6月11日 その⑨
第一回試験デスゲーム『友情の天秤』
1.ゲームが行われる部屋には、ゲームの参加者の数だけ椅子と1発だけ弾の入った銃が与えられる。
2.ゲーム会場の中で、誰か一人が死亡しないと抜け出すことはできない。
3.誰も死亡していない状態で銃弾を放つと、発砲した人物が自分を除く人物に「当たれ」と心の中で思うや口に出す等をすると、その人に命中する。避けることはできないし、銃弾が当たった人物は例外なく即死する。
4.何も考えずに、無作為に発砲した場合はデスゲームに参加している人物の中から一人、ランダムに射殺される人が選ばれる。その場合、銃弾は不自然に空中を周回する。
5.誰かが死亡してから5秒以内は、発砲可能。その場合は、銃弾を避けることも可能である(避けれるかどうかはその人の身体能力に依存する)
6.試験は、部屋を出た時を終了とする。
7.試験のポイントは、333点満点から6秒毎に1点ずつ減少する。
8.1998秒(33.3分)経った時点で部屋から出ていない人物は全員死亡する。
振り出しに戻ってしまった俺達の議論。
この部屋で誰かを殺した後に、外で生き返らせるという方法は、呆気なく失敗に終わった。
全員席に着いた状態に戻り、俺達はただ沈黙する。
「皆、ごめんな。俺がすぐに死ねないばっかりに...」
稜が、少し申し訳無さそうにそう謝罪する。
「いや、稜は悪くないでしょ」
「もちろん、栄も悪くないけどね」
「うん、そもそも殴り殺す───って発想が駄目だったな。俺達は皆、いいやつなんだから友達を簡単に殴り殺すなんてできない」
稜と俺のことを、皆が必死に援護してくれる。
「───と、僕達は見てただけなんだから作戦の失敗に何も言えない。殴られた稜は、辛い思いをさせてごめんなさいだし、栄も稜を殴らせちゃってごめんなさいだ」
純介が、俺達の話をこうしてキレイにまとめてくれた。やはり、純介が冷静でいたのは良かったことだろう。
俺と稜は、喧嘩をした訳では無いが仲直りの握手をして和解する。まぁ要するに、メロスとセリヌンティウスのようにお互いを殴り合って友情を再確認する───というような低次元な方法を取らないのだ。
もう俺達は強固な友情で結ばれていることがわかっていたから、ただ握手をするだけで仲直りができるのだった。
「───それじゃ。話を戻すよ。時間はもうあまりないんだ」
純介は、そう言うけれども時間は残り1000秒弱もある───いや、違う。
ない、1000秒ということは大体15分程度だということだ。ランダムに頼るまで、残り15分。
それは非常にまずかった。
「ランダムだけは避けないと...」
俺は、思考を回す。どうにかして、作戦を考えつかなければ。
───が、死体を偽装させるという作戦は心優しい俺達には無理なようだった。
「せめて銃弾が確殺じゃなければ...」
致命傷で話が終えられるのであれば楽だっただろうか。だけど、今回マスコット代先生が用意した銃弾は「例外なく即死する」とのことだった。
「デスゲームのルールにこれまで嘘はなかったし...マスコット大先生達は平等を心がけている。だから、ここで嘘を付くなんてことはないはず」
マスコット大先生達デスゲーム運営も、かなり性格がひん曲がっている。
どうして、チーム戦と言いながら誰か死亡しなければいけないようなルールを作ったのだろうか。マスコット代先生を配置していることも見るに、俺達が苦しむ様子が見たい───というのがその本心であろうことは間違いないだろう。
「クソ、誰かいい作戦を思いつかない?」
健吾がそう口にする。
「ううん、駄目そう」
「智恵、どう?」
俺は、隣に座っている智恵に話を聴く。
「ううん、私は頭が悪いから何も思いつかないよ。ごめんね、役に立たないで」
「いや、いいんだ。いるだけで癒やされるから」
「おい、こんな状態になってもまだ惚気か?」
俺は、健吾からそう野次を飛ばされてしまう。
「別に、健吾と美緒もイチャイチャしてもいいんだぞ?カップルにイチャイチャする権利は平等にある───」
「おいおい、オレと美緒はそんなバカップルじゃないぞ───って、おい。栄、どうした?」
───閃き。
俺は、ふとした自分の発言で気付いた。よくよく考えれば、簡単な話だった。
俺は、もう一度確認のためにルールを確認する。ルールの内容は、最初から全く変わらずに、そこに書かれていた。
第一回試験デスゲーム『友情の天秤』
1.ゲームが行われる部屋には、ゲームの参加者の数だけ椅子と1発だけ弾の入った銃が与えられる。
2.ゲーム会場の中で、誰か一人が死亡しないと抜け出すことはできない。
3.誰も死亡していない状態で銃弾を放つと、発砲した人物が自分を除く人物に「当たれ」と心の中で思うや口に出す等をすると、その人に命中する。避けることはできないし、銃弾が当たった人物は例外なく即死する。
4.何も考えずに、無作為に発砲した場合はデスゲームに参加している人物の中から一人、ランダムに射殺される人が選ばれる。その場合、銃弾は不自然に空中を周回する。
5.誰かが死亡してから5秒以内は、発砲可能。その場合は、銃弾を避けることも可能である(避けれるかどうかはその人の身体能力に依存する)
6.試験は、部屋を出た時を終了とする。
7.試験のポイントは、333点満点から6秒毎に1点ずつ減少する。
8.1998秒(33.3分)経った時点で部屋から出ていない人物は全員死亡する。
「───なぁ、皆。一つ思いついた」
「───なんだ?」
「話す前に1つ確認だ」
「何?」
「最悪、俺達全員で心中してもいいと思うか?」
「───え...」
「時間ギリギリになったらランダムに頼るんじゃ───」
「質問に答えてくれ。俺達全員で心中してもいいと思うか?」
「「「───うん」」」
即答だった。俺を除いた7人は、ここまで2ヶ月半ほどデスゲームを生き抜き、それほどまでの友情で結ばれていたようだった。
「ありがとう、皆」
俺はそう口にする。そして、俺は皆に小声で作戦を伝えた。
「───おいおい、そんなのが有りなのか?」
「でも、ゲームのルールには逆らってない」
「はぁ...これなら、疑問も解決だよ」
「ふふふ、栄。よく思いついたね」
「流石、栄!」
「実行するなら、これしかないね。他の方法は思いつかないし」
「じゃあ、栄の作戦を信じるよ」
「じゃあ、皆。準備はいい?」
「「「あぁ!」」」
「「「えぇ!」」」
そして、俺達8人は全員、一人一つずつ用意された1発しか銃弾の入っていない銃を手に取る。
───もし、これが失敗したら全員銃弾が無くなり、タイムオーバーで心中だ。
俺達8人全員が向ける銃の先にいたのは───
「───マスコット代先生。よくも俺達を仲間割れさせようとしてくれたな。だが、俺達の友情は誰にも引き裂けない」
「「「さよなら、マスコット代先生」」」
その言葉と同時に、8つの声と8つの銃声が部屋に響いた。
狙うはもちろん、俺達の手の届かない高所で我が物顔で座っていたマスコット代先生である。
第一回試験デスゲーム『友情の天秤』 抜粋
2.ゲーム会場の中で、誰か一人が死亡しないと抜け出すことはできない。