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Last Battle その⑤

 

 一方、こちらは栄が出ていった体育館。そこで、見つめ合っていたのは細田歌穂と、マスコット先生の2人だった。


「また逃げたか...日和見主義め」

「日和見主義って言うよりかは平和主義じゃないかしら?」

 歌穂の訂正を無視して、栄を追おうと体育館の外に出ようとするマスコット先生。


 それを死守するために、歌穂はマスコット先生に足を引っ掛けた。ちなみに、栄は自分も被害者になろうとする意識が強い正義厨だ。

「───ぐっ!」


 マスコット先生は、ボールを2つ手に持ったままみっともなく転んでしまう。

「残念だけど、アタシからは逃げられない。さぁ、どんな悲鳴が聞かせてくるか楽しみね!」

「面倒だな...チャッチャと相手をして栄を追うか...」


 ───こうして、体育館の中で歌穂vsマスコット先生の戦いが始まる。


 マスコット先生は、栄を追えるようになれば勝利。歌穂は、マスコット先生を留め続ければ勝利だ。

 マスコット先生は、自らのポケットに2つの球をしまって歌穂とのタイマンに挑む。


「容赦はしな───いッ!」

 マスコット先生が、ボールを閉まって言葉を交わそうとした刹那、歌穂はそんなことを無視してマスコット先生の方へ特攻していった。

 そして、歌穂の拳がマスコット先生の腹にめり込む。


「───がはっ」

「容赦はしないようだけど、油断はしてたようね!後悔しなさい!」

 そして、再度マスコット先生に馬乗りになろうとする歌穂。だが、マスコット先生が、自分の腹にめり込む歌穂の拳を両手でつかんだことによって、それは遮られた。


「今度は俺の番だ!」

 そう言って、そのまま歌穂を1本背負いするマスコット先生。そのまま、歌穂は体育館の床に叩きつけられた。


「さっきはよくも!」

 そう言って、歌穂に馬乗りになるマスコット先生。女子高生に馬乗りになる中年男性。その絵面は、かなり犯罪臭がした。いや、殴り合っている時点で暴行罪等々で訴えることができそうなのだが。


「乗ってんじゃないわよ、気持ち悪い!」

 馬乗りになったマスコット先生に対して罵倒する歌穂だが、大した抵抗は出来ていなかった。


 なにせ、体格が違うのだ。歌穂が、暴力的であり一般的な女子高生よりかは体術に優れようとも、成人男性に馬乗りにされて、そこから逃げ出すことは難しいだろう。


「───ッ!」

 仕返しされるかのように、歌穂の腹にめり込むのはマスコット先生の拳。

 避けることのできない、一方的な暴力だった。


「さぁ、悲鳴をあげろよ。惨めったらしく悲鳴をあげろよ」

 マスコット先生は、その被り物の口角を上げながら歌穂のことを嬲る。が───


「それは、こっちのセリフよ」

「───ッ!」

 マスコット先生は、歌穂が逃げないように歌穂の膝の上に座っていた。だから、歌穂の腹を殴れたのだ。


 ───が、それは歌穂が上半身の自由を少なからず手に入れられるというものだった。


 歌穂は、自らの腹筋に力を込めて、そのまま頭を持ち上げる。そして、マスコット先生の被り物を被ったその頭に歌穂自身の額をぶつけた。


「───頭突きッ!」

 マスコット先生は、その頭突きに驚いて一瞬後ろに怯むような体勢になる。それが、歌穂の絶好の機会だった。


「くらいなさいッ!」

 歌穂は、一瞬腰を浮かせたマスコット先生と全くの同タイミングで、上に乗られて動かなかった左足を自分の胸の方へ引き寄せる。そして───


「死ねッ!」

 歌穂の足。それは、マスコット先生の───いや、全ての男性の急所であろう股間に向かって雷のような速度で放たれたのだった。


「ぎゃああああああああ!」

 体育館に響くのは、マスコット先生の悲鳴。その悲鳴を聞いて、歌穂は少し恍惚とした表情を浮かべた。


「これこれ...アタシは、この声を待っていたの」

 自分の欲求が満たされるかのように歌穂は嬉しそうにしながらゆっくりと立ち上がった。一方、マスコット先生は歌穂とは対照に、その場で蹴られた急所を両手で抑えながら体を小さくして転がりまわっていた。


「あぁぁ!死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!」

 マスコット先生は、そう絶叫をあげながら転げていた。


「ふふふ...惨め...惨めね。でも、そんな中にも芸術というものは生まれるのね。アタシはまだ、負ける気はしないわ」

 その直後、マスコット先生の腹部に歌穂の蹴りがめり込んで転がっていく。女子高生にボコボコにされる中年男性。かなり、惨めだった。


 ドンと、体育館の壁にぶつかって回転は止まった。

「ク...ソ...逃げないと...」

 そう言って、よろよろと立ち上がって壁に付いている扉から出ていこうとするマスコット先生。


「残念だけど、そこを通らせないのが約束よ」

「───」

 立ち上がったマスコット先生の腹部に、理不尽に飛んでいく歌穂の回し蹴り。もちろん、マスコット先生には避ける術がないので直撃した。


「うぐっ!」

 直撃したマスコット先生は、数歩後ろに退がる。それと同時に、マスコット先生の腹部には歌穂の手刀がめり込んでた。


「───懐かしいわ。栄との最初の思い出は、これだったかしら」

 そう、平塚ここあが殺害された際の犯人探しとして、栄が歌穂を怪しんだのが、2人の最初の関わりだった。


 そして、4月5日に体育館で殴り合いを───いや、歌穂により一方的な攻撃を行われたのだった。

「何の運命かしらね、数十日後には、栄の為に戦ってるんですもの」


 歌穂は、そう言って微笑む。マスコット先生は、手刀によって後ろに吹き飛ばされてしまっていた。

「クソ、なにかコイツを倒す方法を───ッ!」


 マスコット先生は、何か思いついたのかフラフラしつつも体育館倉庫の方へ走っていった。

「何をッ!」


 歌穂は、マスコット先生に何か武器になるようなものを取らせまいと体育館倉庫に向かって妨害を試みる。

 一足先に体育館倉庫に入ったマスコット先生は、何を武器に選んだのだろうか。


「させるか───って、嘘!」

 マスコット先生が手にしていたのは、バレボールで使うようなネットだった。そして、やってきた歌穂を受け止めて包む。


「クッ、囚われて!」

「残念だな、何も殺すだけが勝利じゃない」

 そうして、歌穂をバレーボールのネットで体を縛りあげたマスコット先生は、叫ばれないように歌穂の口に長いタオルのようなものを手にしてキツく結んだ。即興の猿轡だった。


「んー!んー!」

 抗議の声を歌穂はあげるも、その言葉はマスコット先生には通じない。


「うるさい人はないないしましょうね」

 そうして、体育館倉庫の奥にあった跳び箱の3段目までを取り除いて、12段ほどまである跳び箱の中に入れて、取り除いた3段を戻した。


「やっと厄介者はいなくなった。そこで悲鳴でもあげておけ」

 マスコット先生はそう言うと、体育館倉庫の扉を閉めた。


 ───歌穂vsマスコット先生 勝者:マスコット先生

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雨城蝶尾様が作ってくださいました。
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