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Last Battle その㉙

 

「───なん...で...」

 俺の口からこぼれる、衝撃すぎる映像。


 全身の毛が逆立ち、全ての細胞が警鐘を鳴らす。3年Α組の教室で、四肢がバッサリと斬られた状態で首を吊っていたのは本日休んでいたはずの橋本遥だった。


「死ねぇ!栄ぇ!」

 俺の名前を呼ぶマスコット先生。目の前に広がるその壮絶な状態を前に、言葉が絞り出せなかった。


 階段の前で棒立ちする俺と智恵と拓人。どうやら、拓人達は登ってきた時にこの死体に気付いていなかったようだ。

 俺は、その死体を前にして体が固まったように動かなくなる。


 金縛りにあったように、体は動かせず声も出せないような状況下で、マスコット先生は俺にボールを投げてきた。


「───栄ッ!」


 ”ドンッ”


 俺は、痛む背中を無理矢理拓人に押されてギリギリでマスコット先生の投げたボールを避けた。

「───あ」


 押された衝撃と、一心不乱(いっしんふらん)に付けられた背中の傷の痛みにより、俺は我に返る。

 智恵の顔は青ざめて、今にも吐いてしまいそうだった。


「拓人、智恵を任せた!」

 俺は、自分でも驚くような素っ頓狂を出しながら、拓人にそう指示した。


「お、応!」

 拓人は、俺よりも胆力があるのか、怖気づいた智恵を背負い込んでそのまま1階へと向かっていった。


 マスコット先生は、赤いボールを既に手元から無くしていたので、俺に攻撃することはできない。

 俺は、目の前の惨状に集中することができるのであった。


「遥!」

 俺は、教室の中に入る。まだ、教室の中に死臭は広がっていない。死んだのは最近だろう。


 教室の中心で吊られている遥の周りには、四肢がばら撒かれていた。切り取られた腕から、俺は廣井兄弟のことを思い出した。


 自分の四肢を斬った後に首吊りなんかできないし、首を吊りながら自分の四肢を斬ることもできない。

 まず、周りに凶器が落ちていなかった。


 だから、これは自殺に見せかけた他殺。

 四肢を斬って死亡した遥を首吊りさせたのか、首を吊って死亡した遥の四肢を斬り落としたのか、それとも別の死に方をした遥をこの状態にまでにしたのかはわからない。


 だけど、確かに何者かの手が介入していたのは確かだった。そして、こんなことができるのは後にも先にもただ一人───。



「───マスコット先生、お前は...お前はどこまで人の心を嬲れば気が済むんだッ!」

 俺は、赤いボールを───ラストバトルに勝利するために必要な武器である赤いボールを一つたりとも持っていないのにも関わらず、逃げも隠れもしないマスコット先生のことを呼ぶ。


「なんだよ、栄。怒っているのか?別に特別親しかったわけでもないし、何か大事なイベントがあったわけでもないだろう?」

「人が死んでるんだ!それが悲しまない理由にならなければ、俺は何で悲しめばいい!それが怒らない理由にならなければ、俺は何で怒ればいい!それがお前を赦さない理由にならなければ、俺は何で赦さなければいい!」

 爆発する怒り。


 ───もう、わかっていた。


 橋本遥を殺したのは、マスコット先生。この、残虐な行為を行ったのは、マスコット先生。



「───栄、お前は気付いていないな?」

「何がだよ」


「俺達デスゲーム運営側は、お前らデスゲーム参加者を()()()()()()では、一人だって殺していない」

「───は?」


 逡巡する思考。

 4月3日に死亡した平塚ここあの死因は───まだわかっていない。

 4月7日に死亡した小寺真由美の死因は、禁止行為だ。

 5月6日に死亡した睦月奈緒の死因は、デスゲームの最中蓮也の裏切りにより死亡した。


 ───冷静になってみると、マスコット先生側が定めたルール以外で第5回デスゲーム参加者で殺されたことはなかった。


「こっちだって、色々とルールを背負ってんだよ。デスゲームが()()であるように!」

 マスコット先生は、そう言葉を放つ。


「じゃあ、そっちに課されたルールってなんだよ!この佳境で、破らない保証がない!」

「別に、橋本遥を殺す理由にはならないだろう?」

「じゃあ...なんで橋本遥は死んでんだよ!」

「禁止行為を犯した」


「───はぁ?」

 俺の口からこぼれでる疑問符。


「解答編だよ、栄。橋本遥は、お前らが第5ゲーム予戦『投球困窮四面楚歌』をやっていた時に遅れて登校した。お前には話してやるよ。橋本遥の禁止行為は『学校に遅刻したら死亡』と言ったものだった。だから、誰も知らぬ間に勝手に死んでたんだよ」


 第5ゲーム予戦『投球困窮四面楚歌』は、マスコット先生が用意した別の場所で行った。だから、俺達は橋本遥の死亡に気付かなかったらしい。

「そんなの、信じられるかよ...」

「信じなくても構わない。お前の意見なんか聞く意義もないからな。そして、栄。お前に一つ謝らなければならないことがある」


「なんだよ...まさか、他にも誰かを殺したとは言わないだろうな?」

「俺達の───デスゲーム運営として課していたルールを破った」

「───は?ルールって」


 デスゲーム運営が自らに課したルール(抜粋)

 1.現在のデスゲーム参加者を殺してはならない。

 2.現在のデスゲーム参加者が一度会ったことがあり、尚且つ死亡した人物と同一である生者をデスゲーム参加者の目の前に見せてはならない。

 9.これらのルールを破った場合、事が収まった後に行った人物は罰せられる。


 ”ドンッ”




「池本栄君...久しぶりですね...」

「よう、主人公。元気してっか?」

「お前...らはッ!」


 そこに現れたのは、既に死亡したはずだった第3回デスゲームの生徒会メンバー。



 ───廣井大和(ひろいやまと)と、鬼龍院(きりゅういん)靫蔓(うつぼかずら)であった。

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雨城蝶尾様が作ってくださいました。
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― 新着の感想 ―
[良い点] ぬおおおっ。 色々と超展開になってきましたね。 まさかここで……が現れるとは! しかしマスコット先生の言う事も一理ありますね。 とはいえデスゲームが始まったら、 良くも悪くも人は死にますか…
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