Last Battle その㉕
九条撫子の逃亡。
そして、深海ケ原牡丹の敗退。
その2つは、ほぼ同時に起こった出来事だった。
その2つとは、また別の戦場で、2人の撤退を皮切りに戦場に変化が起こったところがある。
「消の
えか
た?」
そう反応を見せたのは、ペストマスクを被る以外は局部を隠すためのパンツだけが一枚の状態である第2回生徒会メンバーである鼬ヶ丘百鬼夜行だった。百鬼夜行の両手には箸のような棒切れが数本ずつあり、それを投擲して対戦相手である安土鈴華に対して攻撃していた。
「消えたって何の話だ?」
「お関
前係
に無
はい」
「うっせぇ、オレもこの戦いに参加してんだ。教えてもらう義理はあるはずだぜ」
「関
係
無
い」
「そうかよ。だけど、ノリノリでオレに教えねぇってことは、オレにとって都合のいいことだってことだけはわかる。きっと、誰かが勝利したんだろうよ」
「─
─
─」
「関係無い」の一点張りだった百鬼夜行は、自分が察した内容を大まかではあるが鈴華に当てられて、返答できなくなる。
決して反論できなかったわけではないし、言い包めることもねじ伏せることも可能だったが、あえてそれをしなかった。
「俺べ
はき
どだ
うろ
すう
るか」
そう口にする百鬼夜行。目の前にいる鈴華は、確かに強い部類の人物だ。だから、コイツをフリーにするわけにはいかないだろう。他が倒されてしまうトリガーになってしまうからだ。
「な
ら
ば」
百鬼夜行は、両手にあった合計9本の棒切れを投擲することを選択する。
───そして。
「爆
撃」
百鬼夜行はそう呟いて、棒切れを投擲する。
「おま、どこに!」
狙ったのは、2地点。
一つは、九条撫子の反応が消えたA棟4階の美術室。もう一つは、深海ケ原牡丹が敗北した校舎裏。
「まさかッ!」
鈴華も、その行為と発言から何かを察せたのかすぐに百鬼夜行に組み付く。
「面
倒
だ」
「───ッ!」
後ろから、ほぼ裸体である百鬼夜行に抱きつくように組みついた鈴華。
鈴華は、筋肉質の男の肌を直に触り、そのまま地面に叩きつけようとする。
───が、鈴華は油断していた。
百鬼夜行の腕の中に残っていたのは、1本の棒切れ。その棒切れは、正確無比に鈴華の喉を狙っていた。
「組み付かれることも想定して!」
「当自
た己
り防
前衛
のだ」
そして、そのまま鈴華の喉をつんざいて───。
「まだッ゙!」
喉に棒切れが刺さって尚、動き続ける鈴華。その指は、組み付いた百鬼夜行の首に迫っていた。
「ごろず!ごろずごろず!」
キリキリと、首が絞められていく。百鬼夜行のペストマスクの中にある百鬼夜行の口から、空気が漏れ出す。
「残
念
だ」
───百鬼夜行がそう呟いたと思うと。
”ドッ”
そんな音がなり。
───鈴華の額の中心には、棒切れがブスリと刺さっていた。
「───んぁ...」
そう呟いて、そのまま鈴華はその場に倒れる。
喉と額を穿たれては、肋骨を粉々にされて尚生きていた鈴華でも復活できないだろう。彼女のゾンビのような生命力の前でも、人体の急所である喉と脳をやられてしまっては終わりなのだ。
「お俺未
前の来
も相で
ま手活
たに躍
強なで
者らき
でなた
あけの
っれか
たばも
。、な」
そう呟き、グラウンドの中央に倒れている鈴華のいる場所から、校舎裏に移動しようとしたその時。
「───ぃ゙がぜねぇ゙...」
「ま
だ
生
き
て
る
の
か
?」
驚きあのあまり、そう口にするのは百鬼夜行であった。急所を2点突いて尚、まだ息を保ち生きていて、尚且つ自分に立ち向かってくる鈴華に、百鬼夜行は喫驚してしまった。
「ばぃ゙ずりまわっ゙てやるよ...地獄の底までも...」
「黙
れ」
そう言って、鈴華を蹴り飛ばす百鬼夜行。だけど、鈴華は何度も何度も這いつくばっては百鬼夜行の方へ進んでくる。
「何立
故ち
お上
前が
はる
そん
こだ
まよ
で?」
鈴華の見苦しい勝ちへの執念に、百鬼夜行は疑問を持つ。
「神ば...オ゙レ゙を見でんだよ...」
「神
?」
そう口にする鈴華。そして、その満身創痍の体でゆっくりと立ち上がる。喉が潰れて呼吸もしずらく、脳を傷付けられて、目眩がやまない状態で、鈴華は戦いを続ける選択をする。
ヨロリと体を動かすと、鈴華は目眩でほとんど見えない状態で百鬼夜行に近づき、飛び膝蹴りを披露する。百鬼夜行は、急に接近してくるとも思っていなかったので、棒切れを用意することも出来ずに、鈴華の飛び膝蹴りを両手を使って受け止めることしかできなかった。
「お゙らよッ!」
そんな声と同時に、自分の喉に刺さっていた棒切れを、百鬼夜行の脇腹に突き刺してから距離を取る鈴華。
もしも百鬼夜行が服を着ていたら、この攻撃は通らなかっただろう。
「傷、付げだぜ...次は服、着でごい゙や゙」
「俺と
がで
こも
こ思
でっ
諦る
めの
るか」
そう述べる百鬼夜行。最後に疑問符がついていないので、これはきっと反語よりの言葉なのだろう。
「帰れや、神ば怒っでんぜ」
鈴華はそう口にする。が───
「神人人い
な間間う
んのをこ
て産超と
も物えは
のだる無
は。とい」
そう言って、鈴華の体を穿つ大量の棒切れ。鈴華は、黒ひげ危機一発の樽のように大量の剣に刺されるように棒切れに刺されて、今度こそ意識を落としたのだった。