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6月18日 その㉕

 

 ───デスゲーム参加者が一律に光を伴ってから、既に30分が経つ。


 光を頼りに森林を彷徨うのは、歌穂と奏汰、そして現在時限爆弾を持っていて後1時間もしない内に爆発してしまう信夫であった。


「───沙紀らしい影を追ってここまで来たけど...向こうも僕達が追っていることに気付いているようだね」

「そのようね」

「まぁ、ワイは背が高いから警戒されるのも無理はないやろ」

 信夫は、爆発まで残り1時間───もっと詳しく言うと45分以内に爆発してしまう質量を持たない爆弾を肉体に宿しているので、焦ってもおかしくないのだが、彼はひどく冷静だった。


「信夫は、死ぬのは怖くないの?」

「もちろん怖い。だけど、2人が協力してくれるなら焦ったばかりじゃ駄目や」

「───そう」

「そんなに頼られているとは。僕もその期待に応えないとね」

 奏汰はそう口にして首を回す。


「───と、沙紀と思わしき光の形の人物を───というか、ピッケルを持った身長160cm以下くらいの影は、十中八九沙紀やその沙紀は、あからさまにワイから逃げるように行動してる。だから、このまま行ってもいたちごっこだ」

「まぁ...そうだろうね」

「それで、少しばかし作戦を考えたんやが...聞いてくれるかいな?」

「もちろん。このまま追っていても捕まえられないのであれば、一か八かでもその作戦に賭けてみる可能性はあるわね。それで、その作戦っていうのは?」


「まず、ワイはこれまで通り沙紀を追い続ける。その間に歌穂と奏汰の2人はグルっと回るように移動して、沙紀の侵攻を妨害してくれ。そこを、ワイが駆けつけてタッチする」

「今は光が出てるんだ。僕達が別行動したら察せられるんじゃないか?」

「別に察されたところで、足止めでもできれば───少しずつでも距離が詰められれば万々歳や。タッチさえできれば爆弾は解除できる。沙紀に触れずに、触れられずに足止めし続けることは可能かのう?なんつって」

「察されてもいいのであれば、別に不可能ではないわね。」


 信夫の、サムい駄洒落を全く無視して、歌穂はその作戦が十分に実行可能であることを理解し、口にした。

「僕もやろうと思えば───というか、信夫を助けるつもりがあるから、やれるよ」

「よっしゃ!じゃあ、その作戦の実行や!」


 ───そう口にすると、早速歌穂と奏汰の2人は動き始めた。


 ───信夫の時限爆弾を解除する大作戦は、これより幕開けする。


 ***


 ───こちらは、信夫・歌穂・奏汰の3人に追われている時限爆弾オニの沙紀。


 沙紀はもちろん、光を見ることによって信夫・歌穂・沙紀に追われていることに気付いていたし、それらが3つに分裂したことも気付いていた。


「───分かれたけど、私を狙っていることは変わりない...」

 沙紀は、静かにそう口にする。光が見えている以上、不必要に人と出会うことを無くして歩いていた。


「光がなくなるまで後20分とちょっと。信夫が爆発するまでは後30分弱...」

 光がなくなれば、後は木のウロの中にでも隠れてやり過ごすことができるだろう。だから、光が切れるまでの残り20分ちょっとは逃げ切らなければならない。


「───でも、10分くらいで左右の2人には追いつかれそうね...」

 一段背の高い人物が、信夫であることはわかるが、他の2人が歌穂と奏汰であるという断定は、まだ沙紀はできていない。


「身長から皇斗や愛香ではなさそうだけれど...まぁ、戦闘にならない方がマシかしら。今触れて動きを止めてしまうと、オニである私の場所を教えてしまうようなものになるし...」

 沙紀はそう口にしながら、若干小走りになる。それに応じて、追ってきている歌穂と奏汰のスピードも早くなる。


「目的は───多分、私を足止めして爆弾を解除することね。そうであれば、戦闘するとは言え私に無理に触れようとしてこないはず」

 信夫が、2人に「触れられると爆弾を渡され5分動きを止められる」ということを話すという前提の元、そう仮説を立てていた。


 その前提は当たっている───というか、正解である確信があった。

 理由としては、信夫が動けずに固まっていることを歌穂と奏汰の2人は見て、そこを駆けつけたのだ。

 だから、「触れられると爆弾を渡され5分動きを止められる」という話を信夫がしているのは必然だった。


「───じゃあ、ある程度追いつかれてもいいかしらね。信夫が追いつけない位には」

 沙紀はそう口にして笑みを浮かべる。


 ───だが、とある人物の介入により、状況は思わぬ方向へと傾くのであった。


 ***


 こちらは、一人で歩みを続ける信夫。光によって、沙紀を捉えながら前進を続ける。


「爆発までもうすぐや...頼む、しっかりと足止めしてくれよ...」

「わかった、しっかりと足止めさせてあげる。アナタをね」

「───ッ!」


 ふと、信夫の背後に現れていたのは神出鬼没の黒髪美少女───生徒会メンバーの紅一点である、茉裕であった。


「茉裕、どうしてここに...」

「アナタを殺すため」


 ───茉裕の介入により、場は混乱する。


 信夫は茉裕に背後に立たれ、その歩みを止めたのだった。

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雨城蝶尾様が作ってくださいました。
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― 新着の感想 ―
[良い点] 着々と時間が進みますね。 信夫、何とか生き残れ! と思いきやまたしても刺客が! しかも超強力な相手、コイツはやべえぜ!
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