4月2日 その⑮
放課後になり、俺達は自分達の寮に戻った。
「うーん、17時に生徒会が集まるんだろ?」
「そうみたいだね」
「それがわかってるのに、何の行動もできないとは残念無念...」
「まぁ、お互いの事を疑うよりはオレら4人だけを確実に生徒会じゃないって思った方がいいんじゃないか?」
「それは...そうだね」
俺達4人は、リビングから動かないようにした。昼食には、無料で配布されている日替わりランチを食べた。
───そして、16時に俺らのところにスマホに連絡が来る。
「───何?」
「3年Α組 連絡用グループ」にマスコット先生から連絡が来たのだ。
マスコット先生「今日は金曜日なので、休日に行う課題を出します。皆さんの個室に入らないと開けない設定になっておりますので個室で開いてください」
そして、マスコット先生のメッセージと共にリンクが送られてきている。このリンク先に飛んでも、「個室に入ってね♪」としか、書かれていない。
「なんだ?これ...」
「わざわざ個室に入る意味、あるかな?」
「さぁ?どうだろう...」
「個室、入らない方がいいと思う...」
俺は、純介に止められる。
「皆、個室入ってるってわかれば俺らは白じゃ...」
「これで、部屋の外に出れなくなったらどうするの?」
「あ、そうか...生徒会のメンバーだけが出入りを可能にしたら...」
「そういう事。完全に、先生の思惑通りってこと!」
純介はそう言う。それとほぼ同時に、もう一度、一斉に通知音が鳴る。
岩田時尚「課題を取り組まない場合はどうなりますか?」
時尚が、そんな事を先生に聞いている。そして、すぐに返信が帰ってくる。先生、暇か。
マスコット先生「死ね」
「ブフッ!」
ど直球すぎる暴言に、俺は思わず笑ってしまう。先生として、この発言は教育委員会に訴えられても文句は言えない。
「スクショしとこ...」
純介はそう言って、スクショをする。
「でも、マスコット先生の{死ぬ}とか{殺しますよ?}とかは、ジョークには聞こえないんだよなぁ...」
健吾がそんな事を呟く。
「それは言えてる」
「そうだね...」
稜と純介も、健吾の意見に同意する。
「───ッ!そういう事か」
俺は、理解した。スマホを返したのは、このためだったのだ。
「うーん、素直に部屋に入ったほうがいいんじゃないか?」
「そうだね...」
俺らは、そう話し合って2階のそれぞれの個室に向かった。
「んじゃ」
””””ガチャッ””””
4人が扉を閉める音が聞こえる。そして、俺はもう一度扉を開けようとする。
───が、開かない。
「案の定、開かないってことか...」
俺は、純介の先見の明によって焦ることはなかった。
”ドンドン”
俺は、隣りの部屋ににいる稜に部屋にいることをアピールをする。
───が、何も返答はない。
「嘘、まさか防音?」
俺は、そんなことを疑いつつスマホを開きマスコット先生のメッセージと共に送られてきたリンクを開いてみる。
「課題の配信は17時からだよ♪個室に入った人はそれまで待ってよう♪」
そんな文章が送られてきた音符が何個も付いていて少しウザい。
「って、まだ4時7分じゃん。53分は暇だな...」
そんな事を呟く。俺は、ふと窓の外を見た。
「───ん?」
俺の目に入ったのは、一つの人影だった。
「誰だ?」
その人影は、学校の昇降口に吸い込まれるように入っていく。遠目でもわかるその髪の色は、白だった。
「白髪って...細田歌穂さんしかいない気がする...」
目を凝らしてみるも、校舎の中に人影は消えてしまった。
「まさか...彼女が生徒会?」
こんな早くに移動するのは、少し勇気がいる。彼女はたしかチームHだったような気がする。
「他のメンバーは...」
パーフェクトジェンガを達成したチームHの事は、印象に残っていた。
あの傲慢な森愛香と、俺の左隣の席の小寺真由美・大きな熊のぬいぐるみを学校に持参していた綿野沙紀の3人だ。
「───小寺真由美さんと綿野沙紀さんは大人しそうだが...森愛香が素直にマスコット先生の命令に従うのか?」
俺は、疑った。きっと、森愛香ならば反論するだろう。
「───いや、さっきのマスコット先生の死ねって発言にビビって素直に───いやいや、まさかな。マスコット先生の首を斬ってさらに2人目のマスコット先生にまで手を出したんだ。素直に従うわけもない...」
いくら考えても答えは出なかった。
そんなこんなをしている内に、17時になる。
「あ、課題が配信される時間だ...どれどれ?」
俺は、先程と同じリンクを開く。そこには、次のように書いてあった。
以下の文字を入れ替えてできる文の答えが部屋の鍵の解除ナンバーである。
i h u d r a r y w s h i t b n y o e
hint1:4月2日20時に配信
hint2:4月3日15時に配信
答え _ _ _ _
***
同刻。生徒会室にて。
「生徒会の皆さん、よく来てくださいましたね。───って、私が強制的に呼び出したんでした」
マスコット先生は、複数人の生徒の前でそう言う。
生徒会に立候補した人物も皆揃って、個室の中に入った。だが、17時ピッタリに生徒会室に瞬間移動したのだ。
「どんな仕組みなんだ?」
生徒の1人は、突如として行われた瞬間移動に驚く。
「あなた達は仕組みなんて知らなくていいわ」
「───ッ!お前は!」
「死んだはずじゃ!」
「死んでないわ、あれは私の演技よ。エ・ン・ギ」
そこにいたのは、死んだはずの金髪の少女───松阪真凛だった。
皆さんでも、暗号は解けます。
並び替えるだけなら馬鹿でもできる。
アナグラムは花浅葱の常套手段ですし。 ・・
鍵の解除ナンバーがわかった方はコメント欄に送ってくださいね。判断します。





