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6月18日 その③

 

 ───第6ゲーム『(くだん)の爆弾』。


 それが繰り広げられるのが、現在栄達28人がいる空間であった。


 中心には大きく円を描くように草原が広がっており、その円の周りに従うように森林が、その森林の更に奥には広大な海が広がっていた。

 海は、いくら進めども終わりが見えず、この空間から強制的に排出される30時間後まで泳ぎ続けても、終わりに辿り着くことはできないだろう。

 そんな、絶海の孤島で第6ゲームは行われるのであった。


 ───この空間も、もちろんマスコット大先生がデスゲームを行う為だけに作り出したものである。


 今回は、非科学的で理解不能で理不尽な仕掛けというものは無いので、人工の自然の中でデスゲームを行うことに集中することができるだろう。


 ***


「───って、あそこにいるのは」

「あ、梨央だ!梨央ー!」


 俺と共に行動している梨央の方へ、駆け寄ってきたのは一人の天真爛漫な少女───斉藤紬だった。


「わっ、紬!」

「栄、梨央と一緒に行動してたんだ」

「まぁ、近かったからね」

 純介は、俺達から5m程離れたところでそう声をかける。


「こっち、来ないのか?」

「あー、うん」

「おいおい、俺達のことを警戒してるのかよ」

「まぁ、誰がオニかはわからないからさ。友達だろうと疑ってかからないと」


 純介はそう口にする。用心深いところが実に純介らしい。だけど、純介のその不安は杞憂に終わる。

 だって、俺も梨央もオニではないのだから。


「僕と紬が似たところに出たから、何かしらどこかしらで関係がある人が近くに転移される───って思ったけれど、違うのかな?」

「別に、俺と梨央に関係がないわけではなくない?」

「でも、栄には智恵がいるし」

「それもそうだね。梨央は、俺って言うよりどちらかと言うと───」


 ───稜の方がピッタリだ。


 などと言おうと思ったけど、稜は勝手にそう話されて好意がバレてしまっても可哀想だ。

 現状、お互いに両片思いという状態が続いている。恋愛において、一番楽しい時期だ。変に水を差さない方が良いだろう。


「ん?何の話?つむちゃん、わかる?」

「つむもわかんなーい、じゅんじゅん教えてー!」

「ん、僕もわかんないな」

「えー、じゅんじゅん頭いいのにぃ」


 紬がそんなことを言っている。純介も、紬に言い寄られて満更でもなさそうだ。

 俺と智恵・健吾と美緒───とカップルができているし、稜と梨央・純介と紬───というカップルも悪くなさそうだった。


「───と、8人はできれば合流したいね」

「そうだね。人数が増えるとオニがその中にいる可能性も、オニに狙われる可能性も高くなるけれど、人海戦術はしやすい」


 俺達は、第一回試験を友情で乗り越えたのだ。マスコット大先生を8人で倒した仲だ。この第6ゲームを協力できるだろう。


「んま、純介がこれだけ俺達のことを警戒してるってことは純介がオニってわけでもなさそうだし」

「正解だけど、その考えは甘いよ。オニだって生き残りたい。逃亡者のフリをしてやってくるはずだ。警戒したほうがいいと思うよ」

「純介の警戒のしようはわかりやすいんだよ。そう言ってくれるけど、純介の動きはオニのものじゃない」


 俺は、そう口にする。その瞬間、純介は俺の方へ動き出し───



「タッチ」

「───ッ!」


 俺は、純介にタッチされる。その瞬間、俺はその場で爆発し───






 ───ない。


「なんちゃって」

「びっくりした...オニかと思ったよ」

 純介は普段、こういう冗談を言ったりせず一歩下がったところで笑ってみているようなイメージがあったし、実際そうだったからこうやって率先してジョークを振ってくるとは思わなかった。しかも、見ていてヒヤヒヤするようなブラックなジョークを。


「twitterなら15万バズ行けたかな?」

「不謹慎だって叩かれるかもな」

「ははは、オニにタッチされたら何かが起こる───って先入観があるだけだよ。まぁ、それを踏まえて意図的に行動したけれど」


「───それで、純介と紬と合流して、他の4人を探すの?」

「そうだね、最終的に全員と合流できるような形にしよっか」

「賛成」

「つむもー!」


「んで、合流するとしてどうするんだ?連絡する機械はないし...」

 スマホは、ゲーム開始時───正確には、ここに転移される際にマスコット大先生によって取り上げられてしまった。だから、他の4人───智恵・稜・健吾・美緒に連絡することができないのだ。


「まぁ、オニに見つからないように行動していこうか」

 こうして、俺達4人は、他の4人を探しながら行動することになった。


 俺としては最初に智恵を見つけたい。智恵は今、どこにいるのだろうか───



 ***


 ───智恵は今、最初の栄達がそうだったように森林の中にいる。


「え、え、えぇ?!」

 デスゲームが急に始まり、場所が変わった智恵は驚きが隠せない。先程までは、教室の机に座っていたはずなのだ。それなのに、マスコット大先生がデスゲームの開始の合図と空から降ってきたルールの書いてある紙切れ。


「え、えぇ...どうしよう。えっと、栄と合流したいな...」

 智恵がそう口にして、森の中を散策しようとすると───


「誰ッ!」

 そんな、高い声が聴こえて智恵はビックリする。その声の方向にいたのは、一人の女子───


 ───第3ゲーム『パートナーガター』の最中、梨花とのイザコザの後にクラスの男子数人にレイプされて男性恐怖症に陥れられた少女───佐倉美沙であった。

つむちゃん、可愛い。

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雨城蝶尾様が作ってくださいました。
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― 新着の感想 ―
[良い点] 確かにつむちゃん、可愛いかも? 後、タッチには地味にビビりました。 いきなりかい!? と思いきや冗談か、心臓に悪いジョークだ。 そして智恵は……と遭遇か。 彼女も色々ありそうだから、 この…
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