6月1日 その②
栄や智恵などが一部の人物が登校できていない状態でも、学校で話が進んでいく。
教室に入ってきたのは、一人の人物───学校の売店で特殊アイテムを売ってくれているマスターだった。
「本日も、売店で扱うことになったNEWアイテムを紹介しにここまでやってきたんや!せやから、耳の穴かっぽじってよう聞いていってくれや!」
マスターは、そう口を開いて白板の前に立ち教室を見回した。
「───そんじゃ、今日の商品を紹介するで!今日のは、こちらや!」
そう言って、取り出されるのは単3の乾電池のような形をした物質だった。
「小さいから、あんまし見えへんやろうけど、まぁええ。別にこれはそんな難しいもんじゃないから問題ないわ。工程も一つだけやしな」
「すみません、マスター。その商品名はなんですか?」
そう質問するのは、康太だった。商品名を聞かされて無いのに商品を紹介されても困ってしまうだろう。
「そうやった、そうやった。まだ商品の名前を発表してあらへんかったな」
マスターはそう口にした。そして、こう続ける。
「この商品───その名を、禁止行為チェンジャーという!」
マスターは「禁止行為チェンジャー」という名前を告げる。その名前から察せられるに効果は禁止行為を交換する───と言ったものだろう。
「ほんなら、この禁止行為チェンジャーの説明をさせていただきますわ。この禁止行為チェンジャーは、心の中で『使用したい』と念じながら任意の人物のことに触れれば、禁止行為を入れ替えることが可能なんや。まあ、自分と相手の禁止行為をチェンジする───って代物だわな」
そのまま、マスターは説明を続ける。
「逆にや。心の中で『使用しない』って念じながら行えば、『使用する』って口にしたってこの禁止行為チェンジャーを見せびらかしたって発動することはあらへん。要するに、心だけが原動力なんや。それと、頭のいい君達は色々と画策してるようやけどな、残念なことに生徒会に使用したってあんまし効果は無いんや。生徒会の元々もっていた禁止行為と交換する───って感じになるだけで、使用した人に禁止行為がなくなる───という訳じゃないんやで」
マスターの言う事への補足説明だ。
校則の第10条には以下のことが書かれている。
『生徒会は、自らに設定された「禁止行為」がなくなる』
生徒会には、一応「禁止行為」が定められていたが、それが無くなっている状態なのだ。
そこに禁止行為チェンジャーを使用したとしても、前に定められていたその禁止行為が、禁止行為チェンジャー使用者のところにやってくるだけで、生徒会メンバーに「禁止行為」を新たに授ける───という技はできないのである。
もし生徒会メンバーにも禁止行為を授けたいのであれば、この校則を撤廃させるところから始まるだろう。
そもそも、生徒会メンバーを禁止行為で殺すなどと言うまどろっこしい行為をする人なんかいないだろう。肉弾戦で殺した方が余程手っ取り早いはずだった。
生徒会メンバーの、偶然を装った死を作りたいのであれば別だろうけれど。
───というか、そもそも生徒会メンバーに禁止行為チェンジャーを使用する理由は「自分の禁止行為を無くそう」と画策しているような人物だけだろう。でも、マスターの説明によりその策謀は全くの無意味になってしまった。
この禁止行為チェンジャーの使用方法としては、何か悪意のある禁止行為を自分から相手に移すと言ったものだろう。
「お値段は10万コインやから、皆様奮ってお買い上げしてほしいんや───と言いたいんやけれど、マスコット大先生曰く、皆お金が無くて大変や言うてるようやからな。俺は決めたんや。俺は皆に優しくしたいからな。出血大セールでもええ、せやから俺は次のゲーム───いや、七不思議其の弐の優勝賞品として、この禁止行為チェンジャーを授けることにしたんや!」
マスターは、そう宣言する。
先程、マスコット大先生も言っていたように、七不思議其の弐を行うようだった。
そこへの期待が高まる一方で、どのような物が来るのか───と不安に思うようなことも多いだろう。
「ほな、俺からの話は以上や。バイナラー」
そう言って、帰っていったマスター。そして、再び教壇の上に立ったのはマスコット大先生だった。
「というわけで、売店に新しい特殊アイテムが発売されたらしいのでね。よろしくお願いします」
マスコット大先生はそう言った後に、新たな話題を用意した。
「あ、それとですね。来週の6月9日・10日・11日は第一回試験を行います。9日10日は、基本的な学力を問う筆記試験を、11日は寮のチームごとに分かれた試験を行いますのでよろしくお願いします」
マスコット大先生は、そう言って「試験」の存在を明らかにした。
「ですので、次回のゲーム───第6ゲームは、6月18日は予定していますので!」
今後の予定を、そうやって述べたのだった。
「では、皆様。学校らしいことをしましょう。そう、席替えです」
───マスコット大先生の言葉により、席替えが行われることが決定したのだった。
席替え、ちゃんと乱数を使用します。