4月3日 その⑤
俺達の通う『3−Α』の隣の空き教室に集まった生徒は総勢31名だった。
「もう部屋から脱出してるのはこれだけいるのか...」
健吾はそんな事を呟く。
「まぁ、一概にもマスコット先生は『天才』を集めたって言ってたからね」
「そうだけど...アナグラムは天才というよりかはゴリ押しじゃない?」
いつもの教室と全く同じ座席に座り、誰がいないか確認する。
死んでしまった金髪の少女と平塚ここあを抜くとクラスメートは35名。
そして、今ここにいるのは31名だった。
「えっと、俺が仕切っちゃっていいのかな?」
白板前に立ち、そう言うのは中村康太だった。教室の一同が頷く。
「それじゃ、とりあえず今ここに来ていないのは4人かな?」
部屋にいないのは成瀬蓮也・橋本遥・森愛香。そして、村田智恵だった。
智恵がいなくて、少し不安になってしまう。
「えっと、4人はどこにいるかわかる?」
「あ、えっと森愛香さん...は、勝手に話し合っておけ。妾が行く理由も価値もないと言ってました...」
そう述べたのは、出席番号37番の少女───綿野沙紀だった。
「そうか...来てくれなかったか...」
中村康太は少し悲しそうな顔をする。
「あ、中村君...ごめんなさい...」
「いや、綿野沙紀さんは謝らなくていいよ。あ、それと俺のことは気軽に康太って呼んでくれて構わないから。俺ら、クラスメートだろ?」
そう言って、康太は笑みを作る。
「えっとぉー、遥ちゃんもー、来たくないってー。殺されちゃうかもーって言ってー、部屋に籠もっちゃったー」
そう述べるのは、佐倉美沙だった。制服は崩してきていたが、彼女の私服はかなり際どかった。
肩をかなり露出し、胸の谷間までもがチラチラと見えている。スカートもかなり短かった。
「そうか、遥さんも来てくれなかったか...で、残ってるのは成瀬蓮也と村田智恵さんか...」
「あ、智恵はまだ部屋から出てきてないです!」
そう答えたのは、俺の斜め後ろに座る紬だった。
「そうなのか?」
「はい、昨日も今朝も見ませんでしたし...個室の扉に{部屋出たら返事ちょうだいね!}って言う置き手紙を書いて貼っておいても返事はなかったので...」
「そうか、ならばまだ解き終わってないと考えるのがいいかな...」
「蓮也も同じだと思う。まだ、部屋の外に出れないって考えるのがいいと思う」
そう答えたのは、拓人だった。
「そうか、ありがとう。置き手紙とか書いたのか?」
「いや、部屋の鍵が開かない時までは圏外でメッセージを届けられない。でも、部屋の鍵が開いた後はメッセージを送ることができるんだ。それを利用して、解いたけど部屋に籠もってるだけか解けずに部屋にいたまんまかの見分けを付けている」
「そうか、試しに連絡を付けてみてもいいか?成瀬蓮也と村田智恵さんに」
「あぁ、いいぜ」
「えぇ、いいと思うわ」
美緒と拓人2人の許可を取り、康太は今ここにいない2人連絡を取る。
「チャット」で連絡を取るつもりなのだろう。
「あー...本当だ、送れないね」
康太は皆にスマホを見せる。遠くだったのでよく見えたかったのだが、最前列に座っている杉田雷人が頷いているのを見ると送れていないのだろう。
俺も試しに智恵と連絡を取ろうと試みる。「チャット」を開いて智恵に「大丈夫?」と連絡を送る。
だが、クルクルと送ったメッセージの右側で円周を小さな点が回るだけで送信されることはない。
「栄も確認してるのか?」
「あ、あぁ...そうだよ」
そして、メッセージの確認を終える。
「んじゃ、4人いないけどとりあえず現状わかっている情報の説明を行う。オッケー?」
俺達は康太の言葉に頷く。誰も反論はなかった。
「まず、死んでしまったのは出席番号25番の平塚ここあさん。殺された詳しい時間帯はわかってないけど、四肢と首・胴がバラバラにされて机の上に並べられていることからも他殺の可能性が高い。ここまで異論はないね?」
俺達は頷く。
「俺達の教室で並べられていたのは四肢と首。そして、胴体だった。でも、腰から下と足から上───言ってしまえば股間の部分はまだ見つかっていない。教室は、事件が起こった状態のままを保っている。そして、第一発見者は奥田美緒さん。とりあえず、見つけた時の話を聞いてもいい?」
「わかったわ」
奥田美緒は教室の前方に移動し、そして会話を始める。
「私が見つけたのは私のスマホが7時11分を示していた時よ。教室に来たら、今の教室と同じ状況で死体がバラ撒かれていたわ。一目で死んだことがわかっていたから、教室に入って迂闊なことをするよりも皆に見てもらった方が早いかな、と思って集合をかけたの。それで、今に至るわね」
「だそうだ。俺らも誰も部屋に入っていないから、きっと最後に教室に入ったのは犯人だろうと推測できる」
「でも、俺らで指紋採取なんてものはできないぞ?」
「それが問題だ。最大の目標は犯人を見つけること。何か、言いたいことあるか?」
「はい」
俺の目の前で2人が手を挙げる。健吾と秋元梨花だった。
「2人は?」
「オレは9時から5時までずっと外を走っていた。少なくとも、その時間で校門から学校に入って教室に向かった人物はいないぞ。平塚ここあさん含めてな」
「アタシも、走っていたから健吾の証人になれるわ!」
2人の証言が出される。





