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閑話 山本慶太の過去

 

 山本慶太───僕はオルターエゴである。


 僕の話をする前にまず、オルターエゴという言葉を説明したほうがいいだろうか。

 オルターエゴとは、端的に説明するならば別人格のことである。


 要するに、僕は本当の僕ではない。


 ───では、本当の僕というものがどこにいたのかと思うだろう。


 だけど、本当の僕は過去に2度クラスメイトの前に公的に現れた。

 一度目は、第2ゲーム『スクールダウト』の本選で夜になった時である。

 そして、二度目は七不思議其の弐『トイレのこっくりさん』の最中である。


 ───そう、要するに破壊衝動に身を任せてしまっている時が本当の僕なのだった。


 これは、僕と僕の苦悩に満ちた物語───否、閑話だった。


 ***


 僕が最初に破壊したのは、親から貰ったパトカーのおもちゃだった。

 2歳の誕生日の時に貰った、約15cm程のそれなり大きなパトカーのおもちゃを、それなりに精密に作られたパトカーのおもちゃを、僕はマイナスドライバーだけで分解(バラ)したのだった。


 母親は、僕のその行動に驚き僕を止めた。結局、母親の力じゃパトカーは直せなかったのでそのパトカーは───正確には、パトカーだったものは捨てられたのだった。


 ───そして、僕の行動は次第にエスカレートして最終的には一人の人間を───要するに姉を殺害(ばら)した。


 臓物一つ一つを一列に並べ、骨をキレイに整列させて、大きな傷一つなく剥いだ皮を絨毯のように床に敷いて。僕は姉を徹底的に解剖した。


 ───と、両親は僕のその行動に憤慨して僕を警察に連れて行った。


 齢5歳の僕は、誰にも知られていない殺人犯となった。

 僕は、触法少年であったために逮捕されることはなく、精神病院へと連れて行かれた。


 だけど、結果としては「正常」であった。僕に、異常などなかった。

 何か障がいがあったわけではなく、ただ僕は好奇心が少し強いだけだった。

 何かを分解(バラ)したい───という欲求が人よりも強いだけだったのだ。


 だが、姉を殺したという事件があった以上、そのままで終わらせることはできないので、その精神病院の先生は僕に「優等生」という人格を作らせた。


 ───そう、その「優等生」の人格が皆が普通だと思っていた僕の姿───昼間の僕なのである。


 僕は、精神病院で「優等生」の人格であることを強要されて、その人格を前に出して暮らすことになった。


 ───が、昼間に本当の僕というものを抑え込んでいるからか、毎晩本当の僕は暴走してしまうのだった。


 それが、僕という人物だった。

 5歳の頃から───いや、人格を与えられて体に定着したのは6歳頃だったから、6歳の頃から僕は毎晩のように破壊衝動に、分解欲求に従って行動していたのだった。


 ***


「マスコット大先生、これが僕の人生です」

「───本当ですか?」

「はい?」

 四次元にて、過去回想をさせるためだけに、生き返らされた───正確には、生き返ってはいないのだけれど、便宜上「生き返らされた」という言葉を使用する。過去回想をするためだけに、生き返った慶太が語り終えた時に、マスコット大先生は慶太に問うた。


「まだ、続きがあるでしょう?君は嘘をついています。君は嘘つきだ。君の過去は全部ウソ」

「───嘘じゃないです、僕は...」

「嘘ですよ、山本慶太君───いや、山内祐樹君」

「───ッ!」


 山内祐樹という、デスゲームに参戦していない人物の名前が呼ばれて、慶太は体を振るわせる。

 マスコット大先生の口にする山内祐樹は誰のことだろうか。それは、マスコット大先生の目の前にいる山本慶太のことである。


 そう、山本慶太という名前は偽名であった。山内祐樹という名前を付けられたと同時に、慶太の顔はみるみる青くなっていく。

「違う...違う、違う!あれは事故だ!僕は...僕はッ!」

「いいえ、事故ではありません。あれは、君が起こした事件です。君の起こした事件です」

「僕は...僕はッ!」


 その時、山本慶太の───否、山内祐樹の理性がブツリと切れる。


「───壊れろ」

 グシャリと涙を浮かべた祐樹は、マスコット大先生の首筋を抑えてそのまま地面に叩きつけた。


「───ごほっ」

 マスコット大先生は、現れた第三の人格───否、慶太の原初の人格である祐樹に倒されて吐血する。


 ───そう、山本慶太という名前さえも山内祐樹という男の中に作られた人格だったのである。


 山内祐樹という人物に、とある不幸が───彼の引き起こしてしまった事件が起こって、彼は自分自身というものに失望してしまった。


 だから体が自己防衛の本能で「山本慶太」という人格を作り出したのだった。

 そして、その人格は「優等生」という昼間の状態と、「本当の僕」という破壊衝動に身を任せた夜の人格を作ったのだった。


 ───そう、先程慶太がさも真実かのように語った過去回想は全て「慶太」の過去回想であって、事実ではない。要するに「山内祐樹」の過去回想ではない。


 ───では、お話しよう。


「山本慶太」という虚実の人物の過去回想ではなく、「山内祐樹」という事実の人物の過去回想を。


 要するに、真実を。

山本慶太=山内祐樹


最初の方に行われた過去回想は、「山本慶太」という人格ができた時に作られた偽りの過去です。

次回は「閑話 山内祐樹の過去」をお送りします。

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雨城蝶尾様が作ってくださいました。
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― 新着の感想 ―
[良い点] 慶太、ジョジョ6部のアナスイみたいな奴ですね。 慶太というのもあくまで別人格。 山内裕樹の過去がどんなものか。 気になるところです。
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