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6月18日 その㉝

 

 ───俺達6人が歩いて第6ゲーム『件の爆弾』の会場の中心まで向かっていく。


 走っていかなかったのは、そこまで体力が残っていなかったからだ。走れるほどの体力は俺達に残っていなかった。誰か1人が代表して取りに行く───というのは、無理そうだったので今回は我慢だ。


「先着20名だって。最悪、ここにいる全員が食べられない───って可能性があるみたいだね」

「それは、そうだね。でもまぁ、急ぎすぎて動けなくなっても意味はないし、そもそも皆疲れてて走れないってところだね」

「私達が疲れてるってことは皆も疲れてる───ってことだと思うな」


 そんなこんなで、俺達は歩みを進めた。明日は、稜との再戦もあるのだ。ここで食事にありつかなければ。


 ───と、そんなこんなで俺達が会場の中心である草原へ出ると。


 会場の中心に見えたのは、食事を配るマスコット大先生と生徒会のメンバーである沙紀の姿だった。


「待ち伏せ───ってわけかよ」

 食事を手に入れるためには、沙紀との戦闘は避けて通れないようだった。


 ***


 一方、こちらは裕翔と奏汰、そして康太の3人。


「───2人共、食事を取りに行かない?」

「おいおい、康太。何いってんだ?」


 裕翔は、康太の疑問に対して嘲笑うように聞き返す


「何って───」

「───いや、やっぱ康太は真面目な優等生だな。真ん中に来る───だなんて、完全なおびき寄せだろ。絶対に爆弾持ちが集まってくる。それはわかってることだろ」

「それはそうだけど...」

「最適解は簡単だ。オレ達は食事を奪い取る」

「奪い取る?!そんな可哀想なこと───」

「じゃあ、敵のウジャウジャいる草原の真ん中へ向かうか?」

「それは...」

「奪い取ろうよ、裕翔の言う通り。これはデスゲームだ。どんな行動でもある程度認可される。君がゲームでだけ蓮也を殺そうとするようにね」

「───」

 康太は、何も言い返せない。こんな甘い言葉により、人は悪へと染まっていく。


 ───デスゲームの中であれば。


 康太は、そう考えて誰かから食事を奪い取るという作戦に協力してしまう。


 ***


「───そっちは、どうすんだ?食事」

「別に必要ないかなー、私は後かくれんぼしてるだけだし」

 木の洞の中に隠れている美少女───茉裕に対して声をかけるのは鈴華であった。


「そうか。オレが取ってきたら少し分けてやろうか?」

「あ、じゃあそうしようっかなー。私ははくれるっつーもんは病気以外なら何でももらうかんなーーー、なんちゃって」

「それ、何のネタだ?」

 いつもと違う口調で物を言う茉裕に対して、その発言が何かの漫画の作品ではあると察するも、キングダムとONE PIECEしか読んだことがない彼女にとっては伝わらない。


「───このゲームが終わったら、鈴華には私の漫画貸してあげる」

「いいのか?」

「もちろん。その代わり、全部読んでもらうから。1200冊」

「───そんなに?」

「もちろん。全部学んでもらうよ」

「───はい」


 鈴華は、少し迷った後に返事をして立ち上がる。

「食事取ってくる、待っててくれ」

「はーい」


 そして、鈴華はご飯を取るために動き出す。


 ───マスコット大先生の介入により、様々な人物が行動を開始する。思惑はぶつかるばかりだ。


 ***


 俺達は、茂みに隠れて食事を貰えるところに門番のように立ちふさがっている沙紀の姿を見て作戦会議をする。


 ───栄は知る由もないが、沙紀が来るよりも先に森宮皇斗・細田歌穂・柏木拓人・秋元梨花・宇佐見蒼・橘川陽斗・竹原美玲の7人が手に入れていたので、残る夕食は13食分だった。



「───どうする?沙紀がいるんだけど」

「マズいかもね....」

「今なら、まだなんとかなるんじゃない?気付かれてなさそうだし」

「いや、気づかれてると思う。缶蹴りみたいに、中心から離れすぎるとその間にご飯を奪っていく人がいるからそれでこっちに来てないだけで、僕達6人の存在には気付いてると思うよ」

「えー...そうなの?」

「じゃあ、どうすればいいんだ?」

「どうするもこうするも...まぁ、誰かが囮になるしかないよね?」

「囮か...」


 梨央と紬の女性陣は戦闘できないし、純介も戦力外だ。純介は運動じゃなくて頭脳でいつも協力してくれるから、囮役には向かないだろう。

 そして、稜も現在爆弾を持っているので戦闘らしい戦闘ができない。それに、お願いしても「爆弾があるから」と言う理由で戦ってくれないだろう。


「じゃあ...消去法で俺と真胡の2人か...」

「わ、私?!」

 真胡は、第3ゲーム『パートナーガター』でも、廣井兄弟に対して大きな功績を残していた。だから、囮役には最適だ。


「俺1人じゃ心配なんだ!!お願いだ、一緒に囮役として来てくれ!」

「わ、わかったよ...」

 俺は、真胡にお願いして許可をもらう。真胡は断れない性格だからちょっと申し訳ないが、仕方ない。役に立ってもらうところでは役に立ってもらわなければ。


「───じゃあ、栄と真胡の2人が囮になっている間に僕達4人はご飯を回収する。それが成功したら、栄と真胡もご飯を取って逃亡。そしてまた合流する───でどうかな?」

「「了解」」


 作戦としては非常に簡単であるが、実際に沙紀と戦うとなると大変だろう。だが、沙紀がいてくれるのでご飯はまだまだ残っていた。取りに行くなら今のうちだ。


 ───そして、俺達は行動を開始する。

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雨城蝶尾様が作ってくださいました。
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― 新着の感想 ―
[一言] 初期は特徴のない優等生だった康太が悪堕ちしていく...
[良い点] >私はくれるっつーもんは >病気以外なら何でももらうかんなーーー 億泰かな? あの台詞、地味に好きです。 しかし食事一つで大変ですね。 これは色んなところでトラブルが起きそう。
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