6月16日 その③
1.自分を除く任意の人物の禁止行為
2.第6ゲームの内容
3.生徒会の人数
4.平塚ここあの死因
5.四次元についての詳しい概要
6.茉裕の体質について
7.こっくりさん及び龍神ナーガについての詳しい概要
8.デスゲームを行う理由と生き返りに似た行為についての概要
9.過去の生徒会メンバーについて
10.アナタの未来を表す短歌
───マスコット大先生が取り出した1枚のA4用紙に書かれていたのは、この10個の選択肢だった。
「この中から一つだけお答えします。この紙以外に書かれていない内容は、質問についての質問以外受け付けませんのでご了承ください」
マスコット大先生の、その言葉に俺は文句を言えなかった。だって、愛香と話して聴こうと思っていた「こっくりさん及び龍神ナーガについての詳しい概要」も含まれていたのだから。
ここで、愛香と約束を守って「こっくりさん及び龍神ナーガについての詳しい概要」の質問をするのもいいだろう。別に、何の不利益もない。
───が、他にも聴きたいことが多すぎたのだ。
まさか答えてもらえるとは思えなかったような内容が、大量に含まれていた。
10個目の「アナタの未来を表す短歌」というのは、また違った方向での知りたい情報であるし、他の9個だって俺の知らないもの───真に知らないものだけを集めているような感じだった。
「ここで知った事は皆に話してもいいんですか?」
「そうですね...あまり話してほしくはないですけれど、どうせそう言ったって無駄なのでしょう?だから、もう好き勝手話してもらって構いませんよ」
マスコット大先生は───いや、池本朗は、俺のことを捨てたと言ってもこのデスゲームの中で俺の性格を理解していたようだった。俺は、いくら口止めされても愛香には話してしまうだろう。
「他の人にも、こうやって10個候補をあげて質問させたんですか?」
「いえ、これは池本栄君にだけです。池本栄君は色々と知っていますからね。聴かれちゃ困ることも色々とあるんですよ」
「そうですか...」
自由に質問できない点から見ると不平等なのかもしれないが、一人が知るべき情報の点から見ると平等なのかもしれない。
まぁ、デスゲームを運営していく以上、聴かれちゃ困ることもたくさんあるのだろう。その証拠に、「デスゲームを行う理由と生き返りに似た行為についての概要」はあれど、俺や愛香の両親の直接的な内容が聞ける選択肢はない。
「それで、どうしますか?」
「もう少し、考えさせてください」
「あれ、森愛香さんとの関連で7と即答すると思ったのですが...違うのですね」
ここで、愛香との約束を守って「こっくりさん及び龍神ナーガについての詳しい概要」を聴き、情報を共有するのもありだろう。
だけど、他の選択肢も魅力的なのだ。それこそ、「自分を除く任意の人物の禁止行為」や「第6ゲームの内容」は、目先の利益になるし、「生徒会の人数」もこれからの考察に役立つ。
他にも、四次元関連───まぁ、デスゲームの運営関連の質問も今後デスゲームを行うには知っておきたいと
ころだった。
───どれを聴くのが正解なのか。
俺は、苦悩してしまう。
ただ眺めて迷っていても、時間だけが経ってしまうので俺は分類分けすることにした。
すぐに役に立つもの
「自分を除く任意の人物の禁止行為」「第6ゲームの内容」
生徒会関連
「生徒会の人数」「茉裕の体質について」「過去の生徒会メンバーについて」
デスゲーム運営関連
「四次元についての詳しい概要」「デスゲームを行う理由と生き返りに似た行為についての概要」
その他
「平塚ここあの死因」「こっくりさん及び龍神ナーガについての詳しい概要」「アナタの未来を表す短歌」
分類するならば、こんな感じだろうか。
俺も、たまに忘れてしまうが平塚ここあ───というのは、4月3日に殺されてしまった女生徒である。
生徒会に殺された───という説が濃厚であるが、まだ確証はないので今回はその他に入れさせてもらった。
───とまぁ、正直に言うとこの中で一番どうでもいい情報は「平塚ここあの死因」ということになってしまうだろう。
彼女の無念を晴らしてやりたい気持ちもあるけれど、今はそれどころじゃない。
それと、「第6ゲームの内容」はあまりにも短絡的すぎる。数日後に巻き起こる第6ゲームの概要を聴いたところで───って感じだ。色々と対策できるかもしれないが、これまでそんな時間は無かったから今回もほとんど必要ないだろう。
「折角なら、他の人にも有益な情報がいいよな...」
俺だけが満足しない情報であると「アナタの未来を表す短歌」は除外されるだろう。
そのまま、俺は思案を続ける。
───そして、一つに絞り込んだ。
「マスコット大先生、決めました」
「なんですか?」
「6番の茉裕の体質について───を教えてください」
俺が決定したのは、茉裕の体質についてであった。愛香が色々と発見させていたが、こうやってここに並べられているということは、俺達が真に理解していない───ということになるだろう。
「───園田茉裕さんは、自分に少しでも惚れた人物を心酔させる体質を持っております。彼女に一度でも惚れた人物は彼女の操り人形となるんです」
マスコット大先生は、そう口にしたのだった。そして───
「───それは私も、例外ではありません」
その刹那、マスコット大先生は俺の首に手を伸ばし、ガチリと両手で首をギチギチと絞めてきたのだった。