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6月18日 その㊴

 

 ───時刻は22時。


 ゲーム開始から13時間が経過した。

 食事を摂るために沙紀と争ったのも、今から20分程前の出来事になっているのか───などと思いつつ、俺と真胡、そして道中で拾った愛香を連れて稜や純介・紬に梨央を探していた。


「いないね...」

「そうだね。どこにも見当たらない」

「稜達のことなど気にしなくて良いのではないか?こんな暗い夜に探さなくても明朝に合流すればいいだろう」

 愛香は、暗闇が怖いのかそんな提案をしてくる。


「そんな怖がって...ホタルが飛んでそれなりに明るいだろ?」

「別にそんな明るくないではないか」

「いつもどうやって寝てるんだ?」

「ちっちゃな豆電球付けて、お人形さんギューッてしてる」

「可愛いな、おい」

 愛香の可愛い一面が晒されてしまったので、ポコポコ俺の頭は殴られるけど痛くないし、照れ隠しなので気にしない。いつもの傲慢で高飛車な彼女の性格は一体どこにいったのかと思うくらいにキャラ崩壊して、変な気分がするけれども、そこも彼女の一面だとしよう。

 そんなことを思っていると───


「グーーー」

 俺の腹の音が鳴る。


「腹、減ったな...」

「そうだね。栄、合流してないけどもう夕食食べちゃう?」

「稜達と合流してないけど、先食べちゃっていいのかな?」

「お腹が空いて歩けなくなる方が問題だし、先に食べちゃおうよ」

「それもそうだな、そうしよう」

 俺達は森林の中で座って食べることにした。ビニール袋に入っているものは───


 ・500ml天然水 2本

 ・ハイカロリーバー 2箱(1箱3本入)

 ・ポテトサラダ 1パック

 ・唐揚げ 1パック

 ・食パン(8枚切り) 1袋

 ・割箸 2膳


「うーん、並べてみると普通だし、携帯食も多いな」

「明日の分じゃない?食事はこの時しか配られないって言ってたし」

「この食パンはそういうことか」

 明日の分だとしても、8枚入りが1袋入っているのは多すぎるような気もする。


「───って、あれ?愛香、ご飯は?」

「妾か?貰いに行っていないぞ?」

「んぇ、どうして」

「どうしてってそりゃあ...」

 愛香は、「わざわざ言わせるな」と言わんばかりに俺の方をペシペシ叩いてくる。いつもの傲慢が無くなると、ただ可愛いだけの奴なのか───とか思いつつ、俺は折角拾ってきた愛香に餌付けすることにした。


「じゃあ、移動型爆弾を貰ってくれたお礼にご飯上げるから。それで我慢して」

「うむ。よかろう。ほら、全部寄越せ」

「半分こだ」

「───じゃあ、半分寄越せ」

 愛香は一瞬、「全部寄越せ」とせがみ続けようか考えたようだが、それは行動に移さなかった。


 俺は、分けられるものは半分にわけて、パックに入っているものは好きなようにつまむ感じにした」

「それじゃ、水はどっちがどっちのかわかんなくなっちゃうから、俺がラベルを剥がしておくよ」

 俺は山々を背景に「天然水」と書かれているコンビニとかでもよく売られている天然水のラベルを外す。


 ───こうして、俺達はピクニックまがいのお食事を楽しんだのだった。


 ***


「はぁ...はぁ...クソッ、また飯を奪えなかった...」

「ほら、俺の言った通り鈴華はやめたほうが良かっただろ。あそこで奇襲してたら返り討ちにされていた」

「デスゲームで餓死とか笑えないね。どんなブラックジョークだよ」

 裕翔・康太・奏汰の3人は食事を手に入れることができなかったので口々に適当なことを言う。


「どっかに食事が落ちてねぇかなぁ...」

「落ちてるわけ無いだろ」

「比喩だよ、比喩。鈴華とかじゃなくてもっと脅しやすい人が食事持ってたりしないかなぁ...」

 奏汰がそんなことを口にしていると、3人の目に入るのはビニール袋を持った男女混合4人組。


 ───稜・純介・紬・梨央の4人だった。


「───おい、見ろよ。あの4人なら行けそうじゃね?」

「───そうだな。格別強い人もいない。稜だってたかが知れてる」

「康太、今度はガタガタ言わせないぞ。弱い者から食事を奪い取るのはこの世の摂理だ」

「わかったよ。ここで反対したら食事を分けてくれなさそうだし───って、そうじゃん。少しだけ分けてもらえばいいんじゃないの?」

「分けてもらうだぁ?」


「うん。全部強奪するのは可哀想だけどさ、4人から少しずつ分けてもらったらそれなりの量になるんじゃない?」

「そうかなぁ...」

「裕翔、ただでさえお前は栄と喧嘩して嫌われてるんだからここでヘイトを集めないほうがいいだろ?」

「あ?それは栄が悪いだろ」

「あーはいはい、康太も裕翔も喧嘩しないで。裕翔はそこで隠れていてくれ。僕と康太の2人でご飯をもらう、それでいいでしょ?」

「しょうがねぇ、んまぁ、食えれば問題ないか」


 ───こうして、康太と奏汰の2人は稜達4人に食事をせがみに行ったのだ。


 最初、純介は「食事を渡すのはちょっと...」と拒んだものの、稜と梨央と紬の3人が食事を渡すことに賛同の意を示したため、仕方なく渡すことにしたのだった。


 そして、結果として2人分に相当する食事量を手に入れた康太と奏汰。

 稜達の方が食事の取り分が少なくなるという異常な分配になってしまったが、稜達の善意ということで、康太達は食事を手に入れたのだった。



 ───まだまだ、6月18日は続く。

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雨城蝶尾様が作ってくださいました。
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― 新着の感想 ―
[良い点] ようやく食事の中身が……。 まあこういう非常時には最適な食料かも? そして交渉の末、一部分けて貰えたか。 裕翔の悪魔のささやきに従わず良かったですね。
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