6月16日 その②
「栄、マスコット大先生が呼んでる」
「あ、オッケー」
俺は出席番号3番の健吾に言われて、マスコット大先生のいる隣の空き教室へと向かう。
こっくりさんや龍神ナーガなど、聴きたいことは色々ある。愛香と情報を共有すれば、色々と話が進展することも多そうだ。
「───失礼します」
俺は、隣の教室へ移動してマスコット大先生と対面する。マスコット大先生は、被り物であるがために閉じることのない無機質な双眸をこちらへ向けてマスコット大先生の目の前の席へと俺を案内する。
「───池本栄君。こんにちは」
「こんにちは───って、なんかよそよそしいな。立場上マスコット大先生でも、中身は父さんなんだろ?」
「はい、そうです。ですがまぁ、そういう職務ですので」
「職務って...」
「とまぁ、私の中身なんかはおいておいて。早速、面談を始めたいと思います。よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
マスコット大先生のペースで始まる面談。帰ってきた3人は皆、嫌そうな顔をするばかりでどんな質問が来るのかは知らなかった。
「では、まず数個質問させてください。最後に、1つだけ質問させてあげます。色々と思っていることはございましょうが、その時までは待ってください」
「わかりました」
「では、1つ目。もし、村田智恵さんがアナタを裏切ったらどうしますか」
「どうするも何も...裏切るって例えばどのような?」
俺は、その漠然とし過ぎている状況へ対する質問に困ってしまう。「裏切る」と言っても、色々なシチュエーションがあるだろう。
「そうですね...池本栄君のことを殺しにかかる───とかは、どうでしょう?」
「智恵を止めて、説得します」
「説得できない───まぁ、要するに誰かに唆されたり何かの恨みを晴らすために行動しているのではなく、池本栄君を殺すことで何か別の目的の達成及びキーとなるのではなく、池本栄君を殺すことが目的だとしたらどうですか?それならば、説得できないでしょう」
「───」
マスコット大先生の言葉に、俺は思わず困惑してしまう。
要は、「誰かを殺せ」という命令だったりせず、「俺を殺す」のが最大の目的で目標だった場合はどうするか───だ。
そうであれば、俺が何を問いかけようと無駄なはずだ。
「───なら、俺は智恵に殺されるよ。智恵を生かすためにも、智恵の幸せのためにも死んでやる」
「へぇ...カッコいい。惚れてしまいそうです」
マスコット大先生はそう言って、俺を嘲笑するかのような目で見る。
「なんですか、その目は。まさか、俺が智恵を殺すとでも?」
「いや、別に何でもありません。カッコいいと思っただけですよ。流石は私の息子」
なんだか、言い方にイラッと来るのは気のせいだろうか。
「───と、次の質問です。この学校を生き延びて卒業する可能性が一番高いと思う人物は誰ですか?」
「そうだな...やっぱり皇斗ですかね」
「そうですか。一応聴いておきますが理由は?」
「想像の通りですよ。皇斗は群を抜いて天才です。生き延びた全員で殺し合って、最後に生き延びた人だけが卒業───なんて言われたら、勝てる気がしません。全員で一致団結しても」
皇斗は、それだけの実力がある。皇斗が、俺達の学年の全てを敵に回しても、勝てっこないだろう。
それこそ、マスコット大先生に靫蔓を生き返らせてもらうなどしなければいけないだろう。マスコット大先生曰く、厳密には「生き返る」ではないらしいけれど、そんなのはどうでもいい。
「では、次の質問です。現在存命中の人物の中で生徒会だと思わしき人物を、最低3人。最高6人あげてください。これは、本人に話す───とかはしませんので、ご安心を」
生徒会だと思っている人物を最低3人。
「えっと...茉裕さんと沙紀さん。それと...」
俺は、そこで少し困ってしまう。デスゲームが始まって最初は、生徒会は誰だ───と率先して探していたけれども、最近はそれ以上にデスゲームが大変すぎるし、生徒会側も目立った行動をしていない───正確には、茉裕と沙紀を除いた生徒会メンバーが動いていないので、俺達は考察することができないのだ。
最低3人と言っていたが、後1人。
俺は、別に誰も疑っていない。茉裕と沙紀以外、目星は付けられていないのだ。
「思いつかないので、個人的によく対立している裕翔にしておきます。この3人が生徒会だと思ってます」
「そうですか、わかりました」
マスコット大先生は、淡々とそう口にした。
「では、次が最後の質問です」
「はい」
「───もしアナタの両親がアナタのことが不必要で捨てたのだとしたら、どうしますか?」
「───ッ」
マスコット大先生の口からこぼれ出る驚くべき言葉。俺は、何も言い返すことができなかった。
これは、あくまでも仮定の話だ。家庭の話でもある。だから、確証はない。
───が、もしこれが本当ならば俺は捨てられて、その後にリサイクルと言わんばかりにデスゲームに参加したことになる。
「でも...でも、俺をおいて失踪したのは理由がないって前言ってましたよね」
「はい、いいました。不必要だからおいて失踪した。不必要だから捨てていった───という可能性は?」
「ダウト。マスコット大先生はあの時、俺が産まれる前から俺のデスゲームの参加は決まっていた───という旨の話をしていた。だから、俺が不必要な訳なかった。だから、そんな俺の答えは、そんな仮定の話する必要もない、だ」
「───そうですか。そんな結論を出してくれて嬉しいですよ、私は」
マスコット大先生はそう口にする。被り物をしているし、マスコット大先生の言葉はいつも通りなのでどんな表情かもどんな感情かもわからない。
「───では、これで質問は終わりです。では、質疑応答の時間にでもしましょう。では、好きなように質問を───と言いたいところですが、質問できる内容はこちらで絞らせていただきました。この中から、好きなものをお選びください」
それと同時に、マスコット大先生が取り出したのは1枚のA4用紙。
そこに書かれたいたのは───
1.自分を除く任意の人物の禁止行為
2.第6ゲームの内容
3.生徒会の人数
4.平塚ここあの死因
5.四次元についての詳しい概要
6.茉裕の体質について
7.こっくりさん及び龍神ナーガについての詳しい概要
8.デスゲームを行う理由と生き返りに似た行為についての概要
9.過去の生徒会メンバーについて
10.アナタの未来を表す短歌