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5月14日 その㉖

 

「そして、ここで校則をGM権限で追加します!『校則第32条 退学となった人物は、全員一律に死亡する』!」


 マスコット先生が───否、GMが追加する校則。

「んな...そんなのズルだ!」

「そ、そうだそうだ!」

「ふざけんな!卑怯だぞぉ!」


 コートの中から、ボールを落としリスクを受けた者から、観覧席から。四方八方から、マスコット先生に向けてGMに向けて罵詈雑言が吐かれる。

 マスコット先生は、皆に向けてただ一言こう告げた。


「───黙れや、ゴミ共が」

「「「───」」」


 マスコット先生の声を聞き、俺を含めたその場にいる全員が沈黙してしまう。目の前にいるマスコット先生の威圧感に、誰も口を開くことができなかったのだ。その強大過ぎる力を前に、何かを口にすることさえも憚れたのであった。


「校則を追加するのがズルだ?卑怯だ?好き勝手言えよ。有象無象共がよ」

 黙ったのをいいことに、マスコット先生は言葉を続ける。


「第5ゲームのルールの変更は行っていない。それにより、何かが変わった訳じゃねぇんだから文句はねぇだろうがよ?そして、理不尽なのは最初からわかってたこったろ?お前らがマイナスだった場合、こっちはプラマイゼロになるように色々と調整してやってんのに、こっちがマイナスになった時にプラマイゼロに戻そうとするのには文句言うのかよ。クソ共がよ」

 マスコット先生の言葉に、俺達は何も言い返せない。


「嫌いなんだよな、人間のそういう所。やっぱり、被害者面が得意だもんな。自分たちに都合が悪いときだけ文句を言うもんな。選挙に行かないくせに国には文句を言うもんな。無能だなんて罵るもんな。そりゃあ、そうだろ!お前らが無能なんだから!わかるか?本当に有能な奴はな、もう日本になんかいねぇんだよ!とっくのとうにどっか言ってんだよ!国民が無能だから、国も無能なんだよ!国が有能だろうと、お前ら有象無象はその良さに気付かず無能を国の代表にしているけどな?」

 マスコット先生は、まくし立てるように話を続ける。誰も、マスコット先生を止めることはできなかった。


「被害者面が得意なお前らに教えてやるよ。マジョリティが好きなお前らに教えてやるよ。命なんてな、紙切れ1枚より軽いってことをよぉ!銀貨30枚より軽いってことをよぉ!お前ら、試合を続けろ!リスクを与えあえ!周りにいるのは皆、味方じゃない!誰だって敵だ!」

 そう言うと、マスコット先生は高笑いして両手を広げて天を仰ぐ。その姿は、まるで極悪()だった。


「───マスコット先生...調子に乗っていられるのは今のうちですよ...」

 俺は、マスコット先生を睨みつける。そして、中指を立ててこう言い放つ。


「マスコット先生───いや、池本朗。お前は一族の恥だ。俺が───いや、俺達がお前を殺して、誰も失わずにお前だけを殺してデスゲームを終わらせてやるよ。今日がお前の命日だ。息子を捨てて、デスゲームだなんて行ったこと、後悔するんだな」

 マスコット先生への、何度目かの宣戦布告。無謀かもしれないが、負けるつもりはなかった。


「宣戦布告ですか...ふふふ...はははは...面白い。()()()、おもしれぇな!何本気になってんだよ、やっぱり子供だな。デスゲームは、ゲームだぜ?何本気になってんだよ」

 マスコット先生は、俺のことを君付けではなく、呼び捨てにした。これが、マスコット先生の───俺の父親の本性だった。


 もはや、ここまで来たら校則の追加に文句を言えるようなことはできなかった。


「そうか...これはゲームか。なら、子供だからって舐めプしてると痛い目に遭うぜ?チーターはBANされるのが定石だからな」


 こうも挑発しているも、正直言ってマスコット先生に勝利して、全員が生き残る方法は思いついていない。

 だから、どうにか煽り合いをしている間に考えなければならないだろう。


 マスコット先生を説得するのは無理そうだから、どうにかして「リスク」をチャラにする方法を考えなければならないだろう。


 ───いや、チャラにするのは赦されないだろう。


 ならば、チャラにせず赦して貰う方法。



 ───あ。


 思いついた。これならば、ルールに反することはないだろう。

 だが、それをするにはマスコット先生をこっち側───デスゲームの参加者に引きずり込む必要がある。


 それをする方法はなにかあるだろうか。

 このまま煽っても、デスゲームに参加するはずは無かった。


 何かいい方法は───。


 {皆さんのスマホに入っているアプリ『帝国大学附属高校』の中のショップにて、100万コインを支払えば、一つ校則を追加できるようになりました!}

 {はい、そうです!100万払えば、自分の好きな校則を好きなように追加することができるようになったんです!順番としては、お金を払う。校則の内容をタイプする───の、たった2工程!難しいことなんか一切ございません!校則を作ったら即適用となっております!}


 ───あ。


 脳裏に浮かぶのは、今回のマスコット先生の暴挙に対してあまりにも都合が良すぎる対策だった。

 5月6日の最初に、マスコット先生が教えてくれた方法だった。これを利用すれば、マスコット先生をこっち側に落とせるかもしれない。


 ───問題は、100万円をどう集めるかだろう。


 だが、そんな問題は些細なことだった。この方法ならば、マスコット先生に勝てる。

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雨城蝶尾様が作ってくださいました。
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― 新着の感想 ―
[良い点] なんかマスコット先生が某利根川さんっぽい。 そして栄の新戦略。 これが成功すれば、流れが変わりそうですね。
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