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Last Battle その⑭

 

 俺は、信夫を引き連れて、マスコット先生にボールを当てることを企てる。

 作戦としては簡単で、俺の投げたボールを信夫に打ってもらう───というものだった。


「練習...する?」

「んな、不必要やわ!2球あれば───いや、1球あれば十分や!」

 信夫は、そう言うと俺の方へ向けてサムズアップする。そして、信夫の歯がキラリと光った。


「───じゃあ...行くぞ?」

「あぁ、任せ時!」

 マスコット先生の方を見ると、どうやらこちらがボールをバットで打とうとなどは思ってもいない様子で、人間甘言(にんげんかんげん)唯々諾々(いいだくだく)と話していた、もしかしたら何か作戦を伝えているのかもしれない。


 人間甘言(にんげんかんげん)唯々諾々(いいだくだく)は、自分から「池本朗の狂信者」と言っていたから、俺達の仲間になってくれることはないだろう。

 だから、この作戦を第5回生徒会メンバーを説得できたように、俺達の仲間に、和平を結ぶようなことはできないだろう。


「だからこそッ!」

 俺は、信夫に向けてボールを投げる準備をする。


「おっしゃ、バチコイ!ワイがかっ飛ばしてやるわ!」

 信夫も、バットを振る準備をした。狙うは、マスコット先生。敵は、すぐそこにあり。


「───勝てるッ!」

 俺は、ボールを投げた。信夫の持つバットが打ちやすいようなボール。


「ナイスボール!」


 ”カキンッ”


 大きく振りかぶって投げたボールは、信夫の持つバットに寸分の狂いもなく当たる。そして、キレイな弧を描いて、空を飛んでいく。


「マスコット先生に当たるか?」

「ワイの打つボールをナメてもらっちゃこまるわ!栄、見ときや!」


 遠くに飛んでいくと思ったボールは、空中で力を失ったのかそのまま斜めに落下していった。これも、信夫の力量なのだろう。


 ───と、その時マスコット先生が俺達が放ったボールの存在に気が付いた。


 俺達のことを目視した後に、すぐに上空を見たのだ。そして、そのボールに背中を向けて逃げていった。


「信夫」

「大丈夫や。見とき」


 走って逃げようとするマスコット先生に向けて着実に進んでいくボール。まるで、追尾弾のようだった。

 そして、ボールはマスコット先生にぶち当たり───



「───ッ!」

「ファッ!!なんやて?!」


 俺は、驚きの声を上げた。突如として、空中に人間甘言(にんげんかんげん)唯々諾々(いいだくだく)が瞬間移動してそのボールを口でキャッチしたのだった。


 流石の信夫のボールでも、人間甘言(にんげんかんげん)唯々諾々(いいだくだく)の乱入は予想できないし、それを避けることもできないだろう。

「───失敗?」


 俺がそう呟くと同時に、人間甘言(にんげんかんげん)唯々諾々(いいだくだく)の縛り付けられていた十字架が地面にドスンと音を立てて落下する。

 そのまま、マスコット先生はA棟の校舎の裏まで走っていってしまった。


「逃げられた...」

「いや、栄。もう1球や」

 信夫は、人差し指をピンと立ててそう提案する。


「でも...校舎の裏だぞ?そんなのできっこない───」

「できっこない?まだ、やって無いからわからへんやろ。栄は靫蔓から何を学んだんや?男ってのは、諦めなければ負けへんし、諦めなければいつか勝利できるんやで」

「信夫...」


 俺は、頷く。そして、もう1発投げる。

「ナイスボール!」


 ”カキンッ”


 軽快な音を立てて、ボールは4階まである校舎を飛び越えるようにして飛んでいく。俺は、目の前に現れたボールを3つキャッチして、右手に1つ、左手に2つといった個数に分けて持った。


 マスコット先生にも、再度3球配布されているだろう。

「これで...」

 その刹那。


「───作戦変更!唯々諾々(いいだくだく)、信夫の相手をしろッ!」

 マスコット先生の大きな声が世界に響く。そして───


「俺が相手だ」

 再度、俺の目の前に瞬間移動で現れたのは赤い十字架に縛り付けられている、顔の皮が全て剥がれている人物───人間甘言(にんげんかんげん)唯々諾々(いいだくだく)だった。


「───ッ!」

「栄、お前は先に行けや...」

「でも」


「大丈夫や、諦めなければ負けへん!そして、ワイは諦めへん!後はもう...わかるやろ?」

 そこにいたのは、一人の勇者だった。俺は、B棟の入口から、校舎の中に入っていった。



 ***



 栄が信夫と共闘していた時と、同刻。


 校舎裏には、3人の人物が相見えていた。


「お前は...」

「・-・ ・・-- -・--・ ・--・ -・・-・ --・ -・・・ ・-・ ・- (名乗るつもりはない)」


 校舎裏にいたのは、第2回・第3回生徒会メンバーの中で唯一、学校にやってきていなかった勝利知らずの生き残り───第3回生徒会メンバーの深海ケ原牡丹(しんかいがはらぼたん)であった。光を吸い込んでいるのかと思うくらい真っ黒な髪と目をしており、服はビリビリに破けていてた。乞食にも見える彼女だったが、それと対面していた稜と純介は、得体の知れない恐怖を手に入れていた。


「どうする?逃げるか?」

 稜は、純介に提案する。


「───そうだ、純介。純介がこれを栄に運んでくれ。俺は、このモールス信号女の相手をする」

「う、うん...わかった...」


 純介は、稜からとあるアイテムを渡される。そして、栄の言う通り栄に届けることを稜からも頼まれた。


「───やっぱり...稜が...」

「───え?」

「やっぱり、稜が届けてよ!このモールス信号女の相手は僕がする!」


 純介は、足を震わせつつもそう伝えた。

「───大丈夫なのか?」

「うん...あはは、なんでかな...僕はこんな良いやつじゃないのに...なんでか、栄のために戦いたいって思ったんだ...」

「───じゃあ、ここは任せたぞ」

「ありがとう、稜」


 稜は、純介と別れて別行動を選択する。

「---・ --- ・-・-- ・・  --・-- ・-・ -・ ・-・・ ・・ --・-- ・- ・-・-- ・-・ ・・-- (それで貴方が相手なの?)」


 純介はチラリと、稜がいなくなったことを確認して───。



「あぁ、僕が相手をしてやるよ。ジョーカーを前には、どんなカードも無力だ」

 ジョーカーとジョーカーの戦いが、始まろうとしていた。

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雨城蝶尾様が作ってくださいました。
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― 新着の感想 ―
[良い点] 唯々諾々、まさか口でキャッチするとは! これは意外と長引きそうですね。 更には至るところでバトルの予感。 まさにオールスター祭りですね!
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