Last Battle その④
グラウンドに、強襲してきていたのは、5人の生徒会メンバーだった。その姿は、多種多様だったが、一番目立っているのは、真ん中を歩いている狼だか、犬だかの被り物をした和服を着た人物だった。
「ここで会ぉたが100年目!初対面やけど、容赦はせぇへん!」
その狼の被り物をした人物は、俺に向かってそう言い放つ。幸い、当たったら行けないボールを持っているのはマスコット先生なので、彼らがボールを投げる───なんてことはしてこないし、してきたとしても、アウトにはならないから、そこに関しての心配はない。
だが、問題は靫蔓のような純粋な攻撃力だった。きっと、彼らも異常なフィジカルを持っているのだろう。
「お前達は...何者だッ!」
俺は、正門から学校にやって来ていた5人の生徒会メンバーにそう声をかける。
───と、彼らの風貌はかなり奇怪だった。
「冥土の土産に教えたろ!ワイは第2回生徒会メンバー『傑物』大神天上天下や!」
「───大神天上天下...」
俺は、そのインパクトの強すぎる名前を聞いて復唱してしまう。名字の「大神」は被り物の狼と被っているようだった。狼の被り物をした関西弁を使用する人物が名乗ると、俺から5m程前方で立ち止まって、他のメンバーが口を開く。
「第3回生徒会メンバーの九条撫子よ。大和と靫蔓の仇を取りに来たわ」
そう口を開いたのは、一番左にいた、パイロットゴーグルを付けた黒髪の少女。彼女のトップスには「波乱万丈」という文字が書いてあった。
「妾だけが出ると言ったものの...貴様の親父はかなりのクソじゃのう。おっと、名乗り忘れた。妾は第3回生徒会メンバー柊紫陽花じゃ!傍観を貫くことはできなかったので、全力で相手させていただこうではないか」
そう口を開いたのは、一番右にいた、金のドレスを着て金髪で且つ金の瞳を持つ背の低い白皙の女性だった。
柊紫陽花という名は、智恵から聞いていた。
「智恵を知っているのか?」
「───ほう、そういえば栄は智恵のボーイフレンドじゃったのう...妾のことは筒抜けと言うわけか!」
紫陽花は、そう述べる。
「にゃあは第2回生徒会メンバー『偏物』猫又一心不乱。お昼寝したいにゃん」
そう言うのは、九条撫子と大神天上天下の間に立っている女性だった。彼女のこめかみの辺りには猫耳があり、彼女の後ろからは長い尻尾が見えていた。そして、彼女の服はキジトラ猫のような色をしていた。
───そして、最後に名乗ったのは大神天上天下と柊紫陽花の間に立つ人物。
「第メ鼬
3ンヶ
回バ丘
デー百
ス『鬼
ゲ怪夜
ー物行
ム』だ」
鼬ヶ丘百鬼夜行と名乗るのは、ペストマスクを付けたパン一の男だった。奇怪そうな話し方なのにも関わらず、俺からしたらそこまで奇怪な喋り方ではなかった。
「ほな、栄!ワイら生徒会メンバーを相手にどれだけ戦えるかな?」
「マスコット先生も、随分と本気のようだな...」
集められた、5人の生徒会メンバー。流石に、この5人を俺だけで相手することは難しそうだった。
だから、誰かに相手をしておいて貰わなければならないだろう。俺は、マスコット先生と歌穂が戦っている体育館の方をチラリと見て、まだマスコット先生が来ていないことを確認する。
───その時だった。
「一番は、にゃあが貰うにゃん」
5m程あった距離を、一飛びで近付いてくる、猫又一心不乱。やはり、生徒会メンバーは伊達ではなかった。
「まず───」
猫又一心不乱は、猫ではなくチーターのようだった。一瞬で、距離を詰めてきたのだ。
そして、猫もギャルも顔負けの長く鋭い爪を剥き出しにして、俺に迫ってくる。
死。
その文字が、脳裏をよぎったその時だった。
「猫風情が」
「───にゃに?!」
猫又一心不乱の足を掴んで、俺の方へ飛びついてくる彼女を、A棟の方へ投げたのは森宮皇斗だった。
「栄、余に任せろ」
「皇斗!」
助けに入ってくれた森宮皇斗。彼一人でここにいる全員を討伐する───などという神業は出来無いだろうけれど、心強いことには変わりなかった。
「増援か、おもろい!実力者のようだしワイが相手してやろうやあれへんか!」
そう宣言するのは、リーダーのような立ち位置だった大神天上天下だった。
「受けて立とうではないか。幸い、A棟には康太達がいる...だから、問題ないだろうよ」
「よっしゃ、ほな広いところで勝負開始だ!」
「もちろんだ」
そう言って、俺達がいるグラウンドの中心から移動する2人。彼ら自身、俺達がいるのはやりにくいようだった。
「戦闘狂の天上天下先輩め...私達の敵は栄だってことを忘れているのかしら?『傲慢』を授けるわ!」
「まぁ、いいではないか!妾達が、その役割を背負えばいい!」
「撫B
子棟
、に
お向
前か
はえ」
「え、B棟ですか?」
「そ人
う質
だも
。必
狙要
うだ
なろ
らう」
「───わかりました。そこに智恵さんがいるってことですね!」
「そんなことさせねぇ───」
智恵に手を出そうとする九条撫子を止めようとしたが、俺のことなど無視してB棟に向かっていってしまう。
「おい、待て!」
「おいおい、貴様。妾達を前に自由に動けると思っていたのか?その不遜な態度、万死に値するぞ?」
「───面倒だな...」
どうやら、柊紫陽花と鼬ヶ丘百鬼夜行の相手をしなければならないようだった。
百鬼夜行、お前もう喋るな。