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Last Battle その㉛

 

 俺の首を掴み宙に持ち上げる靫蔓に抱きつくのは、小柄な金髪に金のワンピース、金の瞳という金色に身を包んだ美女───第3回生徒会メンバーである柊紫陽花(ひいらぎあじさい)であった。


 今にも殺されそうな状況で、援軍ではなく更に敵が来てしまった。


「───愛、香...」

 柊紫陽花(ひいらぎあじさい)の相手をしていたのは、森愛香だ。柊紫陽花(ひいらぎあじさい)がここにいるということは、愛香ははいぼくしてしまったのだろうか。


「おっと、栄。お前はここで大人しくしとけや!」


 ”ガンッ”


「───ッ!」

 俺は、床に強く叩きつけられる。背中から落ちたので、俺の背中にある一心不乱(いっしんふらん)に引っ掻かれた傷がズキズキと傷んだ。


「───あぁ、が!」

「マスコット先生、主人公は───栄はどうするよ?」

「殺してもらって構わない。好きにしろ」


「───わかったぜ。ならば、好きにさせてもらう」

 くの字に倒れている俺を、見下してくるのは靫蔓と紫陽花。その後ろには、廣井大和(やまと)も控えていた。


 ───ここで、俺は負けるというのだろうか。



「立てや、主人公」

「───は」


 靫蔓は、そう言ったと同時に俺に背を向け、マスコット先生の方を向いた。そして───


「マスコット、俺の───いや、俺達の敵はお前だよ」

 靫蔓は、そう告げたのだった。




「───はぁ?お前らの敵が俺だと?何を言って...」


 ”ダンッ”


 マスコット先生の横の壁を殴ったのは、この部屋の紅一点───紫陽花だった。


「貴様...靫蔓と大和(やまと)を殺しておいて、何も無いとでも思っておるのか?万死に値する!」

「えぇ...私も手だけではなく、アナタも大嫌いですよ」


 ───どうやら、駆けつけてきた紫陽花を含めて、第3回生徒会メンバーの3人は、俺の味方だったようだ。



 靫蔓が、マスコット先生に反旗を翻した理由。

 そんなのは、書くほどでもないくらいに単純明快なものだった。だけど、覚えてない人もいるだろうから、羅列しておく。


 まず、第4ゲーム『分離戦択(ぶんりせんたく)』の第2回戦『パラジクロロ間欠泉』の試合の最中、マスコット先生は靫蔓が作ったルールを勝手に改変して試合を半強制的に終わらせた。

 その恨みもあり、靫蔓は愛香と共にマスコット先生に勝負を挑むも敗北。

 そしてその怪我を負ったまま栄・誠ペアと最終決戦を行って敗北し、マスコット先生に殺されたのであった。


 ここまで見て、マスコット先生を恨まない訳がないだろう。


 同じく、大和(やまと)だってマスコット先生に騙されて殺されてしまっていた。

 そして、紫陽花はマスコット先生のやり方に不信感を抱き始めていたし、何より密かに好意を抱いていた靫蔓を殺害したことで、マスコット先生への怒りは頂点に達していたのだった。


 故、3人はマスコット先生に反旗を翻す選択をする。


「お前ら...俺に逆らってなにもないと思ってんのか?万死に値するのは、お前らの方だぞ!」

「残念だな、俺達は一度お前に殺されてんだ。自分を殺したやつの仲間になってやるほど、俺はあまちゃんじゃねぇ」


 そう言った刹那、靫蔓はマスコット先生の足を掴んで、床にマスコット先生の頭をバンバンと何度も叩きつけた。

「四次元ではお前らに負けたが、ここじゃお前に負けるつもりなんかねぇよ!」


 靫蔓の怒り。

「私も、容赦はしません」

「───がはッ!」


 靫蔓が、マスコット先生を教室の壁に叩きつけたと同時に、大和(やまと)はマスコット先生の頭に教室の机を叩きつける。


 机は真っ二つに割れて、マスコット先生の被り物は赤く染まった。

「───あ...クソが...」

 マスコット先生はそう呟く。


「妾達の怒りを知れ。ヘラヘラと笑えなくしてやる」


 ”ドンッ”


 マスコット先生の鳩尾に拳をめり込ませる紫陽花。俺は、立ち上がれなかったけれど、目の前の3人は強すぎた。



 ───これが、第3回生徒会メンバー。

 ───これが、俺達と戦った強敵の本気。


「主人公、お前がボールを当てないと試合は終わらないんだろ?」

「あ、あぁ...」

 俺は、ゆっくりと立ち上がってボコボコにされたマスコット先生のいる方へ移動する。


「───なぁ...靫蔓、どうして靫蔓は生きてるんだ?」

「さぁな、俺が知ってると思うか?主人公」

「ははは、そうだな。靫蔓が知ってるわけ無いか」

「んな、失礼な野郎だぜ」


 俺は、ボコボコにされたマスコット先生が仰向きに横たわっている床まで辿り着いた。

「───クソ...が...」

「マスコット先生...これで終わりだ」


 俺は体操服のポケットから取り出した青いボールをマスコット先生に投げつけ───



 ”パンッ”


「───ッ!」

 飛来する銃弾。


 撃ったのは、マスコット先生。その手には、しっかりと銃が握りしめられていたのだ。


「栄、危ないッ!」

 俺は、靫蔓の手に当たり後ろによろけてしまう。マスコット先生が狙ったのは、俺が当てようとした青いボールだった。


「お前ら...赦されると思うなよ?全員、死ねや」


 ”パンッ”


 ”パンッ”


 ”パンッ”


 発砲に次ぐ発砲。マスコット先生は、銃を保持していたのだ。



 ───今思えば、大和(やまと)を殺した時だって靫蔓を殺した時だって使用されていたのは銃だった。


 銃刀法違反など、デスゲームを行っているマスコット先生には通用しない。

「───栄、ここから逃げろッ!お前は死んじまう!」


「何言ってんだ、お前らだって死ぬんだよ。人間だからな!」


 ───その言葉と同時に、大和(やまと)の心臓が銃弾によって穿たれる。


 遥の死体が吊られている俺達の教室に、また1つ死体が増えてしまったのだった。

この作品での銃が最強はわざとです。

人間を殺す人間が作ったものの象徴です。だから、銃に当たった人はほぼ確実に死ぬ。

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雨城蝶尾様が作ってくださいました。
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― 新着の感想 ―
[良い点] うお、これは意外な展開。 でも確かにマスコット先生に対する恨みがあるので、 ある意味、ごく自然の流れかも? でも銃が最強なのは頷けますね。 良くも悪くも人類の歴史を変えた武器ですしね。
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