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6月5日 その⑪

 

 俺達は、現在七不思議其の弐に参加している皇斗達と別れて、救護室に戻る。

 部屋にいるのは、先程学校の校舎まで行った俺と純介・愛香の3人だった。


「それで、俺達はこっくりさんの最終決戦に備えないとな」

「え、僕も戦うの?」

「純介は...どうしたい?」


 俺は、純介に問いかける。最初から、純介は「運動分野」が苦手であるために、七不思議の参加を拒んでいたのだ。ここで、こっくりさんとの戦闘に参加させてしまっては本末転倒だろう。

「純介はバトルに向いてないことは俺も知ってる。だから強要はしないよ」

「じゃあ...僕は戦わないでおくよ。ごめんね、力不足で」

「別に、純介が悪いだなんて思ってないよ。それに、変なことに首を突っ込まない方が俺は正しいと思う」

「そう...だね。僕も参加しないのは合理的だと思うよ。でも、それは友情に反することにならないかな?健吾や稜を裏切ることにならないかな?」


 純介は、そんな心配をしているようだった。俺は、そんな優しさを持つ純介を前にして、笑みを浮かべる。

「誰も純介を攻めたりなんかしないよ。純介の強さはその弱さだ。純介は弱いからこそ強い」


 弱さが強さ───一見したら、矛盾しているように感じるかもしれない。

 でも、矛盾はしていない。純介の「弱いこと」が純介の強みになっているのだ。だからこそ、純介のことを否定する人だったり呆れる人なんていない。

「それに、純介の本髄は言論での勝負だろ?拳ではなく言葉。そっちの方が、人道的にも正しいよ」


 ───そう、殴り合いである暴力よりも、話し合いによる対話の方が人道的に正しい。


 誰も死なないのだ。純介の解決法であれば、誰も肉体的には傷つかないのだ。


「───じゃあ...ごめん。栄の言葉に甘えるよ」

「その代わりだ、七不思議に参加していない人たちに慶太が生徒会であることを伝えてくれないか?」

「任せて、僕だってそれくらいはできるよ」

 そう言って、純介は「皆に話してくる」などと行って、救護室を出ていった。そして、俺は愛香と2人きりになった。


「愛香、俺達はいち早く休もうか。戦闘は今日の24時───明日の0時からだ。寝たほうがいいだろう」

「何を言っているのだ?」

「え?皇斗との約束で、今日が今日じゃなくなる時間にマスコット大先生に声をかけて四次元に移動するって約束した───」

「それは正解だ。妾が問うているのはそこではない。妾はいつ栄なんぞに協力してやると言った?」

「───え?」

「妾は、栄の味方をするつもりなどない」

「嘘───」

「たわけ、妾がそんなくだらぬ嘘をつくとでも思っているのか?妾は栄に協力しない。こっくりさんなどとは戦わない」

「なんで」


「なんで?陳腐な脳みそしか持たない栄に教えてやる。妾に利益が無いからだ。妾が智恵を助けて何になる?妾がこっくりさんを倒して何になる?何にもならないだろう?妾は協力しない。栄一人でなんとかしろ」

「そんな...」

 愛香という心強い味方がいてくれるから、戦闘に関しても安心だと思っていたのに───そうではないらしい。


 もしかしたら、俺は一人で戦わなければならないだろうか。時刻はもうすぐ20時を過ぎようとしていた。

 もうほとんど時間はない。メンバーを集めるならば、今すぐにだろう。


 愛香は協力してくれないし、皇斗は参加不可能だ。

 心強い稜と健吾も七不思議に参加してしまっているし、美緒や梨央・紬を戦闘に参加させるわけにはいかない。


 これまでのデスゲームで強力な味方になってくれていた鈴華や真胡・康太や美玲・奏汰もいない。

 もちろん、蒼や裕翔も七不思議に参加してしまっているので不可能だった。


「残っているのは...」

 信夫や時尚だろうか。でも、彼らが協力してくれるかはわからないし、信夫がラストバトルで戦力となったのは相手が人間だったからだろう。人間甘言(にんげんかんげん)唯々諾々(いいだくだく)が、マスコット先生に───正確には、俺の父親である池本朗に従順であったために、信夫のことを相手してくれていたのだ。


 そして、多くの女性陣は戦闘に参加させることはできない。俺より弱い人は、正直戦闘メンバーにしても意味がないからだ。


「なら...」

 現状、七不思議に参加していなくてこっくりさんという怪物に立ち向かえるような俺よりも強い人物。


 ───その条件に当てはまるのが、1人だけいた。


「愛香が協力してくれないのなら、俺は別の人を仲間にする」

「ほう、面白い。誰を仲間にするというのだ?」

「俺が仲間にするのは、この人だ」




 ───そして、俺達は場所を移動し。


 その人物のいる寮まで移動し、俺は七不思議其の弐の概要をザッと話して、四次元でこっくりさんと戦闘することを話した。


「お願いだ、俺と一緒にこっくりさんを倒すのを手伝ってくれ」

「アタシは別にいいよ」

「でも、問題点は2人きりだってことなんだ」

「アタシはいいよ、2人きりで。そっちの方が、悲鳴を堪能できる」


 俺が声をかけるのは、愛香と同じチームHの歌穂であった。俺は、愛香の前でそんな勧誘をする。


「ありがとう、歌穂。愛香は協力してくれないから一人で行くのかと思ったけれど、歌穂がいてくれるなら安心だよ。一緒に頑張ろう」

「わかったよ、栄。一緒に頑張ろうね、()()()()()


「栄」

「何?愛香。愛香は仲間に入ってくれないんだろ?用はないだろ?」

「───いれてくれ...」

「何に」

「仲間に、妾も入れて...2人きりは...見ていてムカムカする」

「どうして愛香が」

「───うるさい。気が変わった。協力してやると言っているのだ。妾の気が変わらぬ内に素直に受け入れたらどうだ」

「じゃあ、わかった。仲間にいれてあげるよ」


 ───こうして、歌穂と愛香を仲間に引き込むことに成功したのだった。

負けヒロイン愛香、智恵のことはどうしようもないけど歌穂にまで負けるのは嫌なご様子。

何だよコイツ、可愛い野郎め!!お前の恋は実らねぇよ!!

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雨城蝶尾様が作ってくださいました。
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― 新着の感想 ―
[良い点] 負けヒロインにもプライドはある。 だから愛香頑張れ! 確かに可愛い野郎め! ……ですね!
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