6月5日 その①
───数日程、時は流れて6月5日がやって来る。
マスコット大先生の言葉の通り、学校が再開した週の金曜日───要するに昨日(6月4日)には、第6ゲームが行われることなどなかった。
来週は第1回試験が行われるので、第6ゲームは6月18日───ということになるだろう。
───と、こうして土曜日の本日にこうやって何かを話しているということは、土曜日に話すべき大切な情報があったからであった。
───そう、5月に行われた其の壱では、皇斗がものの2時間でクリアしてしまったので印象に残っていないのだけれど、しっかりとしたデスゲームである七不思議の其の弐が本日行われるのだった。
その印象の薄さから、覚えている人も少ないと踏んで、再度説明することにした。
まず、七不思議は月ごとに内容が変化して、その名の通り7つある。行われるのは、毎週の休日───土曜日と日曜日に行われている。
ちなみに前回は、七不思議其の壱は『20cmの高揚感』というタイトルだった。
それと、この七不思議において一番重要な点は、強制参加ではないということだった。
参加は任意だけれど、クリアしたら12万コインという大きな報酬が貰えるのだった。
また、これはチームを組むこともできるので、仲間と協力することも可能だった。
───と、従来のデスゲームとは一味違った側面を持つ七不思議。
今回、その七不思議の中で事件が起こる───。
***
18時に開始を迎える七不思議を、今か今かと待ち望んでいる人物達は、17時50分から、学校の校門前で待機していた。
その人混みの中には、前回優勝して12万コインをたった一人で獲得した森宮皇斗だったり、このクラスのリーダーのような存在である康太、それと同じチームとして参加する裕翔や蒼などの姿もあった。
一方で、現在も救護室での生活を余儀なくされている栄の姿は入ってこなかった。
「───と、康太達もまた参加するのか」
そこにやって来たのは、栄も所属しているチームCの寮の稜と健吾の2人だった。
「あぁ、12万コインには目が眩んじゃうからな」
「栄はまだ入院中だピョン?」
「あぁ、明日の昼には帰ってこれるらしいけれど...」
「栄は貧弱だな。オレなら、3日もあれば治してやるのによ!」
蒼の質問に稜が答え、その答えを聴いた裕翔が栄のことを揶揄する。
稜は、それを聴いて眉をひそめたものの、言い返したりはしなかった。
「純介は来ないのか?」
「前回みたいな運動系は苦手だから参加しないんだってさ」
「そうか。まぁ、それも一つの判断だしな」
「おいおい、割と人が集まってんじゃねぇか!」
更にやって来たのは、鈴華と美玲の2人だった。
「今回は監禁のこととかもあって人が少ないと思ったけれど...負けてられないわね!」
そう言って、やる気を見せる美玲。
───その後、他にも数人がやってきて結果として以下のメンバーが集まったのだった。
1.安土鈴華・竹原美玲
2.安倍健吾・山田稜
3.宇佐見蒼・中村康太・渡邊裕翔
4.柏木拓人・東堂真胡・山本慶太・結城奏汰
5.森宮皇斗
合計12人が、今回の七不思議の参加者になることが決定した。そして、学校の入口の方向から歩いてやってくるマスコット大先生。
彼の悠長な足取りを、その場にいる12人は静かに見守っていた。20秒ほどで、皆の前にまで辿り着いたマスコット大先生は、口を開く。
「皆さん、お待たせいたしました。今回のルール説明は、前回と違って教室で行いますので教室に移動しましょう」
マスコット大先生の指示に従い、12人のメンバーは自分達の教室へ向かうのだった。
「マスコット大先生、どうして今回は教室なんですか?」
「校内で行うゲームだからです。まぁ、外は使用しないので最初から中で始めたほうがいい───そんな感じですかね」
前回の七不思議に参加した康太は、今回教室で説明を受けることを疑問に持ったので質問していた。
マスコット大先生は、康太のその純粋な質問にいつもと変わらない口調で答える。
そう、前回の七不思議其の壱は、マスコット先生が用意した別の空間で行われたのだ。だから、今回もそのようなものを覚悟していたのだろうけれど、どうやら違ったようだ。
今回の七不思議は、校内で行われる。ルール説明の前に与えられた情報はそれだけだった。
───そして、靴を履き替えて上履きになった稜達は、そのまま2階の教室へと向かっていった。
「どこに座って頂いても構いません。どこかにお座りください」
マスコット大先生がそう口にすると、それぞれが椅子に座り始めた。教室の机の配列は変わっていないので、横に5列・縦に6列といった感じだ。
だけど、本日は12人しかいないので、白板の前に集中したような形になる。
最前列は、廊下側から山本慶太・東堂真胡・森宮皇斗・宇佐見蒼・中村康太。
2列目は廊下側から柏木拓人・結城奏汰・安倍健吾・山田稜・渡邊裕翔
そして、3列目の廊下側から2列目に安土鈴華が、その左隣に竹原美玲が座った。
「───皆さん、着席していただきありがとうございます。それでは早速ですが、七不思議其の弐を発表しようと思います」
マスコット大先生の言葉に、皆が唾を飲み込む。
「七不思議其の弐のタイトルは───『トイレのこっくりさん』です!」
マスコット大先生の口から、七不思議のタイトルが発表される。
───これにて、七不思議其の弐『トイレのこっくりさん』は幕を開けた。