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閑話 杉田雷人の過去

 

 杉田雷人───僕は、かなりの美少年だった。

 自分で言うのもなんですが、大切なことなのでもう一度。僕は、かなりの美少年だった。


 美しいもの───は、言い換えるのであれば「罪深いもの」であった。


「美しいもの=罪深いもの」という方程式が成り立っているということは、僕の人生は罪深いものなのである。


 ───これは、罪深い僕の罪深い人生の罪深い話だ。


 ***


「雷人君を、誑かさないでッ!」

「それはこっちのセリフよ!」

 僕の目の前で争っているのは、2人の女子生徒だった。


 2人は、美しい僕を巡って殴り合いにまで発展する喧嘩をしているのだった。

 僕の容姿に惚れ込んだ2人は、些細なことで喧嘩をして僕を奪い合っていた。


「ワタシが雷人君のことを先に好きだった!」

「でも、先に声をかけたのは私よ!」

「まぁ、まぁ...2人共」

「雷人君は黙ってて!」

「───」


 僕を取り合っている2人は、僕の言葉に全く耳を傾けてくれなかった。

 別に、僕はどちらかを特別愛しているわけでも、特別嫌っているわけでもなかった。


 僕はどちらも同様に平等に愛することができる。だけど、2人はそれが気に食わないようだった。

 勝利しても、僕から注がれる愛の量は変わらないというのに、独占欲の影響からか僕を取り合っていたのだ。


 負ければ僕からの愛は得られないのに。勝っても愛の量は変わらないのに。

 僕の目に映る2人は、何もかもが平等だった。


 2人共平等に愛しているし、2人共平等に愚かに思えた。



 ───結局、この問題は2人が僕に今後一切関わらないということで終わりを迎えたのだった。


 2人は、結果として僕の愛を受け取ることができなかったのだ。何もしなければ、僕から同量の愛を受け取れていたというのに、2人は僕からの愛を全て失ったのだ。


 ───と、どうしてこんな話をしているのか。


 この問題が発展して、僕は高校受験で男子校しか受けてはいけない───ということになったのだ。


 僕の容姿は罪深い。だから、高校でも似たような問題が起こらないように家族で話し合い、学校とも話し合った結果、男子校しか受けてはいけない───ということにした。


 男子校ならば問題ない、そう思っていた。

 相手が男子だというのであれば、問題ない。そう思っていた。それだと言うのに───。



「ざっけんじゃねぇ!クソ野郎!」

「お前の方だよ!」


 争い。争い。争い。


 女に飢えた男子校の男は、罪深い容姿を持つ僕のことで争った。

 容姿端麗な僕を、「さしあたり女子」ということにして、奪い合ったのだった。

 中学の頃にあった、女子2人が僕を奪い合った時のように2人は僕を奪い合うのだった。中学の頃と同じように、僕は争わずとも2人を愛することができるのに。


 僕は男なのに、女子ということにして争ったのだった。

 男子なら大丈夫───と考えた僕は愚かだったのかもしれない。


 今回は、女子同士のキャットファイトではなく、男同士の本気の殴り合い。拳と拳がぶつかり、椅子や机を投げ合って僕を奪い合った。


 ───結果として、2人は退学となった。


 教室の真ん中で殴り合ったのだ。まぁ、当然だと言っていいだろう。


 それから、僕は「姫」という形になった。男子校の姫。

 僕は、そこで特別扱いされることになった。全ての男子から可愛がられ、愛をもらった。


 だけど、それ以降は「ガチ恋勢」となるような殴り合いが行われることはなかった。退学者が出たことからも、皆色々と思うことはあったのだろう。


 ───これが、僕の人生だった。


 ***


 ───禁忌。


 そう、禁忌。

 杉田雷人という男は、禁忌であった。


 過度に触れると不幸がやってくる禁忌。ある一定のラインを超えると厄災がやってくる禁忌。


 杉田雷人は生まれながらにして「禁忌」という素質を持った人物であった。

 これは、茉裕の持つ「人を心酔させる体質」や深海ケ原牡丹の持つ「絶対に勝てない体質」と同じ体質と言えるだろう。

「〇〇する体質」と表すならばとなるだろう。


 そして、雷人は自分の持つ体質に気付いていなかった。


 ───だからこそ、雷人は死亡したとも言えよう。


 そう、雷人の持つ体質は「自分を愛した人物に不幸を撒き散らす」というものだった。

 雷人は、自分のことを愛しすぎた。だから、雷人は自分に「死亡」という不幸がやって来たのだった。


 もしかしたら、雷人が自分の体質に気付いていたのならば運命は変わっていたかもしれない。


 ───いや、雷人であれば自分が「自分を愛した人物に不幸を撒き散らす体質」であることに気が付いたら真っ先に自殺を選んでいただろう。


 雷人は優しいから、自分を傷付くのは望んでいない。だからこそ、彼は自分のせいで誰かが傷付くのなら───などという偽善的な理由で自殺を選んでいただろう。


 気付くのがよかったのか、気付かない方がよかったのか。

 どちらの方がよかったのかなど、誰にもわからない。


 ───だけど、一つ言えることがあるとするのであれば。


 どちらにせよ早くに死んでいた雷人の人生は非常に美しい───否、罪深いものであったということだろう。

判明している特異体質一覧


第5回デスゲーム

杉田雷人:自分を愛した人物に不幸を撒き散らす体質

園田茉裕:人を心酔させる体質


第3回デスゲーム

九条撫子:人の七つの大罪を見極められる体質

柊紫陽花:豪運体質

深海ケ原牡丹:勝利できない体質

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雨城蝶尾様が作ってくださいました。
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― 新着の感想 ―
[良い点] 男子校でも奪い合いになるとは!? 雷人、ある意味、今の時代に適した人材かも? と思ったら、これも能力の影響なのか! そして自分を愛しすぎて、禁忌の対象に。 なんかナルキッソスみたいですね!…
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