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6月19日 その①

ついに6月19日になりました。

 

 6月19日。

 第6ゲーム『件の爆弾』も折り返し地点を過ぎて、終わりの時間まで───そして、移動型爆弾も爆発するようになる時間は刻一刻と違っていた。


 ゲーム会場に、日にちを越える前までは飛んでいた懐中電灯程度の光を放つホタルも、0時を過ぎて以降はその数をかなり減らし、森林の中には暗黒が作り出されていた。

 星一つだって見えないデスゲーム会場は、静寂に包まれており動き回る人物は認知できなかった。


 きっと、皆明日に備えて眠ることにしているのだろう。

 起きているとしても、大人数で固まって寝ている時に行っている見張り───という形のものばかりであった。


 ───もちろん、見張りをしようが動いている人物も未確認生物も存在していないので全く意味はない。


 ここで眠っていたほうが、明日の為になるのだけれども、デスゲームであるし見張りもなしに眠ることは難しいだろう。

 ちなみに、一人で行動している人物は巨木の洞の中に入ったり木の上に登るなど隠れながらに睡眠していた。


 ───そんな、沈黙の夜が抜けた沙紀には、朝日と戦いが待ちわびている。


 まだ、爆発オニは一度だって暴れていないし、沙紀もまだ信夫1人しか殺せていない。

 これだけでは、茉裕は満足しないのでゲームの最後にでも大暴れは予想されるだろう。


 安心できるのは、不安な暗闇の中だけ───というのは、なんとも皮肉な話である。


 そんな暗闇の中で、一人の少年は見張りの為に起こされる。


 ***


「───栄、起きてー」

 そんな言葉が耳に聞こえ、俺は小さく体を動かす。半目を開けても、光はほとんど入ってこなかった。


「ムニャムニャ、もう朝?」

「ムニャムニャって口にする人初めて見た───じゃなくて、寝ぼけてないで、ちゃんと見張りしてよね」

「見張り───ぁぁ...そうだったな」

 俺は、純介の言葉で見張りの任務を思い出した。


「それじゃあ、寝ぼけてないでちゃんとやってよね。僕はもう寝る」

 純介はそう口にすると、木に寄りかかってもう眠りについてしまった。のび太か───などとツッコもうと思ったけれども、どうせ無視されて虚しいだけなので静かにしておいた。すると───


「ムニャムニャ」

「いや、お前も言うんかい」

 まさか純介も「ムニャムニャと口にする人」───要するに、ムニャラーだったとは。


 だなんて、くだらないことはおいておいて。ムニャラーってなんだよ、そんな言葉存在しない。


「俺は見張りをしないと行けないんだが...」

 俺が立ち上がろうとしても、何かが体に絡みついているのか上手く動かせない。


「───って、やっぱり愛香か...」

 寝る前に愛香は、「手を握らせてくれないか」などと言っていたが、今では俺の右半身に抱きつくようにして眠っている。


「こんなん、起こさないの無理だろ...」

 愛香は「見張りは一緒にする...」などと言っていることを思い出し、起こしてもいいだろうと判断。


「どうか、寝起きはいつも以上に機嫌が悪い───だなんてのはやめてくれよ...」

 俺は、そんなことを口に出してユサユサと愛香の体を揺らす。揺らす度に、愛香の胸がたゆんたゆんと揺れて俺の腕に当たり───って、寝起きの癖に深夜テンションで変なことを考えそうになった。

 朝勃ちは生理現象だが、夜勃ちは完全にアウトだ。


 愛香にも智恵にも怒られたくはなかったので、どうにか愛香の体から右半身を外す。すると───


「何奴、貴様も斬首の刑に処されたいのか?」

「寝起き怖」

「───って、なんだ栄か。まさか妾の寝込みを襲いに来たのか?気持ちが悪い...」

「なんだよ、怖いから一緒に手を繋いで寝よ───とか言ってきたくせに」

「───ッ!栄、うるさいぞ。静かにしろ!」

「愛香の方がうるさいぞ」

「ムニャムニャ、もう食べられないよー」

「都合が悪くなったからと言って寝た振りをするな」


 愛香は、相手を論破しようとする性格ではなく、如何に相手を苛つかせるか───などとを考えつつ、会話をしてそうな節はあるので、寝た振りというのは俺以外には有効だっただろう。

 だけど、暗闇にいる以上、主導権は俺の方にある。


「別に寝た振りをしててもいいけれど、俺は見張りに行くからな。俺がいなくても騒がずに大人しく寝とけよ」

「───いや、妾も付いて行ってやろう。栄1人じゃ心配だ」

「いや、大丈夫。寝とけって」

 こうして、愛香を1人にさせようとする俺も意地悪だ。でも、愛香であるし、このくらいの扱いをしても問題はない。お互いに、信頼しきっている節はあるし。


「感謝しろ、栄。妾が直々に見張りに付いて行ってやるのだぞ。滅多に無い」

「じゃあ、その奇跡のような確率の行動を次回に繰り越しだ」

「うるさい。妾の言う事を聴け、付いて行くと言ったら付いて行くのだ!」


 ───こうして、愛香も見張りとして立上があったのだ。


 愛香はバレてないつもりなのかもしれないが、彼女が俺の腰のところを握っていることはすぐに気付いた。

 俺だって、鬼ではないからそれは無視して見張りを行った。


 ───そして、見張り開始から1時間が経ち、午前3時になる。


「───雨?」

 ポタポタと降ってきたのは、頬を冷たくする感覚。


 そして、それがデスゲーム開始から18時間目によりマスコット大先生に用意された仕掛けであることは一瞬で理解できた。

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雨城蝶尾様が作ってくださいました。
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― 新着の感想 ―
[良い点] 地味にムニャラーが多い。 それはさておき、 雨が降ってきたが、これも舞台装置の一つなのか。 これは色んなケースが予測できますね。
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