Last Battle その②
グラウンドに集合していた全員に指示をした。
そこにいたのは、遥を除く全員だったので、少なくとも2人は生徒会が存在することだろう。
誰が生徒会かはわからないが、どれだけ生徒会がいるかはわからないが、俺は確かに生徒会に声をかけた。
そして、生徒会のメンバーを含めたここにいる全員に指示した。
今回限りは、デスゲームから生き残れる───ということもあり、これまでなにかある度に俺達に歯向かっていた裕翔さえも協力してくれるようだった。
「───よし、これで声掛けも終わりだ。俺達も、目的の場所に行こう」
俺がそう声をかけるのは、俺の初期位置に一緒に行くことを予定していた智恵と健吾・誠の3人である。
「───と、その前に。智恵、ごめんな。俺が愛しているのはお前だ」
そう言って、智恵を優しく抱きしめる。ずっと、抱擁していたかったが、今は悲しいことに猶予はない。
マスコット先生が言うには、5分後に試合を開始するようだった。まだ、ボールは配布されていないが試合開始と同時に配布されるのだろうか。
「智恵達は先に初期位置のB塔4階───生徒会室に行っていてくれ。それで、バリケードを用意しておいてくれると助かる」
「了解した」
「栄は?」
「俺はもう少し、やることがある」
「───わかった。信じてるからね」
智恵にそんなことを言われると、心が痛くなる。
───と、俺は用事を済ませてから智恵達が先行している生徒会室まで移動している。
誠と健吾は、もう教室前方の入口にはバリケードが作られていた。机の足によって、野球ボール以上の大きさのボールならば、外からのボールは完全に防御することができる。
「───で、えっと...カーテンを閉めて...」
健吾はそう言いいながら、カーテンを閉める。この部屋だけ、カーテンを閉めているので俺がその部屋にいることを外から教えてしまうけれど、部屋のどこにいるかは見えない。
ボールの大きさがわからないが、適当に投げても命中することはないだろうし、もちろん窓は全部閉めている。
「栄...本当に、大丈夫なんだよね?」
「あぁ、負けるつもりはないよ。俺が嘘を着いたことあるか?」
「それは...ない、けど...」
少し、しょんぼりしたような表情をする。
「───智恵、ごめん」
そう言って、俺は智恵とキスをする。
「うわぁ...」
健吾は、そんなことを口に出して、誠は目を逸らした。2人のことは、もう気にしていない。
「智恵、俺は負けないよ。それに、負けられない。智恵を悲しませたくないからな」
「───わかった。今回も、栄を信じることにするね」
「応援しててくれ。お前の応援があれば、俺は雨が降っても槍が降っても頑張れる」
俺はそう言って、智恵の頭を撫でる。
「───じゃあ、栄。約束して」
「なんだ?」
「ラストバトルで勝って、この学校から出たらさ...栄と一緒に住みたい。一緒のお家に住みたい!それで...結婚しよ」
「───」
智恵の口から出される約束。
ここで、こんな約束をするのはフラグだろうか。いや、そんなことを考える必要はないだろう。
「───わかった、約束するよ。結婚しよう、一緒の家に住もう」
俺は、智恵とそんな約束をする。それと同刻。
「栄、時間だ」
誠が口を開く。そして、それと同時に。
”ドゴォォン”
「───んな、マジかッ!」
俺は、智恵を健吾の方へ突き飛ばす。マスコット先生は、俺の上にある天井にポッカリと穴を開けてきたのだった。
「栄!」
智恵の悲痛な叫びを耳にしつつ、俺は頭上から落下してくる天井を避ける。
穴が開いたのが、部屋全体じゃなくて助かった。俺は、ギリギリで天井を避け───。
「───ッ!」
俺は、そのまま地面を転げるようにして落下してきた天井の上にいたマスコット先生から放たれた赤いボールを避けた。
「おい、俺のボールは!」
「配布しました。でももう、ボールは潰れてしまったようだが!」
俺は、地面を転がるようにしながらも、マスコット先生の言葉を聞く。どうやら、智恵を突き飛ばしたと同時にボールも落としてしまっていたようだった。随分と、酷い話だ。
───が、背に腹は代えられないし智恵の命には変えられない。
「とりあえず、3球を耐えきる!」
そうすれば、また新たなボールが配布されるようだった。
マスコット先生が、俺に向けて投げてくるボールは、赤い色をした野球ボールくらいの大きさの───否、お手玉のような大きさをしたボールであった。
赤色ということもあり、玉入れの球のようだった。もしかしたら、本当に玉入れの球を使用しているのかもしれない。
「栄、とりあえずここから逃げろ!」
俺が突き飛ばした智恵を、肩を抑えることでキャッチした健吾がそう言い放つ。
「あったりまえだ!」
だが、部屋の入口は両方ともバリケードで守られてしまっている。まぁ、逃げるところは最初から決めていた。
マスコット先生が、俺に向けて2球目のボールを投げる。俺は、それを避けながら窓を開く。
「逃がすわけ無いだろう!俺が勝つんだよッ!」
マスコット先生は、そう言って俺のことを追ってくるマスコット先生。だが、俺はそんなこと気にせず窓の外に飛び出し───。
「───んな、自殺行為ッ!」
そう驚きの声をあげるマスコット先生。そのマスコット先生に向けて、俺はこう言い放った。
「宣戦布告だ、マスコット先生。罪は償ってもらうからな」
───そして、俺は十数メートル下の地面に目掛けて落下していくのだった。