イフ・ストーリーは突然に 〜勝利の恋愛方程式〜
突然なイフストーリーです。
現在デスゲームが行われている三次元とは、別の三次元───パラレルワールドでの話しだと思ってくれると嬉しいです。
今回は、栄と愛香が付き合っている世界線でのお話。
10月初旬。
ワイワイガヤガヤと盛り上がっている俺達の学校の校舎で行われているのは、文化祭だった。
グラウンドには、焼きそばや綿飴・かき氷などの屋台が出ていて、校舎の中には様々な催し物がされていた。
俺は、クラスでの仕事が無い時間は恋人である愛香と一緒に学校内を周ることにしていたのだった。
「栄、早う行くぞ!」
「はいはい、わかったよ」
俺は、恋人である愛香に急かされて文化祭を周って見る準備をした。そして、愛香の隣を歩く。
俺よりも背が高い愛香は、人が溢れている校内でも目立っていた。
「人多いし、手でも繋ぐか?」
「却下だ。栄などと手など繋いでやるか」
偉そうな態度を取っているが、人が多いので恥ずかしくて俺と手が繋げないだけなのだ。随分と、可愛い。
「───2年4組、最恐!!お化け屋敷やってます!」
そうやって、手作りの看板を持って学校内を散策していた。
「お化け屋敷、どうする?でもまぁ、愛香は怖いの苦手───」
「妾を前にして最恐などと抜かすとは...愚かなのだな。最愚!!おとぼけ屋敷とでも名前を変えたらどうだ?」
「最恐」などという単語をすっかりと信じ込んでいる愛香。しっかりと、2年4組の手の上で踊らされている。愛香は、暗いのが苦手なのに、お化け屋敷に入るようだった。
あくまでも、「最恐」を謳っているお化け屋敷だからかなり怖く作られているだろうに、愛香は大丈夫だろうか。
「栄、行くぞ。2年4組に。怖くなかったら誹謗中傷してやる!」
「愚痴は聴いてやるから誹謗中傷はするなよ」
───そして、俺達は、2年4組の前までやって来る。
そのクラスの外装は、大量に御札が貼ってあり血濡れたような手形が何個も付けられたような外装だった。
「じゃあ、入ってみようか」
「───」
たまたま、その時間は空いているらしくすぐに入れるようだったから俺は入ろうと愛香を促す。だけど、愛香はその場で足を止めてしまう。
「どうした?もしかして、怖いのか?」
「い、いや!そんな訳無いだろう!ちょっと考え事をしていただけだ!」
「───強がらなくていいんだぞ?」
「強がってなんかない、行くぞ!」
そう言って、愛香は俺の手を引いて行く。そして、最初に説明を受けた。
「アナタは、屋敷に囚われてしまいました。封印を解くために屋敷の中にある赤いバラを拾ってきてください。そして、最後に祭壇があるのでそこにバラを授けた後に『神様、封印をお解きください』と口にしてください。そうすれば、外に出れます」
俺と愛香は、そうやって説明を受ける。色々と、設定を行っているようだった。
「それでは、いってらっしゃーい」
案内役はそう言うと、ガラガラと力強く入口の扉を閉める。すると、中はかなりの暗さになった。
目を凝らせば、辛うじて順路が見えるようなものだった。
愛香が、ギュッと俺の腕を掴む。そう言えば、愛香は暗所恐怖症だった。
「進もうか」
「あ、あぁ...ゆっくり進んでくれ」
天井から吊り下げられているすずらんテープや、どこかから流れているテレビの砂嵐のような音のする場所を通り過ぎる。
「───ひっ」
愛香が、小さく悲鳴を上げたのは、壁によりかかるようにして倒れている一人の人物だった。暗い中、ここで座るだけの仕事なのだろうけれど、それなりに怖い。
愛香は、ギュッと俺のことを手を掴みながらゆっくりその人物を跨いでいった。そして、数歩ほど進むと───
”ガタリッ”
「きゃあ!」
そんな音がして、先程跨いだ人物が立ち上がった。そして、ゾンビのようなゆっくりとして動きで俺達のことを追いかけてきた。
「嫌だ、嫌だァ!」
そう言って、愛香は俺のことを引っ張って先に進もうとする。入る前は強がっていたのに、やっぱり暗所恐怖症は治っていないようだった。
そして、俺達はその人物から逃げた先で赤いバラを手に入れた。
「栄、もうこんなところ早く出よう...最恐でいいから、早く...」
愛香が、そう口にしていたし俺達はそのお化け屋敷を早く出ることにした。テキパキと進み、俺達は暗室を抜ける。そして、ゴール直前の祭壇までやって来た。
「じゃあ、せーので言うか」
1m位の高さのあるボックスの上に、紙皿の祭壇が置かれていたので、そこに赤いバラを起き、約束の合言葉を言うのを愛香と確認する。
「早くしてくれ、妾は早くここからでたい」
「じゃあ、せーの」
「「神様、封印をお解きください」」
その言葉と同時───。
「ギャアアアアアアア!」
「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」
祭壇の下のボックスが、まるで宝箱のように開き、そこから出てきたのは鬼のお面を付けた人物だった。
俺と愛香は油断していたので、思わず叫び声を上げてしまった。そのまま、俺達は扉を開けて脱出する。
「怖かった...もう、お化け屋敷は嫌...」
愛香は、涙目になりながら俺に抱きついてそう訴える。まさか、祭壇の下が開閉できるようになるとは思わなかった。暗かったし、ゴール前だからと安心してしまっていた。
「───どうだった、愛香?」
「もう嫌、お化け屋敷なんかもう二度と入らない」
愛香は、そんなことを口にしていた。怖いのが苦手なのに強がっている、俺の可愛い彼女であった。
……っていうイフストーリー。
読者からの要望があって、俺が書きたいな───と思ったイフストーリーを突然にぶっこむかもしれません。
俺の趣味での作品だから、俺の好きなように更新が行われる!