Last Battle その㉔
EXゲーム『モールスしりとり』のルール
1.モールス信号でしりとりをしていく。
2.最初から4ターン目までは、お尻の一つ信号を。5ターン目から8ターン目からはお尻の2つの信号を取る。
3.10秒以内に言葉が出なかったら敗北。
21ターン目が開始し、頭に必要な文字は、前の人物がいったモールス信号の6音ということになっていた。
純介は、「-・・・・-」の6音を使用して、始めなければならない。
「-・・ ・・- ・・-・・ ・・- - ---・- ----(放蕩息子)」
「・- ---- ・- ・・-- -・・・ ・・(憩いの場)」
「-・・・ ・・ ・-・・(馬鹿)」
「・・・- ・・ --- ・-・-・(紅蓮)」
深海ケ原牡丹は、一瞬迷ったように止まったけれど時間内に答えを出した。
純介が続ける必要があるのは「-・-・-・」だ。
「-・-・ -・・ ・-・-・ -・・- ・--・(二本松)」
「・- ・-- ・・-・-(嫌味)」
「-・・-・ -・・ ・・-(模倣)]
「-・・・ ・- -・・・ ・・--・ ・--・- ・- ・-・-・ --・・ ---(ハイパーインフレ)」
───24ターンが終えたので、次からはお尻の音を7つ取ることになる。
今回は「--・・---」である。
「--・・ --- ・・・- ・・ ・・・ ・-・-・ ---・-(フレグランス)」
純介も、ここまでくると流石にネガティブな用語を使用してしりとりをすることが辛くなってきているようだった。
「-・--- ・-(エイ)」
「嘘」
純介は、思わずそう呟いてしまう。純介に回ってきたのは自分が回したものと全く同じ「-・---・-」だからであった。7文字になってくると、それだけで単語が完成する可能性だって十分にあるのだ。
「-・--- ・- ・・-・(叡智)」
純介は、繋げられた「エイ」に「・・-・(ち)」をつける形で繋げた。
「-・-・・ -・-・・(危機)」
「・・-・- ・・-・- ---・- ・・ ・・・-(ミミズク)」
「-・・・ ・・ --- -・---(バレエ)」
純介は、続ける言葉を考える。流石にすべてが「-」で埋められている訳ではないけれど、7音中6音が「-」の状態であったために、思案したのだ。
そして、10秒が経とうとしていたギリギリで、純介は次の単語を口にした。
「---・- --- -・ ・-(スレタイ)」
28ターン目の純介の番に繋いだのは「----・・-」という形だった。
「---- ・・- -・-・- ・-・-・(高3)」
深海ケ原牡丹は、堅実にしりとりを続けたのだった。次は、純介。
29ターン目になり、取られる数は8つに増える。繋がれたのは「-・-・-・-・」の8音。
純介は、モールス信号を考えているのか口を閉ざしたままだった。そして、5秒6秒7秒と過ぎていく。
そして───、
───10秒。
「-・・-・ ・・- ・-・・・ -・- --・ ・-・・ --・-・ ・・・(もう終わりかしら)」
そう口を開いたのは、深海ケ原牡丹であった。
「あぁ、終わり。終わりだよ。ありがとう、楽しかった」
純介は、笑みを浮かべてそう言葉にした。純介は、単語を思いつかずに潔く負を認めたのだろうか。
───答えは、否。
「君、名前は?」
「--・-・ ・-・-・ ・-・・ ・- ・-・・ ・・ -・・・ ・・・ -・・ ・・ -・ ・-・-・ (深海ケ原牡丹)」
「へぇ、深海ケ原牡丹って言うのか。じゃあ、牡丹って呼ばせてもらうよ」
「--・-・ -・-・ -・・-- ・・・- --・・- ・・-・・ -・-・ ・-・ ・-・-・ ・・-・・ ・- -・- --- -- ・・- ・・-・・ ・-・・ ・-・-・ -・-- ・- ・-・ ・- (死ぬ征く人に何と言われようと関係ない)」
「牡丹、お前の負けだ」
「───-・---(え)?」
深海ケ原牡丹の口から思わず溢れてしまうモールス信号での疑問。
「君は最後、なんと言ったか覚えているかい?君は、確かに『こうさん』と言ったんだ。それは、負けを認めたんじゃないのかい?」
「───ッ!」
深海ケ原牡丹は、28ターン目に「高3」と答えていた。だけど、それは深海ケ原牡丹の心の中でだ。
実際は「---- ・・- -・-・- ・-・-・」という音だけなのだからどのような漢字に表記されてもおかしくないはずだった。
それ故に、純介は「降参」と捉えて、それが敗北を認めたことだと断定した。それ故に、ゲームを続けることはしなかったのだ。
「君は確かに降参と言った。君のいつも使っている言葉で!」
深海ケ原牡丹は、純介の言い分を否定できない。何故なら、モールス信号は音の列だからだ。暗号だからだ。
暗号であるから、相手にどう捉えられるかによって変わってくる。だから、深海ケ原牡丹は「降参」だと言う言い分を否定できないのだった。
「それとも...手を変え品を変えもう一勝負するかい?その時は、牡丹が死にたくなるような程コテンパンにするけれど」
深海ケ原牡丹の目に映った純介は、まるで悪魔だった。ジョーカーのような、イレギュラーさが、純介からは滲み出ていた。
「-・- ・-・・ -・ -・・- -・-- ・--- ・・-・- ・・-・・ -・・・- -・--・ --(わかった、負けを認めるよ)」
そう言うと、深海ケ原牡丹は負けを認めた。純介に戦って「負けるだけ」という未来が見えなかったのだ。
そして、深海ケ原牡丹はこの校舎の周辺から姿を消して四次元に移動していった。
───純介は、勝利したのだった。
EXゲーム『モールスしりとり』終了。