5月28日 その③
奏汰が杉田雷人と園田茉裕・三橋明里・綿野沙紀の計4人の死亡及び行方不明を伝え終えたその時だった。
「茉裕はまだ生きてる」
そう口を開いたのは、茉裕と同じチームBである鈴華だった。
「鈴華、本当か?」
「本当だ!だってよ、神が死ぬわけ無いだろ?」
「───神?」
鈴華の言い分に、奏汰は聞き返す。
「あぁ、茉裕は神だ。だから、簡単に殺されたりなんてしない!」
鈴華の、俺達には理解できない言葉。俺には鈴華が「茉裕は神」と言うわけがわからなかったが、彼女の中には何かがあるのだろう。
「鈴華、僕は君の言う神の意味が一切わからない」
「それ以上でもそれ以下でもない。神は神だ」
「神っていうのは、神話の?」
「天啓をくれる神だ」
「天啓...か」
「あぁ。茉裕は大体のことはわかっているし、彼女に従っていれば間違えない。茉裕は正しいんだ。だから、誰かに殺されることなんて無い」
鈴華は、どうやら絶対的に茉裕を信じているようだった。
鈴華は、宗教のようにどっぷりと茉裕に浸かっているようだった。何が起こっていたかはわからないけれど、彼女が騒いだ要因は、茉裕に対する信仰心だろう。
「と、とりあえず。いなくなったメンバーのことを考えても誰かが何かしらの方法で悪意を持って殺害及び監禁してるはずだ。だから、対策本部を作ったほうがいいと、僕は思う」
その場にいるものは皆「賛成だ」と言わんばかりに頷いた。
「───じゃあ、メンバーはどうする?まぁ、4月初頭にも似たような感じでメンバーを集めて聞き込み調査をしたけど犯人だと思われる人物は現れなかった。今回も、一人一人の証言なんか意味なんて無いと思うけどね」
奏汰は、冷静にそう口にした。実際、そんなに人数は必要無さそうだった。できることがあるとしても、大体は探偵ごっこだろう。
そして、対策本部に仲間入りしたところで、そこだけで知れる情報などは無いようだった。それどころか、それを行っている人物───要は、生徒会に狙われやすくなるだろう。
───ということで、康太達も含めて色々とやっているようだったけれど、俺は今回は不参加ということにした。
ここからは、完全に俺の考察である。
今回死亡及び失踪したのは、杉田雷人と園田茉裕・三橋明里・綿野沙紀の4人。
寮の話をすると、チームBとチームH・チームIだった。
前回、謎の死を遂げた平塚ここあも、チームIだった。
───そうなると、チームBとチームIの残りの2人ずつが怪しくなってくる。
名前を挙げると、チームBは安土鈴華と竹原美玲。チームIは田口真紀と結城奏汰だ。
───と、まだ全員死亡したとは決まっていない。一人を部屋に連れてそのまま監禁して自分は外に出ない───ということは可能だ。
そうなると、奏汰の言っていることが本当であると信じるのならば雷人以外は生きてると考えてもいいかもしれない。
綿野沙紀に関しては、一人であるし家の外に出ていなければ誘拐されることもほとんど無さそうなので、殺されたかどこかに一人で監禁されていると考えてもいいだろう。
残るはチームBとチームI。
奏汰がもし生徒会であるならば、雷人を殺してからその見つけたという証言も可能だ。しかも、真紀はその死体を見れていないのだから。
───と、待てよ?
鈴華が茉裕がいない事実にあれだけ騒ぐのであれば、遅かれ早かれ茉裕が「部屋から出てこない」ということには気付くはずだ。そして、それが噂となり俺達の方へ流れてくる。それならば、わざわざ雷人が死亡した───などと騒ぐ必要はない。
何せ、証言は自分だけ。見て見ぬふりをして、気付いたらいなかった───という方が都合がいいからだ。
証人が自分だけなら「殺した」とあらぬ噂を立てられる可能性もあった。だけど、それをしたということは、本当に死亡していたところを見たから───ではないか?
そう、俺は考えた。奏汰が黒となると、真紀だ。真紀が殺して、奏汰が発見する───という可能性もあり得る。だけど、それでも至らぬ点が多かった。
いや、奏汰が生徒会だと仮定し、鈴華が騒ぐことを予想できなければどうだろうか。
───いや、違う。鈴華が騒がずとも、2人も部屋から出てこなければ美玲が気付くはずだ。
そうなると、茉裕か明里のどちらかがもう一方誘拐し、雷人をを殺す。そして、生徒会かどうかはわからないけれど、奏汰が発見。それにより、現在に至る。
それならば、十分に辻褄が合う。何故雷人が狙われたのはわからないけれど、雷人は死亡しておらず、復活してくると奏汰の発言は”嘘”になってしまうので、生徒会として確定してしまう。だから、雷人は奏汰が生徒会でもそうでなくても死亡しているだろう。
「───怪しいのは、誘拐されたチームBのどちらか...かな」
「───栄。生徒会で思い出したんだけど、第3ゲームの裏で起こった話をしていい?」
俺の考察に、言葉を挟んでくるのは純介だった。純介は、どうやら推理材料を新たに与えてくれるようだった。
***
四次元にて。
そこには、4人の第5回生徒会メンバーが集合していた。
「茉裕、暴れる準備はできてるかい?」
「残念だけど、私はそこまで暴虐な女じゃないわ。暴れるのは、私に従うバカ共よ」
───園田茉裕は生徒会メンバーの紅一点であった。
第5回生徒会メンバー
・???
・???
・???
・園田茉裕