6月6日 その⑮
今回の話は、残酷な描写が含まれております。
特に男性の皆様で苦手な方がおりましたら、注意してください。
───こちらは、三次元のグラウンド。
愛香と慶太の2人の殺し合いに、愛香の仲間として協力しようと愛香に近付くのは歌穂であった。
「歌穂、こちらに来るな」
「───なんで?」
「妾一人で勝てるからだ」
「でも、アタシがいればもっと楽に───」
「不必要だ。手助けなど!」
「───なによッ!人が助けてあげようと言っているのに!」
愛香と歌穂は、そんな口喧嘩を行う。
「おいおい、喧嘩か?俺様を無視して喧嘩だなんて、いい御身分だなッ!」
そして、慶太の握る拳が愛香の方へ飛んでいく。が───
「うるせぇ!」
「───へぶっ!」
慶太の拳が愛香に当たるよりも先に、愛香の拳が慶太の顔面にめり込んだ。そして、愛香はその場に膝をついて倒れる。
「歌穂、貴様は離れていろ。嫌な予感がするんだ」
「嫌な予感って何よ」
「言葉じゃ表せない嫌な予感だ。勘とも言う」
「勘だなんて───」
「信じろ。栄ならば、信じてくれる」
「───」
歌穂は、愛香の言葉を聴いてその場で足を止める。
「しょうがないわね、ここは愛香に花を持たせてあげるわ。その代わり、愛香が言った嫌な予感が当たらなかった時は覚悟しとくことね!」
そう言って、歌穂は元いた位置まで戻っていく。
「───んで、いつまでそこで跪いておる。貴様に敬意を払われようと何も無いぞ」
「俺様だって、下げたくて頭を下げてる訳じゃねぇ...」
そう言って慶太は立ち上がる。慶太の口調は、戦いが始まる前と───愛香達と邂逅する前と変化している。
最初は敬語だったのに、今ではここまで口が悪くなっていた。
これも、茉裕の体質が影響しているのだろうか。それとも、これが慶太の素なのかもしれない。
───が、そんなこと愛香は気にしない。
「くらえッ!」
愛香は、ゆっくりと立ち上がっている慶太の顎を蹴り上げようと足を上げるけれども、慶太はそれを後ろにバック宙することで避ける。
「ふん、避けたか」
「油断はしないぜ...俺様は天才だからな!」
慶太はそう言って、笑みを浮かべる。
「そうか、天才だと言うのであれば妾の連撃を全て避けきってみろ!」
その直後、愛香は慶太の方へ迫る。そして右フック左ストレートからの右アッパー。慶太はそれを、ウィービングからのダッキングでなんとか避けきった後に、両手で右アッパーを受け止める。
「───連撃はこれだけか?」
「まだまだだ!」
刹那、愛香の蹴りが慶太の股間に激突する。
「───ッ!」
その刹那、慶太の股間を襲うのは鈍い痛み。まるでハンマーで叩かれたかのような、鈍いのに鋭い女性には伝わらない痛みが康太を襲った。
「───がぁぁぁ!」
康太が吠える。
「うわぁ...痛そう...」
この痛みを知らない───知る由もない歌穂が、そんなことを口にする。股間を蹴り上げられる痛みを知らない者の同情。
「この攻撃ならば、皇斗にも通用するだろうか?」
「んなの、知らないわよ。今度不意打ちで試してみたら?」
「そうだな、そうしてみよう」
可哀想だから、やめてあげてくれ。
「取れた!クッソ、片方取れた!」
そう言って、慶太は戦闘中なのにも関わらずその場で転げる。
「うるさいな、男ならその位の痛み、我慢しろ!」
「お前ら女が言うんじゃねぇ!」
愛香は、股間を庇ってその場に横になり呻いている慶太をボコボコにする気にはなれなかったので、慶太が復活するまで3分ほど待った。
「───クッソ...よくもやってくれたな」
「やっと復活したか」
「だが、そうやって俺様に慈悲をかけたことは間違いだったな!次でお前は俺に壊される」
「やってみろ」
愛香が、クイクイと右手の人差し指と中指を動かす。すると、慶太はその挑発に乗って愛香の方へ接近していった。
「───くらえッ!」
愛香の数メートル前で、空中に飛び上がった慶太は愛香の顔面に向けて蹴りを放つ。
「この程度ッ!」
愛香は、慶太の蹴りを後ろにのけぞることで避ける。そして、慶太の足を手に取り、そのまま地面に叩きつけた。
「───へぶッ!」
「残念だな、貴様は先程の無様な姿を晒してから、ネタキャラという立ち位置が確立されたんだ。貴様じゃ、妾には勝てんよ」
「───あ、がッ!」
そう言うと、愛香は慶太の喉に蹴りを入れる。慶太は、ゴロゴロと地面を転がる。
「グ...ソ...」
慶太は、その場から逃げようとするけれど逃げられない。
「逃さない。妾に挑んだんだ。死ぬ覚悟はできているよな」
「───死にだく...ねぇ...」
そんな慶太の言葉は、愛香には届かない。そして、慶太は愛香に首の骨を折られて殺され───
───るその刹那、2人の戦いに割り込んで入ってきたのは一人の少女だった。
「慶太、大丈夫?」
「───茉裕...」
「貴様、どうしてここに」
「さぁ、どうしてでしょう」
「やはり貴様も───」
「しー」
愛香が口を開こうとした時、愛香まで急接近した茉裕は愛香の顔の前に立てた人差し指を持っていく。
「───ッ!」
茉裕は、そのまま慶太を回収して愛香から距離を取る。
「茉裕、俺様を助けに───」
「アンタのせいで大失敗よ、責任取って」
その刹那、慶太の首に刺さるのは茉裕の胸ポケットから出てきたナイフだった。
「茉裕...お前は生徒会なんだな?」
「正体を隠しても無駄なようだし...教えてあげる」
茉裕は、喉元に深くナイフが刺さった慶太を放り投げて愛香に背中を見せる。そして、愛香の方を向いてこう言った。
「私は、第5回デスゲーム生徒会メンバー、園田茉裕よ。君も私の、奴隷にならない?」
ー後日ー
愛香は、不意に皇斗の股間を蹴り上げた。
皇斗「───ッ!おい、愛香何をする!取れた、片方取れた!」
男の敵(愛香)「お前も慶太と同じ反応をするのか...」
皇斗「おい愛香、説明しろ!何だその目は!」