6月8日
七不思議其の弐『トイレのこっくりさん』の2つが終了して、早くも2日が経過する。
愛香は、マス美先生の───正確には、GMの超能力のようなパワーを借りて復活していたし、皇斗は当たり前のように首の傷を自然に治していた。
鈴華といい皇斗いい、この学校には人の姿をした怪物だと思ってしまうような生徒が多く存在していた。
───そして、『トイレのこっくりさん』の外で起こっていたバトルにより、現在連れて行かれている茉裕も生徒会であることが確定した。皇斗のしていた予想が的中したのだ。
それと、愛香が茉裕は「自分に共感した人を操る能力」を持っていると解明した。
それにより、敵として現れるも最終的に茉裕の手で殺された慶太や、現在も生存している沙紀など「生徒会だ」と自称するだけでは確定できないような状態になっていた。
───と、問題はそれだけじゃない。
茉裕が生徒会だと断言されたことにより、その決定に反対意見を出した人物が一人いた。
───そう、鈴華である。
「茉裕は生徒会じゃねぇ!オレは同じ寮で暮らしていたけど、そんな様子は見られなかった!」
鈴華はそう口にして、茉裕が生徒会であることを否定する。
茉裕のことを狂信的に信じ込んでいる鈴華とは水掛け論で誰も会話にならなかったし、暴力で抑え込むこともできなかったので半ば敵対するような形で放置することになった。
謎が1つ減ると、新たな謎が5つ程湧いてくるこのデスゲームで、問題を放置しておくのは危険だったけれど、今敵対するのは危険だ───そう判断したのだった。
───と、俺達に謎について深く考え込むような太平の時間はやってこない。
1つデスゲームが終われば、また次にデスゲームがやってくるこの学校で安寧の時など存在していないのだった。
「皆さん、おはようございます。明日は第一回試験ですね」
マスコット大先生は、朝のHRの時間に教壇に立つと皆の前でそう告げた。
───そう、俺達の学校にも定期試験というものは存在していた。
校則を見ると、合計5回テストがあり、今回はその1回目。ちなみに、2回目は夏休みに入る直前であった。
「明日説明するのは面倒ですので、本日ザッと話してしまいますね」
マスコット大先生はそう言うと黒板に6/9・6/10・6/11と縦に3日間を並べて書いた。
「まず、明日の9日には運動能力を測る試験を行います。そして、明後日の10日には基本的な学力を問う筆記試験を、国数英社理の5科目の中でやってもらいます。まぁ、皆さんは天才ですからね。専門分野もバシバシ聴いていきますよ。出題範囲は森羅万象です」
マスコット大先生は、試験問題なんか作れるのだろうか。
というか、出題範囲が森羅万象とはふざけている。反論しても無駄なのはわかっているので、反論はしないけれど。
「そして、3日後の11日には寮のチームごとに分かれた試験を行います。内容はまぁ....当日に発表する感じでいいですかね?」
マスコット大先生はそう口にした。定期試験なのにチーム戦───まぁ、言わずもがなデスゲームなのは間違いないだろう。
「そして、3日間それぞれ333点満点ずつの採点を行い、累計999点満点で採点を行います。そして、1位から最下位まで順位を発表しようと思いますのでよろしくお願いします」
どうやら、この学校で順位が張り出されるようだった。
1位の予想はできた。皇斗だ。
「マスコット大先生、質問です」
そう言って手を挙げるのは、康太であった。
「はい、康太君。どうしましたか?」
「試験の順位を張り出すようですが、最下位だったら死亡する───だとか、点数が悪すぎたら留年するとかってあるんですか?」
康太はそう質問する。
「そこは重要なところですので、しっかりと解説しましょう。まず、最初の質問に関しては試験開始時と試験終了時の人数を比べた際、変動が無かった場合のみ───要するに、今回の試験期間中に誰一人として死亡する人物がいなかった場合のみ、最下位の人物が死亡します。要するに、今回の試験で最低一人は死亡する───ということですね」
マスコット大先生はそう解説した。
きっと、3日目に行われる試験の内容がデスゲームであることは予想がついている。
いや、これは試験だからデステストだろうか。まぁ、語呂が悪いのでデスゲームと呼称し続けることにしてもいいだろう。
その3日目の試験で誰か一人でも死なない場合のみ、最下位の人物が死ぬ───ということらしかった。
「それと、留年に関してはありません。この学校は皆も知っている通り毎年卒業生を出しているわけではございませんから───って、この言い方じゃデスゲームで全滅してしまったみたいな言い方ですね。本校は、留年等の制度無く全員卒業ができ、どれだけ成績が悪くとも卒業してしまえば帝国大学への編入することが可能ですのでご安心を」
そう言えば、生き残ることに必死で忘れていたが、俺達はこの高校を卒業すれば日本一頭の良い帝国大学に入学することができるのだった。
「では、試験の話はこれで以上です。皆さん、いい一日を」
その言葉と同時に、朝のHRは終了する。
明日から早速、第一回試験1日目を。