Last Battle その⑪
───康太達が集団で猫又一心不乱の相手をして、皇斗と大神天上天下がグラウンドの1角で常人には理解もできないようなスピードで拳をぶつけ合っているのと同刻。
未だ、人間甘言唯々諾々が登場していないグラウンドの中央にて豪快な勝負を行っているのは2人の人物だった。
一方は、第5回デスゲーム参加者全員が着ている体操服に身を包んだ、右目に眼帯を付けたスケバン少女───安土鈴華。そして、もう一方はペストマスクに頭を包み、それ以外はパンツ一枚だけという、傍から見れば変態以外の何者でもない人物───第2回デスゲーム生徒会メンバーであり『怪物』の異名を持つ鼬ヶ丘百鬼夜行であった。
「───」
「─
─
─」
絶え間なく流れる川の水のように、動き続けることが多い各所であったが、珍しくこの2人の戦いの最初は、睨み合いから───否、沈黙から始まった。
いつもは好戦的である鈴華も、パンツ一枚しか履いていない鼬ヶ丘百鬼夜行の相手をするのは少し困っているようだった。
「どし
うて
しこ
たな
?い
攻の
撃か」
口を開く鼬ヶ丘百鬼夜行。
「アァ?うっせぇな、そっちがその気ならぶちのめしてやるわ!」
鈴華は、パン一の鼬ヶ丘百鬼夜行の言葉に煽られて、頬を若干赤らめつつも百鬼夜行の方へ走っていく。
「そ
の
粋
だ」
百鬼夜行じゃそう呟くと同時に、手元にある、食事に使う箸のような棒を鈴華に向けて投げた。
「小賢しいッ!」
パン一である百鬼夜行の投げた棒を右手の親指と人差し指を使ってキャッチした鈴華。
「残念だったな!お前の投げた棒切れは2本ともオレの手元の中だ!」
「こ量な
ん産作
なす業
棒るに
切こ決
れとま
、なっ
何どて
本、い
で簡る
も単!」
そう言って、百鬼夜行は、衣服の中から新たな棒を取り出す。
衣服というよりかは、大事なところを隠すために着ているパンツの中なのだけれど。
「───って、おい!お前、この棒切れパンツの中に入れてんのかよッ!」
「そ
う
だ
が
?」
「うっわ、汚ぇ!JKに何触らしてるんだ、変態!」
”ブンッ”
鈴華は、右手で保管していた、変態こと百鬼夜行のパンツの中にあったと予想ができる、棒切れを百鬼夜行の方へ投げる。
「お変
い態
、と
今言
俺っ
のた
この
とか
を?」
「当たり前だ。JKの前でパン一になってるだけでも、犯罪的なのに、それにプラスでパンツの中に溜め込んでいた棒を投げてんだろ?もう、立派な性犯罪者だよ!」
「な俺
んが
だ変
と態
??」
わざとらしく驚く百鬼夜行。パン一にペストマスクという格好をしているのに、変態の自覚がないのはかなり問題ないだろう。
「あぁ、お前のことを変態だって言ってるんだよ!逆に、お前の格好を見て変態以外の何だと言うんだ!」
「俺思格の間かでに俺女屈は不顔ど
のわ好だが?怪衣は々強、乱だ皆
これはか服人我服そしだ最にけ無
のる、らを間ををこい。低隠をだ
格の実。着はす身ま訳そ限せ隠と
好はにまる、るにででれでとし言
が、合ずの外こ纏弱も故い言てう
唯心理、か部とう々な、いわおわ
の外的ど知かをんしい防のれけけ
露だなうっら避だい。御だたばな
出。格してのけ。訳俺す!股問の
だこ好てい要るがではる一間題だ
とのな人る因為、も、所心とな!」
そう自信ありげに語るのは、百鬼夜行。
「一心不乱ってのがどんな野郎かは知らねぇけど、股間と顔が見たくないって、結構嫌われるじぇねぇかよ!」
「な
、
な
ん
だ
と
?」
露骨に、ショックそうな顔をしている百鬼夜行。もしかしたら、気付いていなかったというのか。そして、鈴華は百鬼夜行が一心不乱という人物に注意されるまでは、股間も隠していない───要するに、パンツさえも付けていない一糸纏わぬ姿でいたことに気付いてしまう。
衣服を人間が着る理由は、体が外的要因で傷つかないようにするためだったり、寒さに耐えるためであった。だが、どんなことがあろうと怪我をしなかったり、寒いと嘆かない自信があるのであれば、服を着る必要など無いのだ。まぁ、全裸で外出なんて今時したら、露出狂だと騒がれて逮捕されるのだが。
───なんて、百鬼夜行の意見を吟味している暇はない。現代の法律では、JKの前でパン一が許されるのは父親を除いたらいないのだ。父親でも嫌な顔をされるのに、全く関わりの前が目の前でパン一でいたら「変態だ」と罵られても無理はない。
「全く、お前が服を着ない理由などどうでもいい。だが、次からは着た方がいい」
「逆煩
にわ
質し
問く
だな
をい
すの
るか
が?」
「あぁ、もう!衣服の話は終わりだ!煩わしい煩わしくないとか、関係なく服は着てこい!それが常識だ!」
鈴華が、話にならないほどに理不尽な強さを持つ第2回生徒会メンバーにお説教をしている。これまで、テンションが抜ける先生は、ここが初めてだろう。
「し次無
ょが論
うあ、
がれ次
なばが
い着あ
小てれ
娘やば
だるだ
なよが
。。な」
「───ッ!」
直後、おふざけムードだったはずの百鬼夜行の目の色が変わり───いや、ペストマスクを付けているので実際に目の色が変わったかどうかはわからないし、言葉の綾であるが、確かに纏っている雰囲気は変わったと言えるだろう。
そのテンション差で風邪を引きそうになりながらも、遂にまともな戦闘は始まった。百鬼夜行は、まるで弾丸のようなスピードで棒切れを鈴華の方へ投げたのだった。
鈴華は、その棒切れを、しゃがむことで避ける。
「危ねぇ...急に、真剣になるじゃねぇかよ...」
「ふ状
ざ況
けだ
らか
れら
ぬな」
百鬼夜行はそう呟いた。百鬼夜行の視界の先に居たのは鈴華───ではなく、登場を果たした人間甘言唯々諾々なのであった。
人間甘言唯々諾々は、その存在だけで色々な人間に影響を与えていると言えるだろう。