6月5日 その④
鈴華・美玲・皇斗が出ていった教室。
「しょうがない...僕達も早く行こうピョン...」
「いいのか?蒼」
「別に、無くなったことを悔やんでいても何も生まれないピョン。どうにかこうにか代用してみるピョン」
「それならいいんだが...」
「んじゃ、行こうぜ!幸い、囮はアイツラがやってくれたんだからよ」
「囮って言い方に俺は満足していないんだが...そうだな」
───そんなことを話して、康太・蒼・裕翔も出ていった。
「稜、オレ達も行こうぜ?」
「そうだな。そうしよう」
───そして、稜と健吾の2人も教室を出ていく。
───と、ここで少し駄弁を挟みたい。
これから行うのは、一見世界観を壊しかねない発言だ。これが「漫画」だと「小説」だと「アニメ」だと───総じて「物語」だと「創作」だと「虚構」だと思わせてしまうような発言だ。
苦手な方はご遠慮いただきたい───というメタ発言は避けた方がいいだろうか。
決して苦手だろうと、避けずに一字一句しっかり目を通してわざわざこのような駄弁を本文の中に含んでいるのかを考察して読んでいただきたい。
このような注釈をも含めて物語なのだ───などと、物語であることを肯定することはない。
だけど、かの有名な司馬遼太郎先生の「竜馬がゆく」の合間にも司馬遼太郎先生の話が含まれることがある。
それ故に、ここでの注釈も許していただきたい。
この駄弁は、ドキュメンタリーの解説───ということにしておこう。実際、間違いではない。
───と、駄弁の駄弁をしてしまった。
閑話の中で閑話休題という言葉を使うとは思っていなかったが、仕方がない。
駄弁の駄弁を終えて、駄弁に突入する。導入の導入を終えて導入に突入する。
と、言うのもここから大切なのは「視点」の話である。
この話は、基本的に「我らが主人公池本栄の一人称視点」と「それ以外の人物に重きを置いた三人称視点」という形で構成されている。
極稀に、過去回想で主人公である栄以外の人物の一人称視点が繰り広げられることもあるが、それは例外だ。
今回、栄は七不思議に参加していない───参加できていないために、その性質上三人称視点ということになる。
だが、その三人称視点の内に誰に注目して話を紡いでいこうか───という話だった。
生憎、今回の七不思議には主人公の栄も、第二の主人公である誠も、栄のライバルである靫蔓も、ヒロインである智恵も、負けヒロインである愛香も参加していない。
そのため、誰かに視点を固定する───というのが難しいのだった。
言ってしまえば、他のキャラクターにカメラを固定すべきほどの力がない───ということになるだろう。
もちろん、スピンオフが作られればこの中にいる誰かが主人公になる可能性だってあるだろう。だけど、これは本編なのだ。
この中に生徒会メンバーがいるとしても、その人物は「生徒会メンバー」である時しか注目はされない。
だから、「クラスの一員」として生きている生徒会メンバーは、今現在は注目されることはないのだった。
皇斗も素晴らしい才能を宿しているけれど、彼の偉大さが理由で視点を寄せ付けようとしない。これはなろう小説の世界じゃないのだから、チートキャラが無闇矢鱈にカメラが向けられる訳ではないのだ。
もしかしたら、今現在七不思議に関係するゲームで一番カメラを向けやすいのはマスコット大先生なのかもしれない。だけど、彼は秘密を抱えすぎているし、何より彼は七不思議に参加していない。
だから、彼にカメラが向けられる可能性はほぼ皆無に等しかった。
「───と、そうですね。誰に注目するか困っているのであれば全員に注目してしまえばいいじゃないですか」
地の文に干渉してくるマスコット大先生。だけど、これはメタではない。
「四次元から皆を見ればいいのですよ。安全圏から、全員を観察するんです。一人を選べないのならば、全員にカメラを付ける。それならば、問題ないはずです」
マスコット大先生の───否、GMの提案。折角だし、その提案に従うことにしよう。
───と、言うことで七不思議其の弐が行われている間は、視点移動が激しくなることを伝えておく。
群像劇は安っぽくさせてしまうが、致し方ないだろう。最初から、この文章に価値など付けるつもりなどないのだから。
───こちらは、教室を恐る恐る出てきた稜と健吾の2人だった。
2人は、皇斗と同じく1階へと向かっていった。2人の目的は、体育館の入口に向かっていったのだった。
「体育館の近くにいれば襲われたとしても自分を囮に鳥居を潜らせることができるんじゃないか?」
そんな考えを稜に話す健吾。だけど、こっくりさんが「鳥居のことを嫌ってる」可能性だって考えられる。
まぁ、「暴走」という言葉を前にして「好き嫌い」という理性を交えた感情が現れるかはわからないけれど。
「そうかもしれないな。少なくともA棟4階からとB棟1階じゃ難易度が大きく違うっぽいね」
───そんな話をして、見えない怪物に警戒をしながら稜と健吾の2人は体育館前に辿り着いた。そこにあったのは、神社にありそうな少し古くなっている鳥居であった。
「これが...ゴール」
稜と健吾は、そのゴールになるであろう鳥居を潜って体育館の中へ入っていく。そして、体育館がこっくりさんが入ってくれない実質的に安全地帯であることを理解したのだった。
世界観を壊す(壊していない)要素
・作品の途中に入る脚注
・この物語を「小説」と意識させるような文章
・地の文に干渉してくるGM
・「小説家になろう」で連載されているのに他のなろう小説とは違うと思わせるような一文
・書籍化へのアンチテーゼ
・要素がまとめられている後書き