4月3日 その⑥
「本当か?」
健吾と秋元梨花の2人は走っていたという証言。それは、俺も共に走ったから事実と言えるだろう。
それにしても、夜21時から5時までずっと走っていたというのか。
「あぁ、部屋の鍵は1つ目のヒントが出されたらすぐにわかったからな」
「アタシもぉ!それで、21時からずっと走っていたわ。早朝に寝始めたのにぃ、もうこんなところに呼び出されてクタクタよぉ!でも、クラスメートが死んじゃってるみたいだしこれ以上愚痴は言わないようにするわ...」
「2人は走っていた理由は───聞かないほうがいいかもな...」
康太は理由を聞くか迷うも、自分の言葉を引っ込める。
「そうしてくれるとオレも助かる。皆と同じような話してはならない課題だ」
「アタシもよ!」
「それで、走っていたのを証明できる人は?」
俺は黙って手を挙げる。
「お、栄君。証明できるのか?」
「あぁ、深夜だから───大体今日の0時くらいだな。一緒にグラウンドを少しだけ走ったよ」
「本当か?」
「あぁ、嘘はない」
「そうか...なら2人を信じることにしよう」
康太はそう言うと、健吾と秋元梨花の2人の方を見た。
「それで、その21時から5時の間に校門から学校に入ってきた人はいなかったんだな?」
「あぁ、いなかった。グラウンドの周りに設置されている蛍光灯もしっかり光っていたし余程のことがない限りは見逃さないよ」
「えぇ、そうね...」
「この学校、裏口ってのはあったか?」
「裏口か...」
「あ、えっと...無いと...思います...」
そう弱々しく発言したのは、東堂真胡だった。
「本当か?」
「はい...課題で少し...」
「そうか...課題って言っても良かったのか?」
「え、あ、うん。私は言ってもいいいって課題だったから...」
「そうか、裏口があるかなんてどちらにせよ見て回ればすぐに真偽はわかるからこんな嘘は付かないとみよう」
康太は教卓の前で顎に手を当てながら考える。
「うーん、とすると犯行は21以前か5時以降に行われたと考えたほうがいいだろうか...」
「そう考えるのが妥当だな。裏口も無いし、空から降ってきたり地中を潜ってやってくるような人はいないよな?」
「そりゃ、そうやろ。空を飛ぶ鳥人間なんてこの学校にいるや言うんや?」
渡邊裕翔と津田信夫が会話を行う。
「その時間、皆が何をしていたか事情聴取するのもいいけれどもそれも時間の無駄かなぁ...どう思う?どうせ、証人がないから無駄になると思うけど...」
「でも、聞くのもいいと思うわ!」
そう提案するのは竹原美玲だった。
「あ、そう...ならば、聞き取り調査を行うか...って言っても皆が皆怪しいからな...確定で私は殺してませんと言える人もいないだろ?ほら、皆にとって俺だって怪しい人の候補の一人なんだし...」
「なら、数人選んで聞き取りを行ったら?」
「そうだな、その提案を受け入れよう!───で、誰を選ぶ?」
「皆で数人選べばいいんじゃないかしら?生徒会のメンバーの最高は6人だから、中村君以外にも6人決めれば仮に選んだ人全員が生徒会でも確実に一人は生徒会じゃない人がいるでしょう?」
そう提案したのは、園田茉裕。
「待ってくれ。殺したのは生徒会だとも限らないだろう?」
「───それはそう...だね」
園田茉裕さんの意見に、康太が真っ向から反対する。急に生徒会の名を出した園田が少し怪しいような気もする。
「じゃあ...どうするの?」
「人数を決めるのも面倒だな...あ、そうだ!」
意見を真っ向から否定され若干の苛立っている園田茉裕が、少し拗ねたように康太に問う。
「これから、全員の名前を読み上げて投票を行う。それで、4票以上獲得した人が事情聴取に立ち会うってのはどう?」
「賛成だけど、一人何票なの?」
「それも4人にしようと思う」
「どうして4なんだ?」
渡邊裕翔が康太に問う。
「それはだな───」
「自分のチームの味方は3人だ。そのチーム以外のメンバーを最低でも一人では選んでもらうため───だろ?」
「ちょ...俺のセリフ...」
康太がノリノリで答えようとすると、森宮皇斗に答えを取られてしまった。
「そうか...そういう事か...」
「んじゃ、投票を行う!皆、伏せてくれ!事情聴取に適役だと思う人物4人に手を上げてくれ!自分以外のだ!」
俺たちは伏せる。手を挙げる人物は大体決まっていた。そして、クラスメート37名───いや、もう死んでしまった2人と出席していない4人は抜かれているので31名の票が取られた。
「それじゃ、4票以上を獲得した人を発表する!秋元梨花・安倍健吾・俺───中村康太・森宮皇斗の4人だ!」
選ばれたのは、秋元梨花と健吾。そして、康太と森宮皇斗の4人だった。ちなみに、俺が手を挙げたのは健吾・純介・稜。そして、誠だった。
リーダーシップのある誠ならば、キチンと冷静な判断ができると踏んだのだが4票には至らなかったようだ。
チームEは4人揃っているが、誰かが別の人のところに手を挙げたのだろうか。
そんなことを考えながら、事情聴取が始まる。
───と言っても、俺らはその事情聴取に立ち会えないのでほとんど暇だった。
俺は、昨日今日のことを全て嘘偽り無く喋った。そして、全員事情聴取が終わる。
「───事情聴取の結果、ある程度の時系列がわかってきた。でも、犯人の特定には至らなかった...本当に申し訳無い...でも、推理の材料はかなり手に入った!」
康太はそうどこか皆を元気付けるかのように述べた。
無駄な議論と言うよりかは未来への伏線という感じです。





