確かだった。


 ***


 刻一刻と、午前9時が近付いてきている。


 午前9時───24時間目は、マスコット大先生がルール15の「主催者は、6時間おきにゲームを混乱させるような仕掛けだったり、ゲームプレイヤーを強化させるような仕掛けを実施しなければならない」に則り、何かを起こす時間であると同時に、ルール9に記載されている通り「移動型爆弾オニの爆弾は、ゲーム開始から24時間経過以降、ランダムなタイミングで爆発する」時間なのだ。


 これ以降、移動型爆弾は命を奪う危険を孕むものになっていたし、そう易易と自らの身体に持っていていいものではなかった。


 そんな中で、原初の移動型爆弾オニである茉裕と、爆発オニである鈴華は言葉を交わす。

「鈴華、そろそろ暴れる準備はできてる?」

「もちろん!24時間くらい前からバッチシだぜ!」

「それはよかった。鈴華には、頑張ってもらうから」

「もちろん!オレに任せとけや、必ず茉裕の望んだ結果を掴ませてやる!」

「えぇ、そうしてくれると嬉しいわ」

 鈴華の言葉に、茉裕は微笑む。


 ───第6ゲーム『件の爆弾』の最終決戦は、もうすぐそこまで近付いてきていた。


 ***


 もうすぐ9時になりそうな時刻で、俺達3人は走りながら必死になって稜を探していた。

 昨日も1日中歩き回っていたし、睡眠も食事も満足のようにできていない疲労が溜まりに溜まった中で、稜を探していたのだった。


 そして───


「見つけた、稜!」

「───ッ!...栄」

 歩いて逃げていた稜。きっと、最初は走っていたけれど、もう既に体力の限界なのだろう。

 稜は、俺達から歩いて逃げていたようだった。


「稜、どうして逃げるんだよ...」

「そんなの、決まってる。俺が爆弾を持って死ぬためだ。そっちの方が...きっとハッピーだ」

「違う!そんなわけない!少なくとも俺は───俺達はアンハッピーだ!」

「わかってるよ。言い合いが無駄だってことくらい栄にはわかってるだろ。だから、殴り合いをしようって決めたんじゃないか」


「あぁ。だが、稜はそれから逃げた。不戦勝で俺の勝ちだ。だから、爆弾を寄越せ」

「───わかった。どうせ、戦ったところでこんな疲れてるようじゃ栄には勝てそうにない。それに...俺は、栄のことを殴れないよ」


 稜はそう口にして、俺の方へ歩いてくる。

「なぁ...俺には何が正解かわからない。だからさ、俺を導いてくれよ」

「───わかった。全員笑えるように、最小限の被害でこのゲームを終わらせる」


 俺は、そう誓って稜とハイタッチをする───




 ───その直前に、6月19日午前9時が、第6ゲーム『件の爆弾』の開始から24時間目が、マスコット大先生の妨害がやってきてしまう。


「あれー、栄きゅん。どうしてこんなところにいるんだピョン?」

「───蒼?」


 俺は、目の前に稜ではなく蒼が現れたことで、すぐに再度マスコット大先生の手によって、ゲーム開始時と同じようにランダムに人と場所が入れ替えさせられたことに気が付いたのだった。

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雨城蝶尾様が作ってくださいました。
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― 新着の感想 ―
[良い点] 良いところで妨害タイム。 そして現れたのは蒼。 なんか地味に荒れそうな展開。 蒼はいまいちキャラや行動が読めないんですよね。
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