6月6日 その①
───6月6日。
スウェーデンの建国記念日や、恐怖の日・悪魔の日・「バイきんぐ」の小峠英二の誕生日などがある今日、俺は愛香と歌穂に連れられて学校のグラウンドにいた。
───そう、本日は俺と愛香・歌穂の3人がこっくりさんと戦闘を行うのだった。
「でも、本当に協力してくれるのか?愛香が言っていた通り、愛香が戦いに参加する意味なんて無いんだぞ?」
「協力してやると言っている。妾の癪に障るようなことを言うな」
愛香は、無愛想にそう口にする。でも、手伝ってくれるようで何よりだ。
俺は、今回は校舎ではなく体育館へ向かう。理由としては、先程皇斗喋った時に「体育館は安全だ」という話がされているから、そこにいる───と考えたからであった。
「おーい、皇斗。いるか?」
「来たか」
皇斗は、ガラガラと体育館からグラウンドへと繋がる扉を開ける。この扉を開けようと、皇斗がグラウンドの外に出れることもないし、俺達が体育館の中に入ることもできないのだが、それでも会話のしやすさは格段に変わる。
皇斗は、首に包帯を巻いていた。先程は刺されたまま放置されていたが、ここまでの時間で包帯を巻いたようだった。
「傷は大丈夫か?」
「大丈夫じゃないが問題ない。自分で応急処置をしたからな」
「自分で首の後ろの傷の応急処置を...」
「ちょっと、ワタシも手伝ったんだから!」
そう言って、体育館の奥からやって来るのは美玲だった。その後ろには、智恵の姿もあった。2人は、こちらに来ているようだった。
───と、体育館を見渡してみると他にも稜や健吾・鈴華などの姿もあった。
「だそうだ」
「んな、他人事!」
「───そこの騒ぎ馬鹿はおいておいて、だ」
「んなッ!馬鹿騒ぎじゃなくて騒ぎ馬鹿ですって?!」
「マスコット大先生を早く呼べ。妾はとっととこっくりとやらを討伐したいのだ」
失礼な愛香。それにツッコミを入れる美玲。そして、それを完全に無視して話を続ける愛香。
「わかっている、マスコット大先生を呼ぶぞ」
「───って、どうやってマスコット大先生を呼ぶんだ?」
「GMだ。掛け合えばくるだろう。七不思議に参加している誰かのものならばな。てことで、聴いているだろう?マスコット大先生」
───皇斗の言葉と同時。
体育館の奥に姿を現したのは、一人の被り物をした男性───マスコット大先生だった。
「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン!!!」
「ちょっと、声が大きい!」
(怒られちゃいました、小さな声でお送りしま〜す)
「コイツ、脳内に直接ッ?!」
などと、くだらない会話を繰り広げたて、マスコット大先生は登場する。
「はい、通常の音量に戻しまして。なんでしょうか、森宮皇斗君」
「余は七不思議其の弐『トイレのこっくりさん』を辞退する。外に出してくれ」
「辞退して外に出すのは可能ですが...これ以降七不思議其の弐『トイレのこっくりさん』には参加できないですがよろしいでしょうか?」
「構わない。どうせ、今日でゲームはクリアさせられる」
「そうですか。まぁ、よろしいでしょう。では、森宮皇斗君は外に出れるようにしました」
「あ、あの...私も外に出れるようにしてください!」
皇斗が俺達が体育館を覗いている扉から外に出た後に、マスコット大先生にそう声をかけるのは智恵であった。
「外に出れるように───って、あれ?村田智恵さんは、どうしてここに?」
マスコット大先生は、驚いたような顔をして智恵のことを見ている。
「え、七不思議が始まった時は保健室にいたから...」
「あ、そうだったんですか。すみません、完全に確認不足でした。あれ、もしかして出れない感じ───というか、先程の発言を考慮しても完全に外に出れないんですよね」
マスコット大先生はそう口にする。
「はい、外に出れないです。ゴチンって頭を透明な壁に打っちゃって...」
「あのー...そのですねぇ...」
マスコット大先生は、焦ったようにして口にする。
「誠に申し上げにくいのですが...申し訳ない、七不思議其の弐が終了する時刻まで村田智恵さんは外に出れません」
「んなっ、どうしてですか!」
そう言って、智恵よりも先に驚いたような口調で聞き返してしまう俺。実際、信じられなかった。
「どうして皇斗は出れるのに...智恵は出れないんですか?」
「それは...こちらの設定の問題ですね。デスゲーム参加者以外は、学校の中に入れない───という感じになっているのですけれど、智恵さんは逆に最初から学校の中にいたために、学校の外に出れない───ということになっているのです」
「んな...その設定をどうにかすれば」
「それはできません」
「どうして!」
「その設定をなくすと、こっくりさんが放たれます」
「───は?」
「完全にこちらのミス───完全なアブノーマルによる特例中の特例なので話ますが、七不思議其の弐は四次元で管理しているのです。だから、智恵さんが外に出れることを認めてしまうとこっくりさんが校舎外に放出されてしまいます」
「んな...」
俺達は今からこっくりさんを倒しに行く。だから、放出されても問題ないようには思える。だけど、違う。
こっくりさんが放出されて、自由に移動できるようになってしまっては安全地帯というものが無くなってしまうし、七不思議に参加していないほかの人物にも影響が出てしまう。
そんなこと、デスゲーム運営側は許すわけ無いだろう。
「ですので、申し訳ないですが村田智恵さんにはデスゲーム終了まで校舎内にいてもらいたいのです」
マスコット大先生は、そう口にする。
「───その代わりにはなんですが、皆さんが策謀している四次元でのこっくりさん討伐は認めることにしましょう。誰を四次元に連れていけばいいのですか?」
───と、マスコット大先生は俺達3人が四次元でこっくりさんと戦闘を行うことは認めてくれるようだった。
俺は、智恵を助けるためにもこっくりさん討伐を行わなければならない。