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6月11日 その⑦

第一回試験デスゲーム『友情の天秤』

1.ゲームが行われる部屋には、ゲームの参加者の数だけ椅子と1発だけ弾の入った銃が与えられる。

2.ゲーム会場の中で、誰か一人が死亡しないと抜け出すことはできない。

3.誰も死亡していない状態で銃弾を放つと、発砲した人物が自分を除く人物に「当たれ」と心の中で思うや口に出す等をすると、その人に命中する。避けることはできないし、銃弾が当たった人物は例外なく即死する。

4.何も考えずに、無作為に発砲した場合はデスゲームに参加している人物の中から一人、ランダムに射殺される人が選ばれる。その場合、銃弾は不自然に空中を周回する。

5.誰かが死亡してから5秒以内は、発砲可能。その場合は、銃弾を避けることも可能である(避けれるかどうかはその人の身体能力に依存する)

6.試験は、部屋を出た時を終了とする。

7.試験のポイントは、333点満点から6秒毎に1点ずつ減少する。

8.1998秒(33.3分)経った時点で部屋から出ていない人物は全員死亡する。

 

 場が支配するのは、お通夜のような重く暗い雰囲気。マスコット代先生の口で行われた人間宣言。


 過去にも一度、マスコット先生が自らのことを「人間です」と語っていたので、その時と意味は似た感じだろうから、いちいち説明はしない。


「マスコット代先生の言葉は、信じない。栄は、誰かが死ぬことを選んで安堵するようなやつじゃないことを知っている」

 稜は、俺のを方その真剣な眼差しで見てそう口にする。その視線に、俺は少し心が痛んだ。


「───でも、栄。隠すことはやめてくれ。俺達は友達だ、俺達は仲間だ。だから、言いたいことがあるのなら、ハッキリ言ってくれ。何を言われようと、俺はどちらにせよ死ぬ。その決断は変えない。男だからな」

 稜は、俺にそう語りかける。今、この部屋には健吾や純介だったり、智恵や梨央に美緒・紬とマスコット代先生がいるのだけれど、誰も口を開かなかった。

 きっと、ここで変なことを口にして場をこじらせたくないのだろう。皆、自らの保身のためにも口を開くことはない。


 ───今思えば、稜もあのまま投票をしていれば梨央が「死ぬのが一番被害が少ない」ということになって死亡することに気付いていたのだろう。

 もちろん、梨央でなくても自己犠牲精神の強い稜であれば名乗り出ただろうが、想い人である梨央の為もあり今回は強く名乗り出たのだろう。


 稜の、恋を成就させるためにも梨央も稜も殺してしまいたくはない。これは、友人としての率直な感想だった。


「わかった、話すよ。思っていることを」

 俺はそう宣言し、そのまま言葉を続ける。言いたいことを言っていいのならば、俺は好きなだけ言わせてもらう。


「───稜、お前の正義は間違ってる」

「───は?」

 俺は、稜のその正義を真っ向から否定する。


「そうやって、自分を殺して皆を生かすのが稜の正義なんだろ?素晴らしい、素晴らしいよ。その自己犠牲精神は。だがな...マスコット代先生の言葉を使うのは癪に障るが、だがな。稜が死んで悲しむ人がいるんだぞ。お前の中の正義は、英雄は自分を傷付けることなのか?」

「───違う...」


 稜は、小さな声で俺の言葉を否定する。俺は、稜へまだ言葉を投げかける。

 今後の議論なんかどうなったっていい。どうせマスコット代先生に好き勝手荒らされた議論だ。もう、振り出しに戻ったのと同義だ。だから俺は自分自身でこの議論を完全に振り出しに戻す。


「英雄は人を───自分を傷付ける人物を指すんじゃない。英雄は、人を笑顔にする人物のことだ!」

「───」


 俺は、わかっていた。

 ここで誰が死のうと、誰が生きようと笑顔は生まれないことを。


 結局は、俺達8人の中で誰かが死ななきゃいけないし誰かが辛い思いをしなければならない。それを最小限にするためにも、俺達は先程まで「死ぬのが一番被害が少ないか」ということを考えていたのだ。


 ───が、やっぱりそれは俺らしくない。


「俺は、皆を笑顔にして終わりを迎えたい。誰かのためじゃない、自分のために」

 そう。ここで誰を殺しても、智恵とは心の底から笑うことはできないだろう。智恵と心の底から笑う為ならば、不可能を可能にして見せる。


 ───もう、俺の中に社会的体裁なんてものはなかった。


 誰のためでもなく、自分のために頑張る。原動力が自己中心的で何が悪い。

 俺は皆と生き残ってまた笑っていたい。掴んだ友情を捨ててしまいたくない。


 靫蔓の言う「主人公」とは程遠いかもしれないが、物語の主人公には似合わないかもしれないが、俺は自分本位に行動する。それが結果として、皆の幸せになるのであれば。


「───そうは言っても、どうするんだよ。誰も殺さずに外は出れない。それはルールだ」

 純介が、そう声をかけてくる。それも事実だった。


 俺は誰も死なずに終わりたい。だが、この部屋は最低誰か一人でも殺さないと出られない。

 その大きすぎる矛盾が、俺達の至高を阻み、また加速させる。


 俺は、再度ルールを見直した。


 第一回試験デスゲーム『友情の天秤』

 1.ゲームが行われる部屋には、ゲームの参加者の数だけ椅子と1発だけ弾の入った銃が与えられる。

 2.ゲーム会場の中で、誰か一人が死亡しないと抜け出すことはできない。

 3.誰も死亡していない状態で銃弾を放つと、発砲した人物が自分を除く人物に「当たれ」と心の中で思うや口に出す等をすると、その人に命中する。避けることはできないし、銃弾が当たった人物は例外なく即死する。

 4.何も考えずに、無作為に発砲した場合はデスゲームに参加している人物の中から一人、ランダムに射殺される人が選ばれる。その場合、銃弾は不自然に空中を周回する。

 5.誰かが死亡してから5秒以内は、発砲可能。その場合は、銃弾を避けることも可能である(避けれるかどうかはその人の身体能力に依存する)

 6.試験は、部屋を出た時を終了とする。

 7.試験のポイントは、333点満点から6秒毎に1点ずつ減少する。

 8.1998秒(33.3分)経った時点で部屋から出ていない人物は全員死亡する。


「───マスコット代先生。質問です」

「何かしら?」

 先程の煽って来るような口調とは一転。マスコット代先生は、その服装のステレオタイプにあった女性のような口調に戻っていた。


「殺すのは銃じゃなくても...例えば、拳で殴り殺すのでもいいのか?」

「一人死ぬのであれば、如何なる死因でも扉は開きますよ」


 マスコット代先生はそう教えてくれる。俺が考えたのは、死を偽装する───要するに、この部屋で誰か一人を殺した後に、外で生き返らせるという方法だった。

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雨城蝶尾様が作ってくださいました。
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