Last Battle その⑨
睨み合う、猫又一心不乱と第5回デスゲーム参加者の7人。
これから攻防を繰り広げるメンバーを出席番号順に紹介しよう。
語尾が「ピョン」であり、今回の敵と犬猿の仲(猫兎の仲?)であるのは、第2ゲーム『パートナーガター』の本戦にも参加していた人物───宇佐見蒼だった。今集まっている男子の中では一番小さく、一番裏があるであろう人物だ。尚、髪の毛は一房だけ金メッシュが入っている。他が濡烏色の髪をしているので、よく目立っている。
続いては、第4ゲーム1回戦『リバーシブル・サッカー』にて活躍し、秋元梨花という恋人もいる人物───柏木拓人だった。爽やかなイケメンであり、面食いの女性ならば十人中十人が惚れ込んでしまうような、そんな容貌をしている。アイドルになっても、第一線で輝き続けることが可能だろう。
次に紹介するのは、第3ゲーム『パートナーガター』にて、栄と共闘したナルシストな人物───杉田雷人。彼を紹介するには、ナルシストの一言に尽きるだろう。だが、その分自分が好きであるために努力を欠かさないような人物だった。彼を嘲笑うことができる人は、この世に数人だっていないだろう。天賦の才を持つ人は、努力をする人を嘲笑わず、努力していない人は彼のことを嘲笑う権利が無いからだ。
この場で一番背が高いが、女々しい、第3ゲーム『パートナーガター』にて雷人と同じく、栄と共闘した人物───東堂真胡。女と見間違えるほど可愛い顔している、弱気そうな少年は、喧嘩になると強かった。いや、違う。きっと、喧嘩になると強いではなく誰かのために戦うと強くなるのだろう。
この中のリーダーのような存在であり、「善」の1文字を背負っているであろう第4ゲーム3回戦『バッターナイフ』で奮闘するも、相手の裏切りにより敗北を喫した人物───中村康太。この学校に、美男美女が多すぎるために、「イケメン」だと噂されるこそ皆無だったが、普通の高校に通っていれば、学区内で1位2位を争えるほどの美貌を持つ少年だ。その上、統率力もあり、才能の塊だと言えるだろう。
また、茶髪であり第3ゲーム『パートナーガター』にて、栄と共闘した、隠れた有能───結城奏汰。柔道も経験しており、尚且つ隠れサイコパスでもある彼は、冷静であり第3ゲーム『パートナーガター』を誰も失うことなく勝利に導いた暗躍者とも言えるだろう。
最後に紹介するのは、栄を毛嫌いしている人物───渡邊裕翔だ。彼の特筆すべき点は、その執念深さだろう。4月に栄と対立してから今まで、何度もその執念深さを発揮している。栄と犬猿の仲の彼こそが、一番栄の強さを知っているのかもしれない。もっとも、彼はその「栄の強さ」を認めようとはしていないようだが。
「先輩を馬鹿にしてちゃ、痛い目を見るってお前らに教えてやるにゃあ」
そう口に出すのは、第2回デスゲームにおいて生徒会メンバーであり、『偏物』という異名を持つ猫又一心不乱。現在、煽り癖のある蒼に「三十路過ぎのオバサン」だとか「承認欲求の塊」だとか言われてご立腹である。
「かかってこいよ。俺達が相手だ」
康太がそう声をかけると同時、猫又一心不乱は、その名の通り一心不乱に突っ込んできた。
「───速ッ」
康太の口からその言葉がこぼれ出ると同時、迫ってくる一心不乱を錯乱させるのは一人の人物───雷人だった。
「僕は雷神さ。獣ごときじゃ、僕のスピードには追いつけない」
雷人は、その言葉と同時に強力な蹴りを一心不乱に浴びせる。
「───まぬけだにゃあ」
雷人の放つ蹴り。それを、一瞬で見切って避ける一心不乱。
「───不発か」
「ま、雷人だなんて囮だピョン」
避けた一心不乱に襲いかかるのは、蒼と拓人であった。2人がかりで行動を開始したのだ。
「にゃん人いようが無駄だにゃん。にゃあに勝てるような実力は、お前らにはにゃい───ッ!」
拓人の後ろに少し屈みながら近付いてきている人物を、一心不乱は確認する。
そして、その人物こそが強い───そう、本能的に理解した。その為、一心不乱は後ろに飛ぶようにしてその場から避ける。
「一対一なら臆せず行けたけど...多勢に無勢じゃにゃあ...」
「にゃあにゃあ気持ち悪いピョン。JK時代はモテてたかもだけど、今はもう三十路過ぎてるピョンよ?皆、社会進出して十年ほど経とうとしてるのに、にゃあにゃあ言ってて恥ずかしくないピョン?弱者女性さん」
「この、クソガキがッ!」
蒼の挑発に乗る一心不乱。
まぁ実際、34歳で定職に付いていないので、蒼の煽りは間違っていないとも言えるだろう。
「はい、残念」
蒼に迫る一心不乱に、迫るのはやはり喧嘩ならばこの中で最強であろう美少女のような美少年───東堂真胡だった。
真胡は、一心不乱に一心不乱にタックルを決めて、相手の体勢を崩す。そして───
「キャラ被りはとっとと死んじゃえピョン」
蒼は、一心不乱の目を潰そうと右手の人差し指と中指で一心不乱の双眸を狙った。
かなり卑怯だったが、それでも蒼らしい戦い方だった。
「にゃあが対策なしだと思ったにゃん?それこそ馬鹿だにゃん。兎も馬も鹿も同じ。どの生物だって猫よりかは可愛くないにゃん」
兎や馬や鹿を貶すような発言。
その発言と同時に一心不乱は牙を剥いた。目潰ししようと企む蒼の腕に噛みつこうとしたのだ。
「───腕の1本くらいくれてやるピョン」
右腕を犠牲に、一心不乱の動きを止めようとする蒼。確かに、腕を噛ませれば一瞬でも一心不乱の動きは止まるだろう。だが、蒼は腕を失ってしまうかもしれない。そんな中での判断。
───が、蒼は腕を失うことはなかった。なぜなら───
「───獲物を見つけたにゃ!」
今回、マスコット先生に招集された生徒会メンバーにおいて一番の敵である池本栄がA棟に乱入してきたのだ。
そして、栄の見ていた視点に戻る───ということだった。
蒼は、何気に腕を失うという覚悟を持ちながら今回の戦いに望んでいた。栄とは煽り合い化かし合いの関係だったが、そんな中でも友情はあったのだ。