6月1日 その①
───6月1日。
現在、救護室や保健室入院している栄や智恵だったり、生徒会に監禁されている───いや、もう隠す必要はないので、生徒会の茉裕やそれに付き従っている沙紀の2人など、チラホラと欠席が目立つ中、修復工事を終えた校舎のA棟2階に存在している『3-Α』の教室に集められたのは現在のデスゲームの参加者だった。
2週間の休みを終えて、デスゲームが再開することもあり場に緊張が走っている中でも、ある程度の喧騒に包まれていた。
もちろん、デスゲームの開始を嬉々としているざわめきではない。デスゲームとは言えど、彼らも学生。
学校生活を、どこかしらで楽しんでいるのだ。
しかも、ここに集まっている彼らは何かしら悲しき過去を持っている人物も多い。知り合いがいないことからも、その悲しき過去を忘れて楽しめる人もいるようだった。
いつもは陽気で声がデカい信夫だって、人を殺してしまった───という過去があるのだし、ほとんど全員が過去になんらかのしがらみがあると言ってもいいだろう。
もちろん過去回想が「何もない」人物もいるのだけれど。
「───と、皆。聴いてくれ」
教室の前方にあるホワイトボードの前に立ち、教卓に手をついたのは一人の、このクラスのリーダー的存在である康太であった。
「もうお気付きの片はいるようだけど、一昨日栄が沙紀に襲撃された」
「───な、なんやって?」
先程とは違った形で教室にどよめきが走る。
「栄が襲撃されて、栄と智恵の2人が負傷した。でも、命に別状はないから安心してくれ。それで、栄が考察していた通りに沙紀が生徒会メンバーであることが確定した」
そう言って、康太はチラリと皇斗の方を見る。
きっと、この目配せは「茉裕は生徒会である」ということを言わない───というものだろう。
救護室で、7人が集まり話し合いをした内容は「黙秘」という命が皇斗から出ている。生徒会側に情報を与えないためだ。
あくまで、沙紀に全ての焦点を当てて茉裕は「無罪と見ている」と生徒会に考えさせて、油断させたところを捕らえる───という作戦だ。
「次から、沙紀に出会う時は気をつけてくれ。武力行使を行われる可能性もある」
康太は、そういう事で話をまとめる。丁度、その時だった。
「ガラガラガラガラ」
聞き覚えのある声。扉を開ける音を、口で言って入ってくる教師など、この世に───いや、この三次元にこの一人しかいないだろう。
そう、マスコット先生改めマスコット大先生である。
「中村康太君、自分の席にお座りください。そこは私の立つ場所ですよ」
「わかりました」
そう言って、康太は自分の席へ戻っていく。沙紀のことを伝えられただけでも、大きな進歩だろう。
「はい、皆さんおはようございます。2週間ぶりですね」
そう言って、マスコット大先生は挨拶をする。
「2週間、皆さん何をして過ごしたでしょうか?デスゲームから解放されて、楽しむことができたならば幸いです」
夏休み明けのような挨拶を行うマスコット大先生。
「───と、そうですね。ここから事務的な報告が色々とありますのでよろしくお願いします」
マスコット大先生はそう言うと、ペコリと礼をした。マスコット大先生に変わった───と言われても、黒いローブを身に纏ってるという格好が変わっただけで、声も被り物も態度も全く変わらないので、大きな変化は感じ取れない。実際、中の人物は池本朗として変わっていないのだから変化は少ないのだけれど。
「まず、名簿を作り替えました。出席番号は変えておりませんが、現在生存している人物だけの名簿を用意しました」
そう言って、マスコット大先生は名簿をペラリと取り出す。
「まぁ、皆さんにはほとんど関係ないことですよね。名簿なんて」
マスコット大先生はそう言うと、もう一つの紙の束を取り出す。
「そして、こっちが新たな校則です。色々と変わっておりますので、是非とも目を通しておいてください」
栄が、100万という大金を皆からかき集めて半ば撤廃するような状態にした。
だから、新たな校則が追加された。
「もう、皆さんで校則は変更できませんのでよろしくお願いします。生徒心得も一部変更していますので、目を通していただけると嬉しいです」
マスコット大先生はそう声にした。
「───それとですね。毎週金曜日にはゲームを行っていましたが、今週はお休みさせていただきます。申し訳ないですね、こちらも色々と忙しくて」
マスコット大先生はそう口にした。
「その代わり、今月の毎週末は七不思議を行わせていただきます!皆さんが浪費してしまった大金が手に入るチャンスですので、皆さん是非とも参加していただけると思います!」
前回の七不思議は、皇斗が数時間ほどでクリアしてしまった。なので、5月1日時点で終了してしまっていたのだ。
前回の反省を生かして、マスコット大先生は色々と調整していたようだった。
「それとですね。金欠の皆さんには関係ないでしょうが、一応ご紹介です!マスター!」
「言われて飛び出てジャジャジャジャーン、印象に薄い売店のマスターやで!」
教室の扉に入ってきたのは、売店のマスターだった。また、新商品を持ってきていたのだろう。