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6月18日 その㉚

 

 ───デスゲーム開始から9時間が経過する。


 時刻はもうすぐ18時。

 次第に暗くになって来ている中で、俺達は約束通りこのデスゲームの会場の中心である草原へと、真胡と一緒に向かっていた。


「───さて、皆ちゃんと集合できると思うんだけれど...」


 俺は、左手に付けた腕時計をチラリと見てそう口にする。時刻は17時57分だった。

 遅刻癖のあるようなメンツではないから、時間前に来ると思ったけれど───純介は直前まで警戒して来ないという選択をしそうだ。


 稜と梨央は来ても良さそうなのに───などと思いつつ、2人がお盛んであればそれを妨害することはできないなとも思って、俺と真胡は2人で待ちぼうけだった。


 ───と、そんなことを考えているから俺と真胡が到着していることを視認したのか、俺達の方へ迫ってきていたのは純介と紬の2人だった。


「3時間ぶり。大丈夫だった?」

「大丈夫か大丈夫じゃないかって言ったら、途中時尚に移動型爆弾オニを押し付けられて危なかったけど、愛香が引き受けてくれたから事なきを得たよ」

「へぇ...そんなことが...」


「純介と紬はどうだった?」

「つむ達は特に何も無かったよ!2人でお喋りして歩いてた!」

「途中で拓人と出会ったけど、合流せず離れたよ」

「そうだったんだ。一人で行動してた?」

「うん、光る前は皇斗と誠と行動してた───とは言っていたけど、もう分かれたらしい」

「やっぱ、光ると危険って皆察知したらしいよ」


 ───と、栄達は知る由もないが、9時間経った現在、拓人は恋人である梨花と再会することができていた。


 なので現在は、梨花は健吾と美緒の2人とは行動をやめて、拓人と梨花、健吾と美緒───というカップル同士で行動し始めていたのだった。


「───と、時間になったけど稜と梨央ちゃんは来ないねぇ...」

「そうだね。迷子になってたりするのかな?」

「かもしれないね」

「ここにずっと突っ立ってると危険かな?」

「でも、ここにいないと梨央と稜の2人が不安にならないか?いるなら、ここにいたほうがいいだろうよ」

「───それもそうだね」


 他に集合できそうな場所があればよかったのだが、このデスゲーム会場は草原か森林か海岸だ。

 何か待ち合わせに使用可能な建物の類はどこにだって用意されていない。

 だから、目立ってしまうがこうして中心で待つしかないのだ。


 ───と、俺達は会場の中心で10分ほど稜達のことを待って、ついにやってきた。


「待たせてごめん!」

 そう口にして、2人は真ん中へと走ってきた。


「稜!梨央!」

「遅かった、心配したよ!」

「いや、すまん。栄や純介のことだから10分───いや、20分は待たせちゃったかな」

 俺達は、57分に到着したから10分ちょっとしか待っていないが、純介達はいつから身を潜めていたかわからない。


「───と、皆に言いたいことがある」

「言いたいこと?」

「あぁ...」

「───その前に。中心にいるのは危険だし、場所変えない?」

「あー、うん。そうだね」

 稜の言いたいことは何かわからなかったが、深刻そうな内容ではありそうだった。

 俺達が、草原の中心から───デスゲーム会場の中心から離れて森林に入った後に、稜が口を開く。


「今のオニは───移動型爆弾オニは俺だ」

「稜が...移動爆弾オニだと?」


 移動型爆弾オニは、俺が愛香に渡したはず。そこから、稜に渡ったと言うのか。

「もしかして、愛香から?」

「愛香?いや、違う。俺達は蒼から渡された」

「蒼から...」


 話を聞くとどうやら、愛香→蒼→梨央→稜の順番で移動型爆弾オニが移動していることがわかった。

 尚、愛香と蒼の矢印の間に誰かが含まれている可能性は全然ある。証言がないから、こうまとめただけだった。


「稜、それじゃあ誰かに爆弾を───」

「いや、爆弾は誰にも渡すつもりはない」

「───え?」

「だって、爆弾を誰かに渡したら、その人が死ぬ可能性があるんだろ?じゃあ...俺は、爆弾を人に渡しはしない」

「そんな...」

 稜は心優しい少年だ。誰かに爆弾を渡す───だなんてことはできないだろう。

 稜の意思で誰かに爆弾を渡す───なんて行為は行われない。

 そして、誰かが自分に触れることも避けるだろう。


 ───そうなると、稜は爆死してしまうのだ。


「なんで...死んでもらっちゃ困る!」

「でも、それは皆一緒だ。死んだら誰かが苦しむ。悲しむ」

「じゃあ...」

「栄、俺を説得するのは無理だぞ。諦めろ」

 稜は、そう口にする。蒼は、まさかこれを見込んで梨央に爆弾を渡したのか。


 ───いや、蒼はそこまで考えていないだろう。


 そんなことを思い、俺は一つの決心をする。俺は拳をギュッと握りしめて───


「馬鹿野郎ッ!」

「───ッ!」


 俺は、自らの拳を稜に向けて振るう。稜はそれを見て、咄嗟に後ろに動く。俺の手は、ギリギリ稜には届かない。


「───栄、お前...」

「稜、俺はお前の意見には賛成できない。お前が爆発して死ぬ───だなんて認められない」

「んなの...」


「俺の勝手だ、なんて言わせない!稜が稜の勝手を通すなら、俺も俺の勝手を───仁義を通させてもらう!」


 ───こうして、稜を死なせないために爆弾を稜から奪いたい俺と、誰も傷つけないために爆弾を誰にも渡したくない稜の、滑稽な戦いが幕を開ける。

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雨城蝶尾様が作ってくださいました。
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― 新着の感想 ―
[良い点] 稜、純すぎる男ですな。 でも栄の気持ちもよく分かる。 コレは色々と荒れそうな展開になりそう。
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