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4月2日 その⑩

 

 俺達は、保健室の外に出てB棟の一番奥の部屋にいく。


「ここは、図書室です。日本で出版された本であれば、電子書籍の状態で全て読むことができます。実物の紙面で置いてあるのはその中のほんの一部ですね。現代で、有名なものを引っ張ってきました。」

 図書室と言われた空間は、教室1.5個分ほどの広さしかなかった。だが、入口から見て左側には階段が見えた。


「この学校の図書室はかなり広いです。B棟のこの場所は、縦一列全て図書室となっております。即ち、この部屋と同じ広さのスペースが、私達の天井の上に3つ広がっているということですね」

 4階まで、図書室が広がっているという驚き。本の場所を探すのに、何度も階段を上り下りしないとならないのは大変そうだ。


「図書室では、もちろん本を借りれます。貸出期間は1週間。3冊まで貸出は可能です。まぁ、電子書籍版は、無料でダウンロードできるので実物の紙にこだわりがないのであれば、電子書籍をオススメします」

 マスコット先生は、そのまま電子書籍の説明を始める。


 どうやら、スマホにダウンロードすることができるらしい。スマホアプリである「帝国大学附属高校」の「ショップ」からダウンロードが自由にできるみたいだ。小説から新書。ラノベに漫画に雑誌・辞書に図鑑まで。

 日本で出版された本なら何でも読めるようだ。国立国会図書館のような規模の大きさに驚いたが、GMの力がすごいことに若干の慣れがやってきてしまった。


「おっと、伝え忘れるところでした。図書館の入口は、ここ1階と3階にしかございません。つまり、2階と4階───偶数階に図書館の入口はございませんのでご注意ください。開室時間は平日の朝7時から17時となっておりますので!」

 そう言って、説明を終えた。


「それでは、一度図書室を出て2階に行きましょう!」

 俺達は、先生に連れられて2階にまで移動する。2階には店があった。


「お、オタクら来たんかぁ?」

「へい、マスター!やってるかい?」

「あぁ、オタクらが来ることを首を長くして待ってたぜぃ!」

 店の中にいたのは、マスコット先生と全く同じ被り物をした人物だった。同じ被り物をしているが、着ているものは違うし頭にハチマキを巻いている。


「こちらが、この学校の売店となっております」

「オタクら、よろしくな!俺は、売店のマスターや!」

「「「よ、よろしくお願いします...」」」

 俺らは、マスターと名乗るマスコット先生と同じ被り物をした人物に若干困惑しつつも、挨拶を返す。


「俺の店では、皆が欲しがるような必需品とかを売ったりするわ!たまに、新商品を入荷するかもしれへんから楽しみにしておくんやで!」

「そうだ、マスター。売店のみ販売されてる特殊アイテムがあるんでしょう?」


「あぁ!そうやったそうやった!これも、皆に紹介しておかんとあらへんな!皆、スマホっちゅう道具持っとるんのやろ?それで、最近は買い物ができるんやが、そのスマホっちゅうもんで買えへんもんもこの売店では扱っとんのや。今は、これから紹介する1個しか、その特殊な商品はないんやがこれからドンドン増えていく予定やから、よろしくな!」

 マスターと呼ばれた、売店の店員はしゃがみ込み何かを探している。


「今日紹介する商品はこれや!」

 マスターは、一枚の紙切れを取り出す。その紙にはトランプのような模様が書かれていた。だが、その模様は王や王女・貴族などではなく西洋の鎧を着た人物だった。言うならば、ナイトだろう。


「この商品の名前は夜の騎士(ナイト・オブ・ナイツ)や!あ、音楽の方やないで?今から、この夜の騎士(ナイト・オブ・ナイツ)の効果を説明していくで!気になったら、買ってくれよな!」

 マスターは、その紙切れを見せびらかす。


「この紙の裏に、守りたい人物の名前を書くと一度だけ禁止行為を行っても守られるんや!つまり、この紙に名前を書かれた人は、()()()()禁止行為を犯しても死なないっていう訳だな!」

「───ッ!」

 俺達生徒の間で、ざわめきが走る。これに名前を書けば、自分自身の保身になる。


「ちょっと、ちょっと!皆、注目!まだ、説明は終わってないぞ!」

 すぐに、ざわめきは収まり皆は、マスターの方を見る。流石は、天才を集めた学校だ。

 それぞれがざわめいていても、自らに利のある話には必ず耳を傾ける。他人の妨害をしようだなんて、小賢しい真似はしないのだ。


「この商品、購入者が自分自身の名前を書いても効果は発揮せぇへんねん!これを買った人以外の誰かやないと駄目なんや!購入者は、自分が守りたい人物の名前を書きな!例えば、同じチームの信頼できる仲間だったり。例えば、惚れた異性やったり」

 夜の騎士(ナイト・オブ・ナイツ)が自らに使えないことを知る。自らの命を賭けたデスゲームで、誰かの命を守る。それも、自らの金を使って。


 ───いや、誰かに買わせて自分の名前を書かされば自分を守ることができる。


 お互いに、お互いの名前を書くように約束して書けばお互いを守ることができるのだ。


「この、夜の騎士(ナイト・オブ・ナイツ)。禁止行為を行った場合、夜の騎士はその日の終わりにビリビリに破れるんや!つまりは、禁止行為を行った日の23時59分59秒やな。それにこの紙が破れる前に、二度目の禁止行為を行った場合、騎士に守られている人は死ぬ!だから、一日に2回も禁止行為を犯すなってことや!あ、オタクらは頭がいいからこんなことも思いつくんやろうな。『なら、何枚か名前を書いてもらえばいい』って。でも、それは駄目なんや。この紙を複数枚購入し、名前を書いても一日に守られるのは一度のみなんや。だから、複数人に自分の名前を書かせても結局2度禁止行為を犯してしまえば死ぬ!禁止行為を犯して、夜の騎士(ナイト・オブ・ナイツ)がビリビリに破れた後に誰かにまた名前を書いてもらえば効果は発揮するけどな!後、燃やす、破るなどを行うと効果がなくなるから気をつけてな!」

 マスターの、説明が終わる。大切な誰かを守るための夜の騎士(ナイト・オブ・ナイツ)。皆と協力して自らを守るのがいいだろう。


「さて、お値段は5万コイン!欲しい方はここ売店までお越しください!」

 5万コインとなると、5万円だ。想定以上に高いが誰かの命に比べれば安いだろうか。

マスター、関東人。

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雨城蝶尾様が作ってくださいました。
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