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6月18日 その㊸

 

 午後23時。

 今日が今日じゃなくなるまで、残り1時間だと言う時に俺と真胡、そして愛香の3人は、暗い森林の中を歩いていた。

 21時辺りには盛んに飛んでいたホタルも、今ではその数を減らしておりマスコット大先生が「消灯時間ですよ」などと言っているようなものだった。


 光が消えれば消えるほど、愛香が俺の体操服の裾を掴む力は増していく。

 彼女が暗いのが苦手なのは知っていたが、ここまで人が変わるほどにビビってしまうのか───などと思いつつ、俺は森の中を歩き続けた。


「そうだ、愛香」

「なんだ?」

「明日の朝の7時から、俺は稜と取っ組み合いの喧嘩をする」

「そうか。いざこざか?」

 俺は人の喧嘩の予告などという、かなり珍しいことを口にしたものの愛香は驚くことはなかった。


「まぁ、いざこざだ。それで、俺と稜のどっちが勝っても公平にジャッジしてくれる人を探してる。そのジャッジを愛香にお願いしたい。よろしいか?」

「別に構わん。だが、どんな内容で揉めているんだ?」

 俺は、稜が「移動型爆弾で誰かが死ぬくらいなら俺が死ぬ」と言っていることを愛香に伝える。


「なんとも、栄と稜らしい滑稽な喧嘩だな」

「失礼だな。俺は稜のことを思ってるんだぞ。そりゃ、もちろん稜だって皆のことを思っての行動だと言うことはで知ってるけどさ...」

 稜の優しさで、誰かが悲しむのだとすればそれは完璧で完全な優しさではないだろう。


「───と、喧嘩のジャッジをするのは構わんが、稜とは出会わないではないか。どうするんだ?」

「うーん、0時になるまでは歩いて、見当たらなかったら休もうと思うよ。それで明日探す」

「そうか。では見当たるといいな」


 などと、そんな話をしていると───


「あれ、あそこにいるの栄と真胡じゃない?」

「あ、本当だ!おーい!」

 その声の主など、その姿を見なくてもわかる。梨央と紬だ。


「梨央!つむ!」

 俺は2人の名前を呼ぶ。2人は、森林の中を走ってやってきた。その後ろから、姿を現すのは稜と純介の2人。


「───って、愛香も?」

「あぁ、明日の審判として来てもらったんだ」

「そうか。探してくれてありがとう。それで、もうご飯食べちゃったんだけど...」

「あぁ、こっちも我慢できずにもう食べちゃった」

「んじゃ、お互い食べてたのならおあいこだな」

「応」

 俺はそう返事して、稜とハイタッチ。


「───こんなに仲がいいのに、明日は取っ組み合いの喧嘩をするのか?」

「あぁ、そうだが?」

「なんだか...可笑しな奴らだな」

 愛香はそんなコメントを残す。


 ───そして、俺達は布団も寝袋も安全も無い中で眠る運びになったのだった。


「それじゃ、寝てる間の見張りを決めよう」

「そうだな。あ、つむと梨央と愛香は免除でいいよ」

「え、いいの?」

「うん。ちゃんと寝たほうがいいでしょ」

「ありがと、稜。おやすみ」

「うん、おやすみ」

 そして、梨央と紬の2人は俺達から5m程離れた木の影で横になった。


「愛香は寝ないのか?」

 そう稜が口にする。


「妾は皆の会議を見届ける。信頼できるかわからないからな」

「おいおい...」

 どうやら愛香は、暗いのが怖くて1人で寝れないのを言い訳しているようだった。そりゃあまぁ、この雄大な自然の中に豆電球が付いているわけでもないし仕方はなさそうだ。


「まぁ、愛香はおいておいて。誰がいつ見張りをするかだな」

「均等に分けるとするのなら、2時間ごとじゃない?0時から2時、2時から4時、4時から6時って」

「まぁ、そうなるよな」

「じゃあ、誰がどこを担当するかじゃんけんで決めようぜ。一番最初に勝った人が4時から6時。真ん中が2時から4時。一番負けが0時から2時でいいか?」

「うん、いいよ」


 そして、じゃんけんの結果により


 0時から2時:純介

 2時から4時:俺

 4時から6時:稜


 ということになった。


「うわー、僕まだ寝れないのか...」

「うん。頑張れ」

「頑張るよ...」


 ───こうして、見張りは純介に任せて俺達は眠ることにした。


 そして、寝床である木まで俺の裾を持って付いてきた愛香が口を開く。

「栄」

「───どうした愛香?」

「寝る時、手を握っていてくれないか?」

「別に構わないけど」

 まぁ、智恵とは抱き合って寝ているし。


「では...お願いだ」

「いいのか?見張りの時は」

「見張りは一緒にする...」

「わかった。じゃあ、無理するなよ」

「うん」


 ───こうして、俺と愛香は就寝したのだった。


 今日はかなり色々なことがあったし、体感は一ヶ月半くらいこのゲームをしているような感覚だ。

 かなり疲れていたらしく、俺と愛香はすぐに失神するかのように眠った。


 ───そして、第6ゲーム『件の爆弾』は、試合開始から15時間が経過する。


 このゲームは試合時間が30時間と決められているので、やっと折り返し地点なのである。


 ───ゲームが終了する時刻は、19日の午後3時。


 残り15時間。

 その中で、誰が生き延び誰が死ぬのか。


 ───まだまだ、第6ゲーム『件の爆弾』はプレイヤー達に牙を剥く。

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雨城蝶尾様が作ってくださいました。
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― 新着の感想 ―
[良い点] さりげなく手を握る催促をする愛香。 そしてすんなり受け入れる栄。 栄も無意識でフラグ建てる一級建築士ですね。
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