6月1日 その③
「───席替え?」
学校生活で定期的に行われる嫌なことが定期試験だとするのであれば、学校生活で定期的に行われる良いことは席替えだろう。
「はい、席替えを行おうと思います。このクラスで学校生活を初めて早くも2ヶ月が経ちました。随分と早いですよね。2ヶ月って。ん?なになに?もう1年経ったって思うほど長かった?流石にそんなには経ってませんって。と、まぁ色々長かったですが席替えを行っていこうと思います」
「先生、席はどんな風に決めるんですか?」
「おっと、中村康太君。活きが良いですね。そうですね、席はどういう決め方がいいですか?ここは古典的にくじ引きで決めましょうか?それともやっぱり自由にしてみます?」
マスコット大先生はそう言うと、席替えの手段を決めようとしていた。
「───と、そうですね。皆さんに好きな決め方を聴いても十中八九自由になりそうですし...授業中に策謀を練られても困るんですよね。まぁ、この学校に授業なんて無いのですが」
「じゃあ、自由でもよくないですか?」
「私はそれでも構いません。ですが、現在保健室にいる村田智恵さんだったり救護室にいる池本栄君だったり、とある場所に生徒会の手によって監禁されている園田茉裕さんや綿野沙紀さんのこともありますからね...」
マスコット大先生も色々と考えているようだった。
「4人休んでいるのに自由で決めてしまっていいのか───などと思ってしまうのです。それで尚自由がいいのであれば自由でいいのですが...」
そう言って、マスコット大先生はコッソリと透明なコップのような器を取り出す。その中には、数十本の割り箸が入っていた。
「自由にしますか?私、夜なべしてクジを作ってしまったのですが...」
「じゃあもうクジにしましょう!作ったクジを使って欲しいんでしょう?」
マスコット大先生がメソメソとクジを取り出しては使って欲しそうにしていたので、康太はそう声を張り上げる。
「いや、いいんです!いいんです!皆さんが自由がいいのなら私は全然。自由にしてくださいよ!」
「面倒な謙遜だなぁ...」
「えぇー、クジ使いたいんですか?本当にしょうがないですねぇ...」
「面倒な教師だなぁ...」
前者は美玲のツッコミ、後者は健吾のぼやき。
「───では、クジでよろしいですか?折角用意したので使ってもらいたいんですよ」
「はいはい、わかりました」
───と、言うことで結果としてマスコット大先生のゴリ押しによってクジを使用することが決定した。
*現在の座席表*
「───と、そうですね。既に死亡してしまっている小寺真由美さん・杉田雷人君・松阪真凛さん・橋本遥さん・平塚ここあさん・三橋明里さん・睦月奈緒さんの7人の席はもう撤去してしまっても構いませんから...そうですね。現在空いている秋元梨花さんの席の前にもう1席追加して一番窓側の山本慶太君・結城奏汰君・渡邊裕翔君・綿野沙紀さんの席を撤去してしまいましょう。残る4席は...そうですね。一番最後尾の佐倉美沙さん・東堂真胡君・細田歌穂さん・山田稜君の机も撤去しちゃいましょう。佐倉美沙さんか山本慶太君のどちらかは、秋元梨花さんの前まで席を持ってきちゃってください」
マスコット大先生がそう指示を出す。
まぁ、ここまで長々とマスコット大先生によって指示が行われてきたけれど完成形としては横に5列縦に6列の合計30席が残されたのだった。
休んでいる人物を含めて、現在の生存者は30人とマスコット大先生から宣言されているので人数的には丁度良い。
「では皆さん、クジを引いてください。私が今から白板に座席表と数字を書きますので、引いた番号と一致するところに座ってください。それと、休んでいる人の1つ前の人が、休んでいる人の分のクジも引いてください。1個目が自分ので、2個目が休んでいる人のです。出席番号順に引いていってください」
マスコット大先生が、長々とそう指示をして吐く版に合計30個の四角を書き始めたのであった。
その間に、教卓の上に置かれているクジを秋元梨花・安土鈴華・阿部健吾───という順番で匹始めるのであった。
「アタシ13番だった。鈴華は?」
「オレか?オレは29だったぜ」
───と、席替えが始まると楽しいムードに包まれていくのであった。
───そして、数分も経たないうちにクラスの全員がクジを引き終えた。
「はい、では皆さんクジを引き終えたようですね。私も白板に四角を30個書き終えました。上が白板側として考えてくださいね。これから、ランダムに番号を書いていきますので、そこに座っていってください。よろしいですね?」
そう言うと、マスコット大先生がランダムに番号を書いていく。そして、席替えは完了した。
「では皆さん、番号が書かれている席に移動してください!休んでいる人の分を引いた人は、私の方に伝えに来てくださいね!」
マスコット大先生の言葉が言い終わると同時に、教室にいた全員がワラワラと動き出す。
───そして、完成した座席表は以下の通りであった。